スマホ時代は「人造人間17号のようなムダが大事」nanapiのQAアプリ『アンサー』に聞く、コミュニティサービス運営のコツ。

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今回はQAアプリ「アンサー」を運営する、
株式会社nanapiの古川さんと岡山さんにアプリのお話を伺ってきました。

割と不思議な雰囲気のアプリで、前から気になっていたのですが、いろいろ面白い話が聞けました。
コミュニティサービスを運営している人は、特にヒントになる点が多いのではと思います。

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※写真はnanapi岡山さん(左)、nanapi古川さん(右)

アンサーについて

アンサーについて教えてください。

古川:
リリースは2013年の12月です。
いまはiOSだけで、Androidもそろそろリリース予定です。

nanapiのスタッフは70人くらいいますが、
アンサーのチームは7人(うちアルバイト2人)でやっています。

ユーザーは7割が女性で、実は一番多いのが17才。
年齢でいうと中高生が30%で、20代が65%(20代前半が多い)です。

「アンサー」を人に紹介するとき何て説明していますか?

古川:
「半端ないです」くらいしか言わない。笑

昔は「10秒で説明できないサービスはダメだ」と思ってたのですけど、
最近は、言葉で説明しないといけないこと自体が「イケてないこと」だと思ってきています。

岡山:
「相談すると、とにかくすぐレスがくるよ」とだけ説明します。
アンサーのユーザー体験は「すぐ返事がくる」に尽きるので。

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アンサーはどのくらいの人が使っていますか?

古川:
アプリのダウンロード数は公開していなくて、
公開できるデータとしては、質問数が52万、回答数680万あたりでしょうか。

それと「スティッキネスですよ」とよく話しますね。
平均滞在時間が20分を超える、一人あたり45ページくらいみているとか。

岡山:
あと、人気のスレッド(投稿)は数百〜数千PVくらいは見られていますね。

どうしてアンサーをつくったの?

古川:
スマホならではの”ユーザーが集まる場所”をつくりたいと思いました。

いま、nanapiというハウツーのサイトを運営しているのですが、
nanapiの場合「人参の切り方」とか、みんなが明確に「課題」だとおもっていることを、
Googleで検索してnanapiにたどりつく形なので、まず検索エンジンありきになってしまう。

そして「ハウツーを見にいく」という行動は、ふつうは毎日しないことなんですね、
「課題」がでてくるのは月1〜1.5回くらいという調査もあったりして。

なので、もっとユーザーが最初に集まる場所、ファーストタッチをとっていかないと、
結局ブロガーさんとかと、検索エンジンからのアクセスを争うことになるのでツライよねと思っていて、

それで、QAでスマホならではのサービスが出来ないかな、
というところで始まりました。

なんというか・・・アンサーってQAサービスなんでしょうか?

古川:
「QとAがフックになるコミュニティサービス」というのが近いとおもいます。

課題の解決におけるコミュニケーションって、
パケット型とグルーミング型の2つの方式がある
んです。

パケット型は「人参の切り方を教えてください」という感じで、
「正しい切り方」が知りたくて、情報自体が大事なパターン。

グルーミング型は、たとえば恋愛の悩み。
「彼氏にこういうメールをうちなさい」って教わるよりは、
だれかに話を聞いてもらったりして、彼氏との関係性を確認することで満足する。

アンサーに関してはどちらかというと、後者のグルーミング型で(nanapiはパケット型)、
明確な答えが返ってくるよりも「コミュニケーションができる」ことをイメージしています。

マーケティングについて

ランキングの推移を見るとカテゴリを定期的に変えている。これは実験?

岡山:
はい実験をしてみたのですが、結局カテゴリを変えてもダウンロード数は変わらないという結果でした。カテゴリランキングの順位が激しく動いてもダウンロードは一定。

おそらく、カテゴリランキングって業界の人しか見ていないんじゃないですかね。
ユーザーはそうやって探さないんだなって思いました。

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ランキングが伸びるときは何がおきる?

