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社会

「慰安婦の他にも性暴力被害者がいる」 ジャーナリストが相模原で講演

 戦時下の性暴力被害者は「慰安婦」とされた女性たちだけではない-。慰安婦問題の取材を続けるジャーナリスト川田文子さん(70)が25日、相模原市内で講演し、日本軍による性的被害などを訴える各国女性らの証言を紹介した。加害の歴史への認識と、反省の必要を強調した。

 川田さんは長年、朝鮮半島出身の元慰安婦らの取材を続けてきた。加害の歴史をたどるうち、軍が管理した慰安所の外でもあった監禁や強要、強姦(ごうかん)など性暴力被害を訴える声に多く出会った。

 講演では、当時13歳で旧日本軍の憲兵隊に連れ去られ、集団で犯されたインドネシアの女性の存在を紹介。「そのせいで女性は体内に雑菌が入るなどしたため、子宮摘出を余儀なくされ、子どもを産めない体にされた。苦悩を背負って生き続けていた」

 中国については1937年からの日本軍の南京攻略戦にも言及。「性器に瓶などの異物を突き刺す、親族同士で性行為を強要させるとか想像を絶する証言をたくさん聞いてきた」

 川田さんは戦時下の性暴力の実態全体に光が当たることなく、慰安婦問題をめぐって強制性の有無や各国との比較など限られた範囲のみで議論が再燃していることを憂う。「性暴力はたった一度でも女性の心身に余りに深い傷を残す。被害を訴える声ともっと向き合うべきだ」と語った。

 その上で、慰安所の経緯なども紹介。軍規定の改正により戦地や占領地に造られた、妻や姉妹を残し出征した日本兵に配慮し他国の女性を多く慰安婦にした、女性のためでなく日本兵の性病予防の観点から避妊具が配られた-と説明。

 慰安所の存在に嫌悪感を感じたという元日本兵の証言などを挙げ、川田さんは「多くの日本兵は(慰安所が提供した)ああいう性を本当に営みたかったのだろうか。男性の尊厳もおとしめられたのではなかったか」と持論を語った。

 質疑応答では、日本政府が日韓基本条約(1965年)で公式な賠償や謝罪は解決済みとする姿勢に対する見解を問われ、「当時は慰安婦問題は表面化していない。解決していない問題がある」と回答。

 欧州連合(EU)欧州議会などが日本政府に公式謝罪を求める決議がなされている経緯にも触れ、「女性への重大な人権侵害だ、と世界が言っている。そういうことを私たちは受け止めないといけない」とした。

【神奈川新聞】