INTERVIEW: Especia’s Producer Schtein&Longer and ホンマカズキ

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Negicco(新潟)やチームしゃちほこ(名古屋)など、非・関東圏/ローカルアイドル・カルチャーの中で、現在じわじわと台頭しつつあるのは大阪・堀江を拠点に活動するグループEspeciaだろう。

冨永悠香、三ノ宮ちか、杉本暁音、三瀬ちひろ、脇田もなり、森絵莉加の6人からなるこのユニットは、ディスコ~フュージョン~AOR、またそれらを取り入れた70-80’sシティポップ、90年代J-POP(客入れの際にはOirignal Loveのキラーチューン「接吻」がBGMに使われることもある)などをベースとした楽曲はどこか懐かしくもスタイリッシュ、群雄割拠のアイドルシーンの中でも一際異彩を放っている。

tofubeatsの「ディスコの神様 feat.藤井隆」リリースパーティでのライブも決定した彼女ら、今回はそのサウンドを手がけるSchtein&Longerと、「No.1 Sweeper」「くるかな」などのMVの制作を務めたホンマカズキ両氏を招き、シティポップ、アイドル、ヴェイパーウェイヴなどをキーワードに、Hi-Hi-Whoopeeからは小鉄、荻原梓をホストとしてインタビューを試みた。

「セントラルパーク中野によくビルを浴びに行く」というホンマ氏と荻原の中央線ユーザートーク(インタビュー当日、ホンマ氏は大阪からスカイプで参加)で血中ヴェイパー指数を高めつつ、インタビューは開始された。

――自己紹介をして頂いてよろしいでしょうか。

Schtein&Longer 横山(以下、横): はい、Schtein&Longerの下級事務員やってます横山です。スリーサイズは、上から、174-52-27-5です。好きな食べ物は、カキとざるそば。

ホンマカズキ(以下、ホ): ホンマカズキと申します。1986年12月24日生まれ。ライフワークは少女漫画のりぼんの定期購読です。あと映像の仕事をフリーランスでやっております。

――ありがとうございます。Schtein&Longerはミュージシャン集団+スタッフということでよろしいんですよね?

横: はい。全世界に84人いるという体です。誰でも名乗ればなれます。92の方がいいですかね。79がよければそちらでも!

――ハウンドドッグの200人ボーカルみたいですね。全角で84とか92という数字、ヴェイパー・マナーですね。ホンマさんに関しては、僕、たまに関西に遊びに行くんですけど、よくお名前を拝見します。

ホ: あ、本当ですか!東京の人間なんですけど、よく関西行ってるんで関西に住んでいると思われてます。今年入ってからは既に4回くらい大阪へ…。来週も2回ほど大阪行くんで、今月は月に3回大阪行くことになってて、そろそろ大阪に住んじゃおうかなと!

――ホンマさんがEspeciaに関わるようになったきっかけは何だったんですか?

ホ: もともとEspeciaを知ったのは、知り合いのDJMIXを聴いてからです。これまたEspeciaにも関わりがある方で、自分もよくお世話になっている、京都のVINYL7 RECORDSのマツモトヒサターカーさんのMIXでEspeciaの「きらめきシーサイド」という曲が流れて。なんじゃこりゃあ!って調べたらEspeciaかあ、と。

――なるほど

ホ: でも、その時YouTubeで調べたら鳥取砂丘で踊ってる素人女の子なのか、ちょっと様子見ようみたいになって。月日は流れて、去年の夏でしたか…8月に渋谷WWWでワンマンやるって聞いて、で、知り合いの人に紹介してもらって、VJやらしてほしいってなって。まだご一緒して一年も経ってないんですよ。

横: 共通の知り合いのアートワーク周りやってるアートディレクターがね、「ヴェイパーっぽいVJするヤバい人いるから」って。ヴェイパーっぽいって言い方すげー失礼ですいません。

ホ: いや、なんか自分もいろいろ調べさせてもらったら、どうやら音作ってるS&Lという人はヴェイパーウェイヴ好きなんだ!ってのを知って、おおなるほど~っていう。渋谷WWWでやったときに、握手会の時のBGMがヴェイパーウェイヴ・ミックスでゲラゲラ笑っちゃいました!