古川:
グッと伸びているところはブースト広告をつかっています、
やっぱり世の中、金なんだなあと。

ただブーストだけだと芸が無いので、
ユーザーに楽しんでもらえる仕組みで集客したいなとおもっていて、

例えば、有名なモデルの方とか、ニコニコ動画の有名人にお願いして、
「公式質問」をしてもらう
というプロモーションをやっています。

有名人やモデルさんには5万円とか10万円お金を払っていますが、
CPI(1ダウンロードあたりの獲得コスト)で計算してもとても効率が良いですね。
ユーザーも伸びますし、場も盛り上がりますし。

岡山:
モデルや有名人からすると、質問に答えるだけの仕事で楽ですし、
お願いするとみんなノリノリでやってくれますよ。

アンサーってどうやって広まるんですか?閉じられているとクチコミされない。

古川:
そうですね、それはほんと困ってます。
面をとりにいく方法をどうしようかなって、どうしたらいいんですかね?

岡山:
ぼちぼち、友だちをつれてきているユーザーもいますが、
匿名なのであまり期待できないですし。

一応シェアボタンはついているんですけど、アンサーの場合そんなにSNSに拡散しない。
2chと一緒ですよね、「2chに書き込んでるよ」とかって人に言わないですし。

古川:
もう、いっそシェアしたら退会とかにしようかな。
絶対に人に言っちゃいけないとか。

アンサー内で「このアプリどうやって知った?」というスレッドがあって、そこでは「掲示板を探してた」が多くて、コミュニケーションしたいニーズの人がたどりつく印象だった。

岡山:
あー、AppStoreで掲示板をさがしていてハマった人は、おそらく多いですね。
「ひま」とか「掲示板」で探しているのかも。

正直最初、「ユーザーはアンサーのアプリをうまく探せないんじゃないかな」と、
言い方は悪いのですが甘くみていたんですよ。

でも、「こういうことしたい!」っていうときの
彼らの検索スキルも含めて、探し出す能力はハンパなく高いなと感じました。

アプリを運営してみて。

だしてみて予想と違ったところは?

岡山:
想像をこえて「ユーザーが自分の悩み自体を分かっていない」ことは驚きました。
「会話しながら悩みに気づいてくれたら良いな」と思っていたが、そこすらも意識していないというか。

古川:
だから「言語とか文字ってイケてないんじゃない?」という話はよくしていて、
文字にすることすら難しいことって結構ある。

恋愛の話とかモヤモヤしていて「はぁ・・・」ってため息だけするとか、
漠然とたぶん彼氏とのことなんだけど、なんかモヤモヤするという感じが多い気がします。

そこから、まわりのユーザーと会話しながら、
悩みを相談してくっていうのはあるんですけど、

そもそも、「悩みを言語化する」ってハードルが高いというか、
実は、悩みを言語化できている時点で半分くらい解決しているんですよね。

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アンサーは閉じられた世界になっている、アプリ内の検索もないし、スレッドも一度流れていってしまうと、もうそれを見ることはない。それは意図して設計している?

古川:
そうですね、悩み相談はオープンになっていると気持ち悪い、
10年前のヤフー知恵袋の恋愛の相談が未だにみれるってホラーじゃないですか。

スレッドがすぐ流れて消えていったりとか、
パソコンでみれないからオッサンが入ってこないとかは大事かなと思っています。

AppStoreのレビューで「新橋のランチのお店を聞いたらたくさん教えてもらえた、検索エンジンはめんどくさい」って声があった、アンサーではそういう検索エンジン的な使い方も多い?

