オープンデータの価値とは何ですか?
2014年5月27日 in News
世界中で、国及び地方公共団体は、多数の正当な理由により、収集したデータをオープンデータとして利用可能にしています。オープンデータによって、政府がより説明責任を果たすための支援をしたり、政府の業務において市民が力を得たり参画したり、より効率的かつ効果的に公共サービスを提供したりすることができます。民間部門では、オープンデータは、起業家のための新たな機会を創出したり、既存事業のより戦略的な運営を支援したり、投資家に有益な情報を与えたり、研究開発のペースを加速したりすることができます。
これは良いことづくめのようですが、一方でいくつかの疑問が未解決のままです。実際のところ、誰がオープンガバメント・データを利用しているのでしょうか?彼らはどのようなデータセットをどのように利用しているのでしょうか?さらにいちばん答えづらいのは:正確には、オープンガバメント・データの価値とは何でしょうか?
これらは、理論的な問題以上のものです。米国、英国、G8 で設定された最近の政策では、ガバメントデータは、「オープン・バイ・デフォルト」であるべきという考えを受け入れています。即ち、非公開にしておくべきセキュリティ、プライバシー、その他やむを得ない理由がある場合を除いて、それはオープンであるべき、ということです。これは原理的には素晴らしいことです。しかし実際には、米国政府は様々なレベルのデータ品質とともに、さまざまな種類の技術を利用して約10,000の情報システムを管理しています。利用可能で信頼性の高いオープンなデータにそれらすべてを変換する時間、労力、そして費用を正当化するために、私たちはコストと利益を定量化できるようにする必要があります。
私が今GovLab で指揮しているオープンデータ500の研究では、経済学その他の研究者にオープンデータの価値を評価するのに役立つ新しい情報基盤を提供します。これは、現実世界で最初の、健康、金融、教育、エネルギー、その他の部門の政府オープンデータを利用している企業の総合的なマッピングです。これらの企業に、彼らが利用しているオープンなデータセットに関する具体的な質問をすることで、私たちはまた、ビジネスユースにとって最も重要なのはどのようなデータか、そしてどのような形式なのか、といったことを政府機関が優先順位付けするのを支援したいと考えています。
オープンデータ全体の価値を決定することは容易ではありません。これを利用する企業は、できたばかりであることが多く、彼らの成功を測定するのは時期尚早です。一方、多くの既存企業は、自分の仕事のための単なるリソースのひとつとしてオープンガバメント・データを利用しています。このことが、それが彼らのビジネスにどのくらい貢献し得るかを把握することを難かしくさせています。これまでのところ、オープンガバメント・データに価値を置くための努力は、幅広いレンジの数字として表れています。データの価値を推定したものとしては次のようなものがあります:
- 欧州連合(EU)全体で300億から1400億ユーロ(約400億から1850億米ドル)
- 英国内のデータとして、約30億から90億米ドル
- 米国の気象データとして、15億ドルから年間300億ドル以上の間
- 米国のGPSデータとして、900億ドル、もしくはそれを下回る数字
なぜ数字がバラバラなのでしょうか?最初の2つの推定値は(ひとつはGraham Vickery が欧州連合(EU)のために行ったもので、もうひとつはコンサルティング会社デロイトが英国のために行ったもの)ヨーロッパ人が「公共部門データ」と呼んでいるものです。これはパブリックに利用可能ですが、手数料が必要であったり、再利用に制限が存在する可能性があるため、真のオープンデータとは言えないデータです。これらの見積りはそれぞれ、例えば、新たな情報提供のウェブサイトやアプリのようなデータの直接利用から、データ解析技術の市場形成や政府の効率化などのような間接的な便益から発生し得るより大きな価値に至るまでの範囲を示しています。
米国の数字は、何をカウントするか次第です。オープンな気象データは、二次保険市場におけるアプリケーションでは推定15億ドルをサポートしています。しかし、はるかに大きな値が正確な天気予測から来ており、米国内で年間300億ドル以上の節約になると言われています。 GPSデータの価値が900億ドルと見積もられていますが、その数字は業界の研究から来ており、高すぎる可能性があります。それ以外のあいまいな数字:マッキンゼーの調査は米国の健康データが300億から4500億ドルの可能性と推定される、としていますが、この見積は公共データだけでなく民間のデータソースを含んでおり、健康に関するオープンデータの価値を引き出すのを難しくしています。マッキンゼーは現在、すべてのオープンガバメント・データの価値の合計の推定に取り組んでおり、オライリーStrata 会議で今月末(訳注:2013年10月)にリリースされる予定です。
オープンデータ500では、すぐさま私たちがより良い数字を得られるわけではありません:私たちは、単にデータベース内の企業の求人や収益の合計数を単純に加算したり、いくつかのX要素を掛けて、米国政府が提供するデータのすべての値を取得したりすることはできないでしょう。(私たちは、この最初の調査では米国企業だけを研究対象としています)しかし、私たちは、経済学者が今後、より正確で精密な推定値を開発するのに役立つデータを提供したいと考えています。私たちは、調査結果をウェブサイト上で利用できるようにすることを計画しており、そこでは研究者がデータをダウンロードすることができ、新しい企業は、私たちの調査を完成させることができ、オープンデータコミュニティのメンバーは、今後の研究を提案することができます。
また、私たちはデータ保有者(政府機関)とデータ利用者(オープンデータ企業自身)間の長期にわたる対話を立ち上げたいと考えています。私たちは、各企業にどのガバメントデータを利用しているのか、各データセットがどのように役立っているのか、そしてデータセットをどのように改善したら良いか、といったことを尋ねています。体系的に収集されたことがないこの種のフィードバックで、政府機関は公開利用に向けて最も重要なデータセットに優先順位を付け、速やかにそれらをより有用なものにすることができるようになります。英国では、オープンデータ利用者グループが提供するデータを向上させる方法について政府に助言しています。同じ種類のフィードバックは、米国連邦政府機関にとっても重要です。
このプロジェクトを進めるに当たり、私たちはオープンデータから利益を得ている企業のいくつかの強力な事例が既にあることを知っています。オバマ大統領の下で米国初の最高情報責任者(CIO)を務めたVivek Kundra は、最近「生のガバメントデータを利用して構築された企業」の3つの例を指摘しました:住宅データを使用したZillowは、10億ドル以上と評価されています。政府の気象データをベースに構築されたWeather Channel は、2008年に約35億ドルで売却されました。そしてGarmin は、GPSデータを利用して、70億ドルの以上の時価総額を持っています。つい先週、Climate Corporation はスタートアップ企業で、その最高経営責任者(CEO)に私は最近インタビューしたのですが、約10億ドルで売却されました。
問題は、もはやオープンデータが経営資源たり得るのかどうかではなく、どうやったらそれを出来る限り有用なものにできるか、ということです。問題には、データの可用性、データ品質、データ形式、さらには大きな政策、オープンデータの価値に影響を与えることができる技術的、経済的、法的な問題が含まれています。今や私たちはオープンガバメント・データはビジネスに役立つということは分かっているので、何が有効か、いつ、なぜなのか、といったことを学ぶ必要があります。
これを書いている時点では、私たちはオープンガバメント・データを利用している