数を頼みに、議論を軽視し、はやる与党。

 数にけおされ、覇気を失い、時には与党にすり寄る野党。

 今国会の論戦の低調ぶりは、目に余るものがある。

 そんななか、きのう与野党7党が国会改革について合意し、秋の臨時国会から衆院で先行実施されることになった。

 党首討論は月1回開く▽内閣提出法案は原則として優先審査する。野党の対案がある場合は同時に審査する▽議員提出法案は積極的に議論する▽首相の国会出席を本会議と予算委員会の基本的質疑や集中審議、締めくくり質疑などとする――などが改革の柱だ。

 かねて指摘されていた、首相や閣僚が国会に縛られ過ぎて海外での国際会議に出席できないという問題は解消されそうだ。ただそれが、国会の緊張感のなさを助長するようでは困る。

 その意味で、党首討論をいかに充実させられるかが、国会活性化のカギとなるだろう。

 党首討論は英国議会をモデルに、2000年に導入された。当初、原則週1回は開くとされていたが、最近は会期中に1回開催される程度で、形骸化が問題視されていた。それをこのたび改めて、月1回は実施しようというわけだ。

 党首討論のテーマは自由に選べる。個別の法案を離れ、一問一答形式で首相の考えをただす。野党にとっては、与党との対立軸を際立たせ、自らの存在をアピールする好機だ。

 一方で、野党が一方的に質問する本会議の代表質問や予算委員会の質疑と違い、首相にも反論権が与えられるため、野党党首の力量も同時に試される。奮起を期待したい。

 とはいえ、党首討論の充実という点では不十分な点もある。

 ひとつは、合計45分間という時間の短さだ。持ち時間は各党の議席数に応じて比例配分される。過去の論戦では不完全燃焼に終わったケースが多い。

 さらに、質問に立てるのは衆院または参院で10人以上の所属議員を有する会派という条件も、いかがなものだろうか。

 個別政策の賛否を超えて、憲法観や民主政治観など、国家の基本について論じ合うことを目指して創設された場である。ならば小政党にも議論の場を開いてはどうか。

 民主主義は単なる多数決とは違う。国権の最高機関たる国会に、数の論理とは異なる価値観で運営される議論の空間を設ける。この国の未来に向けた選択肢を増やすという意味でも、決して無駄ではないはずだ。