2014年5月27日火曜日

投資の失敗について

<投資の失敗について> 
僕のような小型のアーリーステージの投資組合にとっての投資の損失というのは、そもそもの掛け金が比較的小さいので、全損であっても影響は小さい。
最大の投資の失敗というのは、目に見えない「投資すべきだったのに投資しなかった」機会損失にあるように思える。

代表的な失敗事例をあげておきます。

・グリー初期にの元ネットエイジで一緒に働いていた山岸氏(現副社長)から相談を受けた際に、時価総額が×億で高いな~と思った。→いまでは東証一部の時価総額数千億の日本を代表する会社に。
・当時まぐまぐでアルバイトしていた佐野君が料理サイト作ってて、当時僕は、「趣味のサイトか~ ひまなのかな~」と思っていた。→月間UU2000万人のクックパッド

・アクセンチュア時代の先輩吉松さんに喫茶店によびだされて、当時まだ大学生だった田中良和氏と一緒に話を聞いて、化粧品のメルマガを出すんだ、と説明された時には「吉松さん!!オトコなのに!!!」と思って、どうやって資金の相談につながらないようにするか、懸命に話をそらしていた。→@コスメ大成功 一部上場おめでとうございます!

・eGroupsの日本法人取締役を引き受ける際に、サンフランシスコで、eGroups創業者1人のカール・ページから、今度弟が起業して検索サイトを始めたんだ、と弟さんを紹介されたけど、「え!いまさら!検索エンジン!!!アルタビスタかよw!Gooooogle!死ぬほどスペルうちにく!」と思った。
あと弟が兄より出世するなんて、ありえないと自信を思っていた。
→ラリー・ページは、その後神速で世界制覇

・ネットエイジ時代に西川さんとシリコンバレーの「Idealab」を訪れた際に、小さなスペースに机がちょこっとだけあったOvertureを見つける。ビジネスモデルを聞いたら、「検索結果に広告を差し込むんだよ!」と聞いて、帰りしな西川さんと2人で「!!!ぜったいに!!!この会社は!!!ダメですね!!!!!」と確信していた。
→その後Yahoo!が買収、Googleも採用するビジネスモデルに

ちなみにその際に、多数の机とスタッフで大きなスペースをわが者顔で占めていた玩具ECの「eToys」をみて、僕も西川さんも「この会社は勢いがあって!一番成功しそうですね!!!」と言っていた。→デラウェア破産裁判所で2001年倒産
ほんとうにわからないものです。。。

2013年2月20日 のFacebook投稿 松山太河

2014年3月30日日曜日

■動物園とサバンナの話

■動物園とサバンナの話

もうすぐ4月が始まる。「大きなとこで修行してから、力をつけてスタートアップしようかな」という考え方には、部分的に賛成する部分もあるけど、気をつけなければいけないのは、本質的に給与のもらい方が異なることを理解しておかないといけないと思う。

大企業で働くのは快適で、動物園の動物に似ている。温度も快適に調整されていて、エサは毎食ほぼ決まった時刻に支給される。毎日やってくる観光客に、自分の役割を披露していれさえすれば、辞めさせられることもない。その代わりとしては与えられた檻(その会社の事業領域や権限範囲)からでることはなかなか容易ではない。

スタートアップはサバンナの動物に似ている。時間も居場所も自由。その代わりに野を駆けまわり自分で獲物(売上)を獲得するか、資金を何処かから調達しない限り、エサは手に入らない。獲物が手に入らなければ、そのまま飢えて死んでしまう。だからエサは与えられるものではなく、自分で獲得するべきものだ。
(幸運にもほかの人が見つけてないような良い狩猟場を見つけられたら、一挙に所帯が増加できる場合もある。)

「大きな会社で働いてから、力をつけてスタートアップをすればいい」と考える人は、大きな会社にいてもサバンナのような気持ちでいないといけない。毎時決まった時刻にでてくるエサはある意味麻薬的で、それが途切れるということは大きな恐怖になりうる。多くもらっている人ほど、飛び降りる崖の高さは高くなる。これはやってみた人でないとわからないかもしれないけれど、定常収入が無くなるというのはすごくストレスフルなことなんだ。

仮にその恐怖を乗り越え勇気を出して荒野に出ても、長く動物園でエサは定刻にほぼ自動ででてくることに慣れてしまった動物にとって、サバンナで生きていくことは容易ではないだろう。大企業修行組の若者は、快適な動物園にいることによるリスクもあるいうことも認識した上で、自分に厳しく研鑽をすべきだと思う。日本でも大企業のエリートとスタートアップを行き来するような人生設計がごく一部では見られるようになってきたのはとても良いこと。もちろんまだ到底カリフォルニアほどではないと思うけれども、それでも10数年前にくらべればぐっと良くなったと思うんだ。

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※自分自身はスタートアップに頼って生きている身だけれども、大多数の人はサバンナで生きていくのは難しいことだと考えている。だから、決して本稿でサバンナを賞賛したいのではなくて、むしろ適切に危険をお知らせしたいくらいだ。(実際に思っているよりも数倍も数十倍もエサを捕るのはむずかしい。)
ただ、動物園にいるのも一つのリスクではある時代。日本経済を救うくらいの潜在力をもった、ごくごく一部の凄い野生の動物のために、このエントリーを捧ぐ。
Taiga Matsuyama