集団的自衛権:自民会合、初の慎重派講師

毎日新聞 2014年05月28日 00時11分(最終更新 05月28日 02時59分)

第7回自民党安全保障法制整備推進本部の会合冒頭で講師の柳沢協二・元官房副長官補(中央)を前にあいさつする石破茂幹事長。右は高村正彦副総裁=東京都千代田区の党本部で2014年5月27日、藤井太郎撮影
第7回自民党安全保障法制整備推進本部の会合冒頭で講師の柳沢協二・元官房副長官補(中央)を前にあいさつする石破茂幹事長。右は高村正彦副総裁=東京都千代田区の党本部で2014年5月27日、藤井太郎撮影

 自民党は27日、集団的自衛権の行使容認などを協議する「安全保障法制整備推進本部」(本部長・石破茂幹事長)の第7回会合を開き、安倍政権の解釈改憲方針に慎重論を唱えている柳沢協二・元官房副長官補を講師に招いた。初めての慎重派の講師に、出席議員からはかえって「行使容認を急ぐべきだ」との声が続出。集中砲火を浴びせる異例の展開となった。【笈田直樹】

 ◇出席議員から集中砲火

 「従来の政府解釈と整合性が取れるのか。母親が子どもに『必要最小限』の小遣いを出す場合、バイクかゲームか学用品か、使う目的によって全く違う」

 柳沢氏は約30分の講演で、自民党内で意見集約が進んでいる集団的自衛権の「限定容認論」について持論を展開。子どもの小遣いに例え、認める範囲がどんどん広がりかねないと懸念を示した。

 また、集団的自衛権の行使容認に踏み切った場合、「かえって戦争当事国になり、相手が日本を攻撃するインセンティブ(誘因)も生まれる」と主張。現行の個別的自衛権で対応できると説明した。

 自民党が3月末に始めた同本部の会合に、講師として招いてきたのは森本敏前防衛相や古庄幸一・元海上幕僚長ら行使容認派ばかりだった。今回、防衛省出身で慎重派の柳沢氏を選んだのは「丁寧な議論」を印象づけたい思惑があったからだ。

 ところが、質疑応答に入ると、出席議員は、小泉政権で自衛隊のイラク派遣などに携わった、かつての「身内」に相次いで反論。「個別的自衛権で日本が守れると考えるのはバラ色の空想だ」「日本が現体制を維持すればいいとしか聞こえない」と批判を浴びせた。

 石破氏が見かねて「我々が招いたお客さまだ」と出席議員をたしなめたほどだが、限定容認論をリードする高村正彦副総裁も「小遣いをもらう目的を『国の平和と安全を維持するため』と明確にし、(少額の)学用品を買うと言っている。決めつけは残念だ」と反論した。

 約30分の「質疑応答」は平行線のまま終わり、柳沢氏は会合後、記者団に「幅広い視点で、もっと丁寧に議論してほしいと申しあげたつもりだ」と淡々と語った。柳沢氏の招請を提案した野田聖子総務会長は27日の記者会見で「これまではお勉強の場で議論になっていなかった。議員同士も賛否を協議すべきだ」と述べたが、同党は会合に改めて行使容認派を呼ぶことを検討している。今回の議論が同党の意見集約の方向性に影響することはない見通しだ。

最新写真特集