集団的自衛権:今国会、与党合意困難

毎日新聞 2014年05月27日 23時00分(最終更新 05月28日 00時00分)

政府が与党に示した15事例
政府が与党に示した15事例

 自民、公明両党は27日の「安全保障法制の整備に関する与党協議会」(座長・高村正彦自民党副総裁)で、政府が集団的自衛権の行使容認や法整備が必要としている3分野15事例の議論を始めた。政府・自民党はこの日、「グレーゾーン事態」と「国際協力」に関する計7事例について公明党と方向性を一致させようとしたが、政府の説明が冒頭から一貫せず、公明党は反発。安倍晋三首相が目指す今国会の会期末(6月22日)までに、3分野すべてで閣議決定するのは難しい情勢だ。

 ◇15事例議論、足並み乱れ

 政府は27日、グレーゾーン事態▽国連平和維持活動(PKO)を含む国際協力など▽集団的自衛権の行使容認に当たる武力行使−−の3分野15事例を示した。だが最初の「離島などでの不法行為への対処」で、政府は本土でも自衛隊が警察に代わり活動する可能性を示し活動が無制限に広がりかねないとして公明党の北側一雄副代表らが反発した。

 「大きな方向性」(高村氏)の合意で閣議決定に持ち込みたい自民党は、27日中にグレーゾーンと国際協力で結論を出そうと狙ったが、この日議論できたのはグレーゾーンの2事例だけで、「結論も今後の進め方も未定」(北側氏)の状態。公明党はグレーゾーンでも詳細な制度論に踏み込む構えで、同党ペースで進んでいる。

 政府は早期の結論を得るため、具体的な事例数を15まで上積み。個別に場面や条件を明記して「限定的」だと強調した。集団的自衛権は8事例に増え、首相が力説した米艦防護は5事例に上る。与党協議の公明党メンバーは「限定して認めさせ、後からどんどん範囲を広げる狙いだ」と警戒する。

 政府の事例集は「限定容認」を強く演出したため、賛否が分かれかねない設定も目立つ。27日の協議では、離島での不法行為を巡る過去のケースで「自衛隊の参加が必要だった」と主張した防衛省と、「自力で対応した」とする警察庁などの見解が割れた。また、例えば「近隣国が核ミサイルで米国本土を攻撃した場合の米艦防護」は、米国が反撃して日本が核戦争に巻き込まれる展開につながりかねないなど、今後の協議が紛糾しかねない要素も多い。

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