【「不安な人は既に避難した」】
東北自動車道・福島松川パーキングエリアのさらに西。福島市松川町水原の里山は、「クマガイソウの里まつり」が開催されているとあって、カメラを手にした観光客でにぎわっていた。お目当ては斜面一面に咲いた約7000株のクマガイソウだ。ラン科の多年草で絶滅危惧種に指定されている。福島市によると、野生クマガイソウの群生地は、全国に3か所しかないという。
「2011年は山は開けたけれどイベントは自粛しました。来てくれた人には案内をしようと毎日、会員がここに来ていました。特製の絵葉書を用意してね。あれから少しずつ、観光客が戻って来ました。この辺りは当初から放射線量は低かったんですよ。まあ、気にする人は気にするだろうけれど…」。ボランティア団体「水原の自然を守る会」の男性会員は話した。
「俺たちは避難せずにここに残って生活しているからね。放射線は気にしていないよ。不安に感じている人は既に、避難してしまったろう」とも。女性スタッフに放射線のことを尋ねると、急に表情が曇って口も重くなってしまった。「この辺りは放射線量は高くないからねえ」。
観光客が息を切らせながら山道を登り、満開のクマガイソウに感嘆の声をあげる。山の向こうは土湯温泉。手元の線量計は0.24μSv/hだった。
国道115号に面する「道の駅・つちゆ」。土湯温泉周辺は比較的放射線量が低い=福島市松川町水原
「ふれあい村民の森」に設置されたモニタリングポスト
森に少し入ると、手元の線量計は0.3μSv/hを超えた。大玉村も汚染とは無関係ではない=安達郡大玉村前ヶ岳(写真はすべて05/20撮影)
【村役場悩ませる「0.23μSv/hの壁」】
福島第一原発から約60km。二本松市や本宮市、郡山市に囲まれた安達郡大玉村。人口8500人足らずの小さな村も、いまだに放射性物質の拡散に翻弄されている。
「雨どいの真下や水の溜まる場所など、局所的に1-2μSv/hに達する個所は、やはり村内にもあります。現在の放射線量が高いか低いかは住んでいる方々各人の判断になるかと思いますが、村としては放射線量が0.23μSv/hを下回ると除染はできないのです。国から交付金が下りないからです。村の財政だけではとてもできませんから…」
村役場の再生復興課原発災害対策係。取材に応じた男性幹部は〝0.23μSv/hの壁〟に苦い表情を見せた。「もちろん、村民からの苦情もありますよ。何でやってくれないのかって。0.01μSv/hでも下回れば除染できないわけですから。逆に『この程度の数値なら除染しなくて良いよ』という声もあります。本当に、放射線量の捉え方はそれぞれです」
村役場から車で10分ほどの「ふれあい村民の森」。8ヘクタール超の広大や里山の入り口に設置されたモニタリングポストの数値は0.348μSv/h。手元の線量計も、森に少し入ると0.3μSv/hを超えた。子どもを遊ばせるには決して安全とは言えない数値。役場近くで聴いた、女性の言葉が思い出された。
「お母さんたちはもちろん、心の中に不安を抱えているとは思います。実際、そういう話題も出ます。しかし、私たちはここで暮らすと決めました。役場もきちんと除染をしてくれていますし、大丈夫ではないでしょうか」
【民の声新聞】より
Eye Catch Photo by BehBeh, via Wikimedia Commons
The Ōu Mountains in Kōriyama, Fukushima