冒頭では記さなかったが、Especiaとそのプロジェクトには色濃くヴェイパーウェイヴのセンスが見受けられる。

ヴェイパーウェイヴとはこのブログでも何度も取り上げているが、この数年でごく局地的にブームとなった音楽ジャンルであり、コンセプトである。深夜放送のテスト配信や、インターネット上の無数の広告が、よくよく見ると何か得体の知れない不気味なものに感じることはないだろうか。それらの映像/画像そのものよりも、それらに囲まれて生活し、何ら違和感なく暮らしている自身に対して。

ヴェイパーウェイヴとはその感覚を露悪的に”音楽で”笑い飛ばすものであり、その音楽性は、当たり障りのない、企業コマーシャルや天気予報のBGMなどで使われているフュージョン、ディスコ…あるいはスーパーマーケットでかかっている、あの妙にキラキラしたBGMなどをサンプリングして創られる。

――ヴェイパーウェイヴが流れているアイドル握手会…。

――(az_ogi)ちょっと口を挟むようで申し訳ないんですが、そういう時お客さんの反応とかってどうなんです?ヴェイパーを聞いて。

横: ポカーン半分、うおおおおお半分ですかね?グループ柄、インターネットコンシャスな人はファンに多いとは思うんで。ホンマさん的にはそれらを見てどうでしたかね?

ホ: 知ってる人は知ってる、知らない人はなんか古くさい音楽が流れてるなーみたいな反応でしたね。別に主張するような音楽でもないし、こう、握手会の雑踏にもやのように消えていく景色を見てました…。

――ミュージック・フォー・握手会!

――(az-ogi)「アバンチュールは銀色に」のMVは、僕は衝撃受けてそのままの衝動でHHWに記事書いたんですけど、ああいう映像を見た元々のファンとか、Especiaのメンバーはどんな反応されるんでしょう…?

横: (ファンの方は)訳は分かんないと思いますよ。

ホ: ディスコとか、ダンクラとか、AORとか、聴いてる人は聴いてるし、聴かない人は聴かないと思います。

横: 恐らく基本的に斜に構えてますよ。「意味分かんない」「もっと可愛く撮るでしょ、普通」とか。Especiaのメンバー本人達は(ヴェイパーウェイヴ云々は)基本的に最初から意味は分かってないです。もう周りの大人が頭おかしいからなんかやってるな~くらいの認識だと思います(笑)。

ホ: メンバーの皆はホント普通の女の子です。ここで、メンバーがヴェイパーウェイヴがどうのこうの知りだしたら、僕はEspeciaと関わるの辞めようかなって思ってるくらいです。

横: そうですね。それはそうです。あっちが歩み寄ってきたら僕らは引くので。常に乖離してないといけない。

――なるほど。

横: でも、最近の女子大生って普通にサウンドクラウドでDIGったりするらしんですよ。それで「この曲のダッキング具合超ヤバ~~~☆サグやわぁ」とか言ってればそれはそれで本当にギャグですけどね。

ホ: 女の子がいきなり音楽グッと語りだすの、あれってみんなググってるんじゃないかなって思うし、最近なんてツイッターとかサンクラやってればカッコイイ音楽がリツイートされたりするんで、カジュアルに知れますしね。

横: それじゃなかったら兄とか男の影響でしょうね、(音楽の)入り口は。

ホ: でも、男には経験できない、子宮で感じる音楽…あれ体感したいです。

――テナーサックスの音域が一番子宮を揺らすらしいですけどね。アルファ1分のゆらぎ的な眉唾話なんですけど。

ホ: おお!Especiaでテナーサックス吹いてる男、子宮揺らしまくってるから!

