[写真]『東京キャットガーディアン』の山本葉子代表=『東京キャットガーディ アン』大塚シェルター

 「猫つきマンション」と聞くと、どんなイメージを抱くだろうか。「猫憑き」ならば、何かオドロオドロしいものを感じる。だが安心してほしい。この場合の「猫つき」とは、保護猫を預かって一緒に暮らすことのできる賃貸物件のことだ。殺処分される運命にあった猫は安住の地を得、居住者は心置きなく猫と暮らせる。そして、大家さんは物件のPR効果を喜ぶ。この新たな「一石三鳥」の保護システムが、注目されている。

 おそらく世界でも例がないシステムを作ったのは、NPO法人『東京キャットガーディアン』の山本葉子代表だ。運営する「大塚シェルター」(東京都豊島区)を訪ね、その狙いや現状を聞いた。

年間の殺処分数は13万頭以上

[写真]大塚シェルターは、里親を待つ猫たちとひとときを過ごすことのでき る開放型シェルターの先駆けだ

 「大塚シェルター」には、保健所(最近は「動物愛護センター」という名称も使われる)などから保護した猫が常時70頭前後暮らしている。「開放型シェルター」と呼ばれる新しいスタイルの保護施設で、譲渡会場、猫カフェ、チャリティグッズの販売所を兼ねる。マナーとルールを守れば見学は自由だ。同じ東京の府中市にも、同様の「西国分寺シェルター」がある。

 シェルターを運営する『東京キャットガーディアン』は、「殺処分ゼロ」を目指して活動しているが、実現はまだまだ遠いと言わざるを得ない。犬猫の殺処分数は年々減ってはいるものの、環境省が公表している最新の数字(平成23年度)によれば、今だに全国で年間13万頭以上の猫が殺されている(犬は約4万3000頭)。保健所に持ち込まれるのは、主に野良猫が産み落とした子猫、飼育放棄された猫、迷い猫などだ。

 山本代表は、毎日のように保健所を巡回し、救える命をシェルターに連れてきている。そして、必要な治療や去勢手術を施し、一定期間過ごした後に里親へ譲渡される。昨年は『東京キャットガーディアン』の活動全体で768頭を受け入れ、697頭を譲渡した。しかし、「それもほんの氷山の一角です」と山本代表は言う。そこで、少しでも助かる道を増やそうと2010年から始めたのが、「猫つきマンション」だ。