<フォーカス2014>牛久入管…脆弱な医療 「治す」発想がない 診断断られ、ひたすら我慢 /茨城

毎日新聞2014年5月27日(火)11:51

 ◇昨年の平均収容期間144日

 法務省東日本入国管理センター(牛久市久野町)で外国人2人が死亡した問題では、同センターの医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになった。約300人を収容し、非常勤医が平日午後1〜5時に診察。元収容者は「診てほしい時に診てもらったことがない」と証言しており、支援者は「強制送還ありきで、病気を『治す』という発想がない」と改善を求めている。【土江洋範】

 ■常備薬を支給

 「『我慢してね』と言われるだけだった」。1年以上にわたって収容されたウガンダ人男性は腹痛の際、医師の診断を希望。しかし、職員は「大丈夫ですよ」などと言うだけで、診断を断られた。東日本入管センターによると、診断可否は職員が収容者の訴えや症状から緊急性を判断して決定。また、医薬品は持ち込めず、診断不可の希望者には常備薬が与えられる。男性はひたすら腹痛を我慢せざるを得なかったという。

 収容者は、広さ約17〜34平方メートルの5〜10人部屋で生活。施設内での自由時間(1日5時間50分)を除き、同室内にいなければならない。ウガンダ人男性は母国で親類が殺害されるなど政治的迫害に遭い、日本に難民認定を申請。「長期収容で体のバランスを崩し、今も一部に痛みがある。強制送還の恐怖から精神的ストレスも相当だった」と振り返る。

 ■疾患発生多く

 東日本入管センターは不法滞在者らを収容しており、2013年の平均収容期間は144日だった。収容者は4月30日現在で292人おり、難民認定申請をしている外国人もいる。国内の難民認定は昨年、審査件数3777人のうちわずか6人(認定率0・16%)しか認められていない。結果が出るまで2〜3年かかり、収容期間は1年を超えるケースも珍しくない。

 港町診療所(横浜市)の山村淳平医師(59)は03〜06年、収容体験者176人と不法滞在の在留外国人(非体験者)102人の健康状態を比較調査。うつ病など精神疾患の発生率は体験者が44%で、非体験者(12%)の3・7倍に上った。長期収容で精神を病むケースも多く、10年には東日本入管センター収容者の韓国人、ブラジル人が施設内で自殺。山村医師は「施設内のストレスが原因。希望者は速やかに外部病院に搬送すべきだ」と提言する。

 ■人道的収容を

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のマイケル・リンデンバウアー駐日代表は、日本も批准している難民条約に「保護申請国への不法入国などを理由として、難民を罰してはならない」と定められていることを挙げ、「そもそも難民申請者は収容すべきでない。特別な医療が必要であったり、精神的な問題を抱えていたりする人の収容環境は人道的であるべきだ」と指摘する。

 これに対し、東日本入管センター総務課の平河祐治課長は「難民申請の手続き中は強制送還しないなど、収容者の人権は保障されている」と説明。センター内の医療体制については「茨城県は人口10万人当たりの医師数が全国ワースト2位(12年末現在)。医師を募集しているが、人手不足で確保が難しい。また、問題点を調査しており、改善点があれば見直していきたい」と話している。

 ◇多くは諦め、本国へ

 入国管理センターには、ビザの期限切れや不法入国による不法滞在の外国人が収容される。入管に摘発された場合、最初は地方入管もしくは同支局(全国計15カ所)に収容。最大60日間で違反審査を受け、強制退去該当者に認定されると、強制送還になる。

 本人が拒否し、長期収容が予想される場合には、入国管理センターに移送され、無期限で収容される。処分取り消しの訴訟を起こした人や収容に耐えられない病人は仮放免されることもある。支援団体によると、収容期間は平均約1年。多くの収容者は諦めて本国に強制送還されるケースが多いという。

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 ■ことば

 ◇入国管理センター

 入管法に基づき、強制送還が決まった外国人が帰国(強制送還)まで収容される施設。入管センターは全国に東日本(牛久市久野町、収容定員700人)▽西日本(大阪府茨木市、同300人)▽大村(長崎県大村市、同800人)の3カ所ある。西日本は唯一、医師が常勤。大村は毎週月、水、金曜日午前9時〜正午の診療だけにとどまっている。全収容施設では2012年、延べ1万9002人が収容され、6459人が強制送還されている。

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