横: 男性の声域に近いからかな、テノール。…全く記事に使えないですね。このくだりは酷い。エディター泣かせのチンピラ集団で本当に申し訳ございません!

――(笑)お二人はEspeciaに関わるまでアイドルにハマったりしたことはあったんですか?

横: 僕はアイドルまったく分かりませんし、今も分かりません!

ホ: 僕はアイドル大好きなんですよ。だって女の子だし。俺、女の子好きだし。

横: だから、その、僕はBiSが始まりでしたけど※、こういうアイドルのお仕事させて頂くまでは何だか全然分からなかったし、関わるようになってから”箱推し”だの”剥がし”だの業界用語を知った感じですね。アイドルらしい音楽については今でも全く分かりません。アイドルのCD全然聞かなくてダメですね。

※S&L横山氏はEspeciaと同事務所のアイドルグループ、BiSの編曲も務めている。

――これだけアイドルも多様化してると正統派のアイドル、正統派のアイドル歌謡ってどういうものか分からないですよね。

ホ: なんか、正統派アイドルやってるのが珍しいとかって言われてて、よく分からないんですよ。

横: まあ、楽曲に関してはそうなのかもしれませんね。でも、立ち居振る舞いやプロジェクトの体裁に関しては、すごく”べき論”を振りかざされている気がします。

ホ: ああ~”べき論”!めっちゃ氾濫してますね!

横: ツイートはちゃんとやれ、とか、映像はもっとキャピキャピしてて「らしき」ものにせよ、とか。

ホ: 「アイドルのMVはかわいく映さなきゃだめ」「アイドルはもっと顔を映したMVにしなきゃだめ」「ダンスをしたMVを~」とか。

横: まあ、要するに、その、なんでしょうね。何がそうなのか分からないですけど、「もっと普通にやって」っていう。

ホ: 自分はEspecia以外にもいろいろとアイドルの映像仕事やらせていただいているんで、そういうのをちゃんとやるべきアイドルだっていうのと、そこをはずして面白いことをやったほうがいいぞっていうのを分けて考えてます。

横: アイドルとしての純粋主義を追い求めるならたぶんウチじゃないと思います、うちは雑味だらけなので…。

――なるほど…。

ホ: 今回MVを出してヴェイパーウェイヴやってるEspecia飽きたって言ってる人もいますけどね。

――「No.1 Sweeper」のPVはめちゃめちゃ野菜がフューチャーされてますよね。なんで野菜なんですか?

ホ: 野菜かっこいいな~って思ったので…!

――フィジカルですしね。

ホ: というのがありまして、今回アルバムが”GUSTO”と題されて、ジャケ写は食べ物の偽物にしよう、と。そういう話が3月頭からされてて、じゃあ映像どうすっかな~っていろいろ紆余曲折ありまして…。今の彼女たちの衣装の写真が送られてきたとき、あまりの色彩に「うおおお全員野菜に見える!!!!」って興奮しだして、急いで自分ちの野菜室の野菜見て、茄子とかカッケーし、キャベツとか狂ってるし、うわああ野菜だ!という、野菜スパークがありました。

横: シャブやってましたか?

ホ: やってません。

横: そうかぁ。SAY NOか。

ホ: それと、ここがわりと真面目な話なのですが、Especiaってサウンドだけでいうと、こう、夜景とか、ネオンとか、アーバン(笑)とか、なんかそういう景色が生まれるような。今回の「No1 Sweeper」だって、ホント、ビルとか出すべきなんですよ。でも、彼女たちの衣装、こんなゲットーでストリートなもんで、夜景とかやってたら、アホらしいでしょ!って思って。

――ふむふむ。

ホ: そこで、Especiaの制作スタッフって全然まとまってなくて超おもしれーなーって思ったので、じゃあ映像も全然違うアプローチしかないんだなって思って、これらの経緯でまとまったのが「野菜」という。自分の中の野菜スパークとアルバム・コンセプトになぞってなったのがあの”野菜MV”です。別にメッセージ性なんてありません。ごめんなさい。

