地域振興

市町村合併の欠点を長所に変えた東近江市よそ者を拒まない進取の気性がアイデアの横展開を可能に

2014.05.22(木)  川嶋 諭

山口 こうした積極性が東近江の面白いところなんですが、例えば毎年開かれる「びわこJAZZフェスティバル in 東近江」というのがあります。毎年4月に、土日の2日間、街中が会場になって、出たいバンドが登録してあちこちで演奏が行われます。

 こういうイベントに、福祉関係者やNPO、農業関係者などが当たり前のように参加される。演奏はしないけれど食べ物の屋台を出すとか、どんどん広がって融合していく。これは本当にこの町の強みだなと思います。

川嶋 そういう開かれた風土というか、地域性のようなものがあるんですか。

一面の菜の花畑からは花の香りが漂う

山口 この地域はかつて交通の要衝地として栄え、近江商人が活躍したところという背景があるのかもしれません。私はもともと滋賀の県職員で、ほかの地域にも行ったことがありますが、東近江ほど市民活動が活発なところは県内でも珍しいと思います。

 分野を超えた「多分野連携」に関しても、以前から「菜の花プロジェクト」という活動がありました。これは愛東地区(旧愛東町)で1998年に生まれたもので、そもそもは琵琶湖の赤潮を解決するために始まった石けん運動が、地域のことは地域で解決するという地域自立の運動に発展したものです。

 この土地には古くから惣村自治と言われる文化があって、自分たちのことは自分たちで決めて、そのルールをみんなで守ってコミュニティーを維持していくという考え方が強く残っていますね。人や地域のつながりを大切にし、同時に公共利益のために貢献するという意識が根付いているのだと思います。

多分野連携で生まれた「薪プロジェクト」の意外な効用

川嶋 分野を超えた連携で協力を得たりヒントを得たりすることで、自分たちだけではうまくいかなかったことが解決できるということですが、実際にどんなことが起きているんですか。

山口 これまでたくさんの多分野連携が生まれていますが、その1つに「薪プロジェクト」があります。

 東近江には豊富な森林資源があるのですが、人が植えて管理している以外の雑木林は、採算の面から放置されているのが現状です。しかし、虫害などで枯れた木は放っておくわけにいかず、切って更新しないといけないんです。

 市民としても、里山の保全や獣害対策という面からも伐採は必要なことでした。しかし、切った木をどうするかが問題だったんです。薪にするにしても、人件費などを計算すると赤字になってしまうというのが林業に携わる人たちの常識であり悩みでした。

 それで総務省の調査事業を活用して、伐採した材を薪として利用するビジネスができないかを調べたところ、ボランティアや障害者の方の協力があればできるということが分かったんです。

山口 実は障害者の就労支援をしているセンターには、障…
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