May 27, 2014
普段、食糧について不安を感じる機会はあまりない。スーパーに行けば安価で豊富な食材が溢れている。消費者の心配のタネといえば、価格の高騰ぐらいだろう。この数十年間、アメリカでは食料価格が比較的低い水準に維持されており、一般的な家庭の総収入に占める食料費の割合は10%に満たない。そして、多くの人がそれを当たり前と考えている。
だが、その認識は改める必要がある。現代でも、世界のすべての人々が食料を難なく入手できるわけではない。食事を十分に摂ることができない人は全世界で8億人を超え、アメリカ国内でさえ4700万人が食糧援助を必要としている。食糧価格が世界的に高騰した2008年は、エジプトやバングラデシュ、ハイチなどで社会的な混乱で国中が揺れた。当時をきっかけに、十分な量の食料と手頃な価格が食糧問題や経済の専門家にとって大きな懸案となっている。
先週、アメリカのワシントンD.C.で、「シカゴ国際問題評議会(Chicago Council on Global Affairs)」の会合が開催され、新・・・
だが、その認識は改める必要がある。現代でも、世界のすべての人々が食料を難なく入手できるわけではない。食事を十分に摂ることができない人は全世界で8億人を超え、アメリカ国内でさえ4700万人が食糧援助を必要としている。食糧価格が世界的に高騰した2008年は、エジプトやバングラデシュ、ハイチなどで社会的な混乱で国中が揺れた。当時をきっかけに、十分な量の食料と手頃な価格が食糧問題や経済の専門家にとって大きな懸案となっている。
先週、アメリカのワシントンD.C.で、「シカゴ国際問題評議会(Chicago Council on Global Affairs)」の会合が開催され、新たな食糧危機に対する解決策が話し合われた。同評議会は食糧に関する諸問題に長年の取り組みを続けており、産地や種類、その量、利用方法と廃棄方法、将来も十分な量を確保できるかなど、多方面にわたる調査結果を発表している。
会合に出席した専門家は、今後の食糧不足の主な要因として、世界の人口増加と気候変動を挙げている。人口増加によって肉や乳製品など上質な食品への需要が高まる一方、気候変動の影響により多くの地域で作物の収穫量が減少すると予測。統計によると、暴風や洪水、猛暑、干ばつなどの発生頻度は高くなる傾向を示し、それに伴って穀物生産量も世界的に減少している。
これは深刻な問題である。コメや麦、トウモロコシなどの穀物に対する需要は、今後数十年間でさらに増加するとみられるからだ。人が口にするほぼすべての食糧は穀物によって支えられており、肉も例外ではない。食肉用の家畜に飼料として与えられているのは、トウモロコシや麦、大豆などの穀物なのである。
シカゴ評議会の会合では、気候変動が食糧供給に与える影響について議論が交わされたほか、サハラ以南のアフリカや南アジアなどの食糧難地域で作物生産量を向上を目指す方策についても話し合いが持たれた。作物の収穫量が不十分もしくは不安定なこれらの地域は、食糧不足の解決がますます必要とされている。取り上げられた議題の1つが、農業生産の“持続可能な強化”だ。その土地の土壌や水質を損なわずに作物の収穫量を増大させる取り組みで、アフリカ地域における灌漑施設の整備や、先進的な農業技術の実践指導などが挙げられる。
また同会合では、米国際開発庁(USAID)が、新興国で暮らす母親や乳幼児および児童の栄養状態を改善する新たな取り組みについて説明。新興諸国で生産されている農作物の収穫量と品質を向上させ、貧困撲滅を支援する広範なプログラム「Feed the Future(未来を養う)」の一環として行われる。
USAIDのラジブ・シャー(Rajiv Shah)長官によると、「Feed the Future」の活動によって貧困から脱却した子どもは1200万人以上、生活状況が改善した農業従事者は700万人以上にのぼるという。
2013年に国連が発表した予測によれば、2050年までに世界の人口は現在の約72億人から約96億人に増加する。今後数十年間に上昇すると見られる食糧需要の大部分は、食肉が占めると予測されている。ちなみに、食肉1キログラムを生産するためには数キログラムの穀物が必要になるという。事態の深刻さをあらためて実感させられる事実である。
気候変動の影響と両立する作物増産、また人口増加に十分対応できる量の食糧確保は、人類が直面する深刻な諸課題の中でも、とりわけ強調される機会が多い。しかし、この難題に取り組む若い人材は数が限られている。最新のレポートによると、アメリカの農業界は十分な訓練と経験を積んだ専門家の不足に頭を悩ましているという。
今後は、食糧の増産に目を向けるばかりではなく、その担い手の育成にも力を注ぐ必要があるとレポートは提言している。
Photograph by Jim Richardson / National Geographic Creative