横: 全然意味が繋がってないのが最高ですよね。

ホ: そう、繋がってないんですよ。ファンの人とかみんなが誰も野菜であることにツッコんでないの、すげーなって。みんな夜景に似合わない格好ですからね。例えるならターミネーター2にでてくる郊外の不良みたいな、そういうヤツらの格好。なのに皆が普通に受け入れてる。

――僕の解釈なんですけど、アーバン、ハイウェイ、ヴェイパーときて、野菜!っていうのが、80年代後半~90年代のニューエイジ転向、ロハス的オーガニック趣味のパロディっぽいなーと思って。細野晴臣が90年代突然髪伸ばしてアロハきてイルカと喋りだしたみたいな。

横: あ~、そういう指摘はありましたね。アーバン・ライフの行き着く先がオーガニックだ、という。

ホ: なるほど、そういうのもあるんすね…。

横: まあ、その、申し訳ないですが、全く関係無いという…(笑)。でも、好きなようにどんどんと脈絡は後付されていって欲しいですね。意味が隠されているように見えるものこそ意味を読み込みたいですしね。

ホ: 野菜かっこいいし、あのデザインはすごい。ゼウスのデザイン・スキルに脱帽ですよ。それと水がすごいいいなあ、って野菜にギラついたとき思って。めっちゃ水はすごい。透明ってなんなんだ!しかも野菜育つし!ホントそういう素朴なものにすごく最近興味持ち始めて。石はかっこいいなあとか。

横: 自然礼賛発言はすごくジャンキーっぽくて僕的にはお気に入りです。まあ、ある種のスピりの一環に見えるんですかね。きっとね。

ホ: メンバーにも「野菜流行るよ」って言ってたら、「こないだ野菜のキーホルダー見つけて!プレゼントします!」って言ってましたから、言えば流行るんだ!ってのも思いました。

横: まあ水とか石って言ってみればヴェイパー・オブジェクトなんですよね。流体とか、幾何形体としての石とか。(ヴェイパーウェイヴは)相性良いんですよね、石と水みたいな不定形のものとキュービックなものと。

ホ: ですねえ、今回のMVに出てくる噴水がまさにそれっすね。

――お二人はヴェイパーウェイヴ体験ってどういうものでしたか?

ホ: なんでしょう…やっぱ、世界の天気予報。

横: 地元です。…あ、ヴェイパー原風景の体験でなくて音楽の話ですか。それだと、ツイッターで流れてきたので最初に知って、クリックしたのが<Fortune500>※でした。

※ヴェイパーウェイヴの代表的なレーベル。惜しまれつつも今年になって活動停止。

横: さんざん言われてますけど、人工的な理想郷・ショッピングモールみたいな。やっぱり感情が死んでるんですよね。僕はビートがなさげなニューエイジ系統のやつよりLuxury Eliteが好きで。ミドルテンポなミューザックもの…元々スーパーのBGMとかのギラついたフュージョン好きだったし、労働意欲を鼓舞する工業フュージョンとかも昔から大好きだったので。

ホ: ヴェイパーウェイヴは食品まつりさんにINTERNET CLUB※を教えてもらいました。食まつさん、かれこれ3・4年くらい前に知り合いまして。去年、名古屋で会って二人で飲んで、路上でホームレスとサイファーしたり、一緒に女の子ナンパしたり、エロビデオ屋行ったりバカなことしてるところでヴェイパーウェイヴ教えてもらいました。

※初期のヴェイパーウェイヴを代表するトラックメイカー。

――青春っぽい!

