名張毒ぶどう酒事件:第8次再審請求 名古屋高裁が棄却

毎日新聞 2014年05月28日 11時47分(最終更新 05月28日 15時14分)

奥西勝死刑囚
奥西勝死刑囚
名張毒ぶどう酒事件の経緯
名張毒ぶどう酒事件の経緯
「名張毒ぶどう酒事件」の奥西勝死刑囚の再審請求審で、名古屋高裁の棄却決定を受けて記者会見を開く弁護団の鈴木泉団長(左)ら=名古屋市内で、2014年5月28日午前11時55分、金寿英撮影
「名張毒ぶどう酒事件」の奥西勝死刑囚の再審請求審で、名古屋高裁の棄却決定を受けて記者会見を開く弁護団の鈴木泉団長(左)ら=名古屋市内で、2014年5月28日午前11時55分、金寿英撮影

 三重県名張市で1961年3月、女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の第8次再審請求審で、名古屋高裁(石山容示裁判長)は28日、奥西勝死刑囚(88)の請求を棄却した。弁護団は第7次請求審に引き続き、事件で使われた毒物と奥西死刑囚が犯行に使ったと自白した農薬「ニッカリンT」との同一性を争点としたが、高裁は「7次請求と同じ理由での請求であり、請求権は消滅している」と判断した。

 石山裁判長は「形式的には第7次請求の証拠と異なるが、論理的には不可分で同一の証拠」として、第8次請求の証拠の新規性を否定した。また、「奥西死刑囚の加齢や健康状態の悪化を踏まえ、判断を早期に示した」としている。

 2002年に始まった第7次再審請求で、名古屋高裁は05年、「自白が客観的事実に反する疑いがある」として、初めて再審開始を決定した。だが、検察側が異議を申し立て、同高裁の別の刑事部が決定を取り消した。奥西死刑囚側の特別抗告に対し、最高裁は10年、審理を差し戻し、同高裁は12年5月に再び決定を取り消した。

 弁護団は6月にも、毒物に関する再現実験の結果を新証拠として提出する予定だった。鈴木泉団長は「新証拠を提出すると予告していたのに、この段階で棄却決定が出るのは、驚きであり、意外。許し難い」と述べた。どう対応するかは今後検討するという。【金寿英】

 ◇名張毒ぶどう酒事件

 1961年3月、三重県名張市の公民館で開かれた住民の懇親会で、農薬が混入されたぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状を起こした。奥西死刑囚が「妻と愛人(ともに事件で死亡)との三角関係を清算しようとした」と自供したとして、逮捕・起訴された。起訴前に否認に転じ、1審・津地裁は64年12月に無罪としたが、2審・名古屋高裁が69年9月に逆転死刑を言い渡し、最高裁で72年7月死刑が確定した。2005年4月、第7次再審請求審で、名古屋高裁が再審の開始を決定したが、06年12月に名古屋高裁の別の刑事部が取り消し、13年10月に最高裁が弁護側の特別抗告を棄却した。弁護団は13年11月、第8次再審請求を行った。

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