岡山:
そうですね、それは最終的には狙いたいところですね。

まずワードをえらんで、でてきたサイトのリストからさらに選んでと、
WEB検索って「よくこんなことしてたな」っていうくらいハードなことだと思っていて。
だったら、これだけみんなスマホをもっているので、みんなに聞けば良いよと。

例えば、ランチのオススメのお店をアンサーで聞いたとして、
「行ってみたけどまずかったよw」でもぜんぜん良いとおもうんです。

今後そういう「点」の悩みが、
コミュニケーションのなかで「線」になってつながるといいなというのがあります。

いまは課金なども何もないですが、マネタイズ手法はきまっている?

古川:
決まってないですね。
近々でなにか課金ということはないです。

岡山:
とにかく今は、熱をあつめようという段階、
ダウンロード稼いだとしても、アクティブユーザーが少なかったら本質的ではないですし。

驚いたのが、先日ボランティアを募集したところ、数人くればいいかなと思っていたら募集が100人以上きました。純粋に「自分たちでこういうコミュニティにしたい」というユーザーが多いのはありがたいことです。

「Dモーニング×アンサー」の提携おもしろいですね。

岡山:
ありがとうございます。

あまり言語・テキストにとらわれすぎなくて、
コミュニケーションのフックになるようなものを積極的にやりたい。

「真面目な質問」に島耕作が突然でてきてドンズバで答えるみたいなのを増やしていきたい。

古川:
botをどんどん増やしていきたいですね。

やはり求められているのが、情報よりもコミュニケーションなので、
島耕作があいづちうつとか、botがコミュニケーションを促進させるという感じで。

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「アンサー」に「週刊Dモーニング」が公式アカウントを開設より)

コミュニティサービスをつくったり運営するコツ。

古川さんのブログで「アンサーは極端なところでバランスをとりたい」という発言があった、それはどういう意味ですか?

古川:
「中庸なサービスをつくっても意味が無い」と思っているということです。

サービスは削れば尖るし、尖れば刺さるものですが、
とがらせた結果でバランスがすごく悪くなってしまうと、単におかしなアプリが出来てしまう。

「ちゃんと極端なところでバランスをとるのが大事なんだ!」と、
2chのひろゆきさんがいってました。

2chというのは、勝手にやってくださいというスタンスで、
「あなたが死ねと言われたら、あなたにも死ねという権利があります」
というような極端なバランスのとりかたなんですよ。

これを「死ね」は削除しますよ、けど「死ねば良いのに」は削除しません、
という風にしてしまうと、バランスがおかしくなってしまう。

アンサーについても、
極端なところでバランスがとれるサービスにしたいとおもっています。

アンサーは目的のないゆるいコミュニケーションが成立していて、見ていて不思議な感じがする。

古川:
その話でいうと、ドラゴンボールで人造人間17号が悟空を殺しにいくときに、
「空を飛んでいけば速いけど車をつかったほうがいい、そのムダが楽しいんじゃないか」
って話があったじゃないですか、あれと同じでそんなに目的思考じゃないんですよ、みんな。

「手段を目的化するのが大事だよね」とぼくよく言うんですけど、
目的のための手段というよりも、手段自体が楽しいってことのほうが大事なのかなとおもいます。

やっぱパソコンだと仕事で使うことも多くて、
わりと目的思考の使い方が多かったのですが、

よりスマートデバイスが普及していくと
もっとライトでカジュアルな楽しみ方が重要になるかなと。

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(出展:ドラゴンボール30巻より。「さっさと空を飛んで孫悟空を殺しにいこう」という18号に対し、「あえて自動車で行こう、そのムダが楽しいんだ」と17号、人造人間である18号が「意味がない、人間ぽい発想」と表現しているのも興味深い。)

ツイキャスもアプリならではのコミュニティでおもしろいなと思うのですが、ツイキャスについて何か感じるところはありますか?