ホ: 最初聴いたときに 寝たきり人間になって空っぽになれる音楽だなあと思って。自分は映像の人間なので、ビジュアルがドつぼでした。VJ素材で昔のモーショングラフィックとか掘ってて。サンプリングしたりとかもずーっとしてて。あっ、自分が集めてるような映像のジャンルってヴェイパーウェイヴていうんだ~と気づかされたみたいな。

横: あ~、そうですね。土器王紀みたいなセガサターン風のCGはやっぱね、僕ら世代にはドストライクで郷愁誘うんですよ。

ホ: そうそう。86年生まれってすごくて、ゲーム機をいろんなものを渡り歩いたっていう。

横: ヴェイパー、ヴェイパー言われる前の話ですけど、大学でシグラフの映像を授業で見せられててですね。「これやっべーな」ってずっと思ってたんだけど、当時はまだそれらを共有できる共通言語がなくて。

――その感覚ってありますよね。ヴェイパーウェイヴって曲の構造どうこうよりも、アンビエントみたく、音楽ジャンルじゃなくてコンセプトであって、そういえば子供の頃もあれはヴェイパーだよな、みたいな。

ホ: プレステのポリゴンにマジで感動してた世代ですもんね。

――「海辺のサティ」のVHSエディットとか、ああいうアナログっぽいグリッチな映像って、映像作家の方はどうやって作ってるんですか?海外の人ですがPPU VIDEO PARTYなんかも…。

ホ: 今回のEspeciaのVHSは、本当にVHSで作って取り込んだやつです。取り込んだパソコンが自分が10年前に使ってた2004年製のNECノートPCってのにも気合い入ってます。高いコンバート機材なんて使いたくないですよ。

横: やっぱり会社で出すプロダクトですからね、(PPUやヴェイパーウェイヴの)剽窃カルチャーはそのまま持ち込むことは出来ないんですよ。となると、ホントに自家栽培でやるしかないという。

ホ: その、映像手法で昔のVHSっぽくエミュレートできるようなやつとか、PC上でやれるんですよ。でも…こう、なんて言うんですか…(PCでの処理だと)ホント胡散臭くて、アホか!って思っちゃったんで。もう実物しかないなあって。

横: アナログの暖かみな。

ホ: アナログの暖かみ!レコードの話されても自分さっぱりわからなかったけど、今回Especiaのライブ映像をダウンコンバートして初めて分かりました。テープ届いて見たとき、ホントひっくり返りましたよ。うわーって!

横: だから、あれらのグリッズノイズ、トラッキングノイズは、エフェクトで付加されたものじゃないんです。

――音楽でも、カセットで録音すると、ちょっとブーミーだけどモコモコっとした面白いコンプレッサーかかりますもんね。

横: その記録媒体特有の何かみたいなのはありますよね。VHSもあるんです、テープコンプレッション感が。それが凄くよかったです。

――あの映像面白いですよねぇ。

横: 最高です。VHSバージョンみちゃうとフルHDに戻れないくらい最高でした。

――いわゆる90年代のローファイ・カルチャーとも違うのは、ローファイで撮って滅茶苦茶ハイファイにアップロードするところなのかなと思ったのですが。

横: あ~なるほど。そうですね、だって映像もあれ、YouTubeで1080pで見れますからね。全然画質良くならないっていう。

――何年代の映像なのか、自分が何観てるのか全然わかんなくなる。「くるかな」のビデオとかも、ホントに訳の分からない涙が出そうになりますね。

横: あれは最高ですね。ハイファイを逆手に取ってて、見事だと思いました。

――ゆらゆら帝国時代の坂本慎太郎が、「自分にとってサイケっていうのは、カラフルな壁がグニャ~とかじゃなくて、砂漠の真ん中に孤児院がポツンとある、みたいな光景」と言っていて、夜中に見るACの映像とか、ああいうフィラー映像とか、ものすごい日常感覚のサイケだな~と。

ホ: そうですね、フィラーってなんかすごく迫ってくるものありますよね。本当に今回の「くるかな」のMVで天気予報をぶっ込んだのも、あの世界の天気予報の、こう、”迫ってくる感”が凄くて。

