浸水域で自宅再建 陸前高田市、危険区域に指定せず
岩手県陸前高田市は、東日本大震災の津波浸水域に土地を所有する被災者が現地再建を希望する場合、所有地を災害危険区域に指定しない措置を取っていることが分かった。他の被災自治体は浸水域全体を危険区域に指定している。市は「被災面積が広く、現地再建を希望する市民が多いため」と措置の理由を説明する。
同市は、海岸や津波がさかのぼった河川流域などでこの措置を取っている。大規模な土地区画整理事業が進む高田、今泉両地区は除いた。
津波浸水域に土地を持つ被災者が防災集団移転促進事業などで別の場所に住宅を再建する場合、元の土地は災害危険区域に指定する。同じ区域でも、現地に再建する場合は指定しない。
市は浸水域での再建について「防潮堤が整備されておらず、安全面に課題はある。万一、津波が来た場合には逃げてもらうしかない」と危険性を認める。
ただ、被災世帯が3300と多く高台用地の確保が難しい現状を挙げ、「このままでは市民の市外流出につながりかねない。元の土地に愛着を持つ市民は多く、措置を取った」と説明する。
同市では約1300ヘクタールが浸水したが、危険区域に指定されたのは約58ヘクタールにとどまる。浸水域で現地再建したのは、全壊世帯が11.2%(128世帯)、大規模半壊世帯は67.3%(74世帯)に上る。
自宅が2階天井まで浸水したが、修繕して元の土地で生活する広田町の主婦(60)は「この地を離れたくないし、知らない場所に移るのは不安だった。津波が来る時は避難し、自分の命は自分で守る」と言う。
市復興対策局の熊谷正文局長は「高台移転が原則だが、防潮堤が完成すれば浸水域でも安全は確保できる。住宅を優先するため、現地再建を認める」と話している。
2014年05月23日金曜日