古川:
ツイキャスでおもしろいなとおもうのが、
「隠れた暇な時間の発見」だとおもっています。

例えばメイクしている時間ってみんな忙しいとおもっていたのですが、
「実は暇な時間だった」という発見。

メイクしている時間も、一人でご飯たべている時間も、
両手がふさがってはいたけど、おしゃべりすることができる「隠れた暇な時間」だった
のです。

なので、その暇な時間にツイキャスで実況中継すれば、
コミュニケーションの時間として転換することができる。

他のサービスが、ご飯を食べているとき、メイクをしているとき以外の、
時間を奪い合っている中で、ツイキャスは”隠れた暇な時間”を総取りしてしまった。

アンサーのような女子高生がつかうサービスつくるのはスゴイ、「自分がユーザー層ではないサービス」をつくるときのコツはあるんでしょうか?

古川:
「ユーザーではない」ということと、
「ユーザーの気持ちがわかる」ということは似て非なるものだとはおもいますが、

どうなんでしょうね?
ユーザーとイコールって最初はすごいやりやすいんですけど・・・。

「ザッカーバーグ問題」っていっていたりするんですけど、
ザッカーバーグはもうおっさんなので、若者の気持ちがわからなくなってきている。

コミュニティサービスって昔からよく、
10代~20代前半じゃないとつくれないといわれていた。

ひろゆきさんが2chつくったのが21歳とかで、
スナップチャットもタンブラーもぜんぶ10代-20代です。

やっぱ、まぐれなんじゃないですか?笑
ツイッターもスナップチャットもまぐれだとおもうんですよね。

ああいう、クソみたいなアイディアが何千個もあるから、ようやく1個あたっているのかなあという気がします。

ツイッターが存在しなかったとして「140文字の短文で・・・」ってプレゼンされたらクソだなっておもいますよね。

古川:
そうですよね、ビジネスコンテストでツイッターが出てきたら、
「うわっ、これクソだなあ。何か制限すれば流行るとおもっているんでしょ!」と言う自信がありますね。

わかんないものですねえ。

30歳とか40歳の人がコミュニティサービスやるなら、どうしたらいい?

古川:
「いまどきの子たちは」とかじゃなくて、
「人間とは何か」的なところを学ぶのは重要なんでしょうね。

ぼくも10代のときにコミュニティサービスの立ち上げとかやってましたが、
いまアンサーをいまやっていても、必要とされているものが同じなんですよ。

何が起こるのかある程度知っている、何で失敗するかある程度わかる、
というのは大事だと感じます。

岡山:
そこは古川の経験があって、すごい助かっています。
たぶんnanapiじゃなかったら、アンサーをつくれていなかったなと思う。

「コミュニティサービスの鉄則はこうだ」みたいなものってないんですね。

古川:
人と人がやりとりするコミュニティサイトだと計算は無理ですね。

基本的にはヒットしたアプリで「計算通りです」って言っている人は、だいたいバカか詐欺師のどちらか。笑
まあ、大体のことは後付けなのではないでしょうか。

取材協力:株式会社nanapi

アンサー(iOSAndroid
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編集後記

お話うかがってみて、コミュニティサービスの運営って正解がなくて、
めちゃくちゃむずかしいんだなというのと同時に、そこが奥深くておもしろいところだとも感じました。

nanapiでは最近「IGNITION」というグローバルサイトの展開などもスタートしていて、
こちらの動向も気になります。(編集者も募集中みたいです)

あと「アンサー」は、マーケティング的に、気になる質問を投げかけるのもおもしろい使い方かも。
この前「妖怪ウォッチって、そんなに人気なの?」って投稿したら、めっちゃレスきて詳しくなれました。

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アプリマーケティング研究所編集部

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アプリマーケティング研究所編集部です。 「マックピープル」(雑誌)や「アスキーiPhonePLUS」(WEB)の外部メディアでも連載を書いています。 広告掲載、一般的なお問い合わせなどはコチラまで。ご相談、情報提供、ニュースリリースなどはnews@appmarketinglabo.net(代表:鶴谷宛)にお願いいたします。
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