ホ: (オススメの天気予報の映像を見せつつ)これが満点でして。まず音楽がすごくて、あとやっぱり温度の華氏表記。これは怖いですね。

――すごく良いトレモロがかかってますね。

ホ: そして、この「Radar Data Temporarily Unavailable(雨レーダーのデータは現在使用不可)」ってマジかよっていう……なんか街で嫌なこと起きるのかなあっていう。自分、2000年くらいのときに家でケーブルテレビに入ったんですけど、そこで、やっぱ中学生なんでエッチなチャンネルを見たがるんですけど、見れない。ああ、ちくしょーってチャンネルまわしてたら延々と透明感のあるアンビエントだったり、ノリの良いMIDI音源流しながら世界の天気予報垂れ流すというチャンネルに行き着いて……。

――まさにこういうのですよね。

ホ: それ以降、暇な時があったらその天気予報のチャンネル見てて、天気予報を浴びてました。ナイロビとかサンクトペテルブルクの天気知ってもどうでもいいし、日本の中学生がサンクトペテルブルクの天気を知れる世の中怖いなあって思って。

横: そうですね。僕らの時代はまだ、インターネット・ポルノより深夜番組をDIGればポルノを得られる時代でしたから、ギリギリ。インターネット・ポルノに頻繁にアクセスできる環境でもなかったし。

ホ: そうそう!トゥナイトとかも必死で見てた。エロ本だって拾ってた。エッチなビデオがあれば友達の家で上映会だってしてた。

横: で、その流れで、TV局のクロージング映像に出会うんです。放送終了時にこんなことになってるのか!こえええええ!って。

ホ: そうそう、日の丸が出てきて「君が代」流れるのか…すごいって。

横: 放送大学は比較的早い時間で終わるので、ほぼ毎日放送大学が閉まる瞬間を見るのを日課にしてました。あと、夜になるとファッションショーやってて、おっぱい見れましたね。

――テレビとかパソコンの、液晶が黒くなって、そこに自分の顔がフッと写りこんで目が合うのって、ヴェイパーだと思います。

ホ: 普段、日中元気良く世間を賑やかしてるテレビが夜中とか明け方にいきなり死ぬっていうのが凄いですよね。えっ、終わるの、ちょっと待ってよ!怖いじゃん!もっと俺を楽しくさせてよ!っていう。

横: じゃあ、この時間に業務終了したところで、そこで働いている人たちはどうなるんだ。海辺の僻地からどうやって帰るんだ、とか。絶対的な非日常を仕事として日常的にやってる人がいるっていうのがマジで怖くて。

――アイドルって日中元気よく世間を騒がしてる存在な訳じゃないですか、それこそテレビで。逆に、そういう、毎日ひっそりと突然死してるテレビの怖さをめちゃめちゃ悪意的にジョークにしてるのがヴェイパーウェイヴで。だからEspeciaの、アイドルかつヴェイパーっていうのは凄く……。

ホ: このMV(「くるかな」)の制作背景も実は本当に大したことがなくてですね……MV撮影が3月中頃でした。そのとき、「くるかな」は曲のタイトルも決まっていなくて、歌詞もなくて、あるのは仮トラックに歌が乗るであろうガイドメロが淡々と乗ってある物……。

横: まさにスーパーのBGM状態。

ホ: そこからMVを作ってくださいっていう会社、相当気合い入ってるなと思って。撮影に臨むんですが、もうみんな何していいか分からない。本人も困ってるし、メイクさんも謎の状態。俺ももう訳が分からなくなって、SMAP流しながら撮影してたり。それで、とりあえず映像撮ったけど……まあスーパーのBGMみたいだし、なんかフィラー音楽みたいだし、そうするかぁ、と作っただけという。ホントそれだけの理由なんです。なんかこう、肩に力入れて企画書書いて「こうこうこうだから、フィラー放送みたいなMVにするぞ!」と望んだ訳じゃなくて……気まぐれです。

