米レーダー着工:過疎化の京丹後、苦渋の受け入れ

毎日新聞 2014年05月27日 12時37分(最終更新 05月27日 13時15分)

 日本海を望む丹後半島北端の静かな集落。そのすぐそばで27日、Xバンドレーダー配備に向けた米軍基地の建設工事が始まった。地権者が集まる京都府京丹後市の袖志(そでし)地区は、過疎高齢化が急速に進む。近畿初となる米軍基地に住民は不安をちらつかせながらも、「何でも受け入れなければ集落が消えてしまう」との思いもある。

 京丹後市は2004年に6町が合併し、人口約6万5000人で誕生した。基地予定地の袖志地区は、市東端の旧丹後町で最も東に位置し、人口192人。半数の世帯が米軍に農地を提供し、地権者の60歳代男性は「基地は端っこの、さらに端っこの場所に押しつけられた」と悔しげに語る。

 自治区長の大下教夫さん(64)によると、地区の6割が60歳以上で、子供はほとんどいない。「20年後はどうなりますか。基地でも何でも受け入れなければ、袖志は消えてしまう」。大下さんはそう語り、表情を曇らせた。

 京丹後市への米軍レーダー配備は、昨年2月に日米両政府で合意。「有事に標的になるのでは」「犯罪は増えないか」。住民の不安が広がる中、計画は急ピッチで進められた。

 防衛省関係者が繰り返し地元入りし、昨年9月に周辺農地の10倍以上の1平方メートル当たり年190円の賃料を地権者に提示。一部住民が契約を拒んだが、賃料を年300円に上げ、12月までに必要な地権者から用地提供の同意を取り付けた。

 「基地への恐怖心は消えないし、基地はない方がいい。でも、原発なら住民の反対で止められるが、米軍基地は国でも手出しできないんでしょ」。大下さんはつぶやく。「仕方ないんだっちゃ。それが全て」

 防衛省は地元に対し、基地建設に伴う工事や米軍人の飲食に伴う支出などで、地域経済が活性化すると説明する。京丹後市は今後10年間で約30億円の国からの交付金を見込む。

 地域住民らで作る「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」などは今年3月、地権者らを除く約1000人を対象に署名を集めると、半数以上の561人が基地反対の意思を示したという。永井友昭事務局長は「表立って行動はできなくても、これだけの住民が反対の意思を持っている。これが民意です」と強調した。【藤田文亮、塩田敏夫】

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