「健康被害など無い」と大学生は笑った。クマガイソウを楽しむ観光客でにぎわう里山では、お年寄りが「被曝を気にしないから住んでいる」とつぶやいた。そして、小さな村が翻弄される除染と〝0.23μSv/hの壁〟。地元男性の協力を得て、福島市から大玉村までを車で廻った。福島第一原発から約60kmの中通り。3年経っても汚染は依然として解消されていないが、住民は異口同音に言う。「放射線など気にしていない」…
【「誰も倒れていない」と大学生】
漫画「美味しんぼ」の騒動でにわかに話題になった福島大学。東北本線・金谷川駅からほど近いキャンパス内は除染が施されているが、学生たちは依然として放射線と隣り合わせの生活を送っている。
キャンパス内にある「信陵公園」。大学側も「静かで、休憩にはもってこいの場所。小高い丘の上には、東屋があり、散歩コースにオススメ。吾妻・安達太良連峰の山々がとてもきれい」と胸を張る森だが、少し足を踏み入れただけで手元の線量計は0.5μSv/h近くに達した。周囲に放射線量の掲示など何も無い。
とても学生が散歩を楽しむような環境ではないが、危機感を抱いているのは私だけの様子。大学総務課は「あまり学生が立ち入るような場所ではありませんから」と話す。森の入り口近くのベンチで談笑していた学生グループに声をかけても「放射線ですか?うーん、原発事故の直後は関心がありましたけど、最近はまったく無いですね」と口を揃えた。
「だいたい、あの『美味しんぼ』の描写には驚きました。私自身、原発事故以降にかなり被曝しているはずなのに、一回も鼻血出たこと無い(笑)。周りでも誰も倒れたりしているわけではないですし…」。女子学生は時折笑みを浮かべながら話す。傍らの男子学生も「被曝、被曝と福島県外の人が騒いでいるという感じですね。先生も授業で『福島は安全だ』と言っています」とうなずいた。
福大から国道4号をはさんだ福島県立医科大学。モニタリングポストの数値は0.522μSv/h。校内のベンチでは学生が弁当を食べていたが、手元の線量計は0.5μSv/h前後で推移していた。駐車場付近の植え込みでは、0.6μSv/hを上回った。
福島大学にある信陵公園は、依然として汚染が解消されていない。しかし学生は「別に気にしていないですね」=福島市金谷川
福島県立医大の中庭。近くのベンチでは学生が弁当を食べていた=福島市光が丘
福島市松川町水原の「クマガイソウ群生地」。土日はボランティアスタッフが休憩できないほどの人出だという