――たしかに三ノ宮ちかちゃんがネックレスぶらぶらさせてる映像とか、”とりあえず感”ありますね。

横: (笑)あの”素材だけいくつか押さえさせてください感”は本当に最高ですよねえ。

ホ: ホントそうなんです!この映像の元素材みると凄く大変なのが伝わります!三瀬ちひろちゃんは本当に訳が分からなくなって「ホントになにしていいか分かんないんですけど!!」って、マジで訴えてきました。杉本あかねちゃんも、とりあえず俺が撮影機材で持ってきたライトをぱちぱちして、とか、そんな感じ。みんなあっさり撮影終わって「えっ、これだけ撮って何作んの、この人?」みたいに思われてて……。

横: 俺だってわかんねえよ!!って感じですよね。

ホ: そう!俺だって分かんないけどなんかしてるポーズとってなきゃいけないの!っていうので必死に頑張っているという。

横: でも、すごく良い感じに撮れてるんですよね。自然体すぎて。

ホ: そうですね。大体、みんな雑談してるときに内緒でRECまわして、それを使ってるだけで……なんか演じさせるの嫌なんですよ。撮影技法がホントAVみたいで恐縮なんですけど、「大丈夫、まわしてないから」っていうの、すっごく好きなんです。

――メンバー達はどういう雑談してるんですか?

ホ: 「アルバム発売、楽しみだね」とか、そういう普通の感じだったかなあと!

――アルバムリリースして、ここから更に、今後の展開はどんな風に?

横: 今後の展開ですか。

ホ: みんな黒くなる。ギャルになってほしい。

横: ああ、それだ。黒さが足りない。って言われてるので、黒ギャルになってもらいたいですね。

――それはget funkyな意味でですか?

横: いいえ。メラニン色素的な意味でです。

ホ: Especiaの皆には黒さが足りない。もっとナッツやブレンダを読んで、日サロに行きなさい。「黒ギャルでやっていく」という気持ちが全く足りない。そんなことでは上に行けない。アルバム出た後は黒ギャルになってほしい。

横: ”上”行くにはやっぱ黒ギャルでやっていくという気持ちが大事なので。黒ギャルはイケている!日サロに通ってほしい

――ギャル回帰ですか!全員ラテン系の褐色肌になって、Apollonia 6みたいになったら面白いですね。

ホ: ホント、バカですね。なにが嬉しくて下着でニコニコして踊ってるんですかね。もっと自分の人生について真剣に考えた方がいい。

横: いやーこうなってほしい!最高!あとお尻がすげーでかくなってほしい!

――これPrinceの映画に出てくるユニットで、主人公(プリンス)のガールフレンドが、悪徳プロデューサーに騙されて結成するお色気ユニットなんですけど、よりにもよってって感じで好きです。

横: あ~なるほど。SEX SHOOTER……。

――では、まとめとしてはEspeciaは黒ギャル化する、ということで…。

横: ですね!

ホ: ホントそれです。それだけ言いたかったです。

――一気に全員が黒くなるんじゃなくて、森絵莉加ちゃんあたりからちょっとずつ黒くなっていって。

ホ: そうです!あの子一番黒素質あるんで!!

――じゃあ最後にファンの方々に向けて一言頂ければ……。

ホ: ファンに一言ですか…すみません。

横: じゃあぼくもそれで!

ホ: まあ、本音言うとあんま無いんですけど……Especiaに興味ある人は興味を持つ!興味ない人は興味もたない!このどちらかを選んでね!って感じですかね!

横: そうですね。あなたの承認欲求や自意識を充足させるために存在する、そんな都合のいいEspeciaもいいけど、そうじゃないEspeciaも愛してね。

――そうじゃないEspeciaが果たして”黒ギャルペシア”なのかどうかは謎ですが……ありがとうございました。

横&ホ: ありがとうございました。

Interview by @y0kotetsu & @az_ogi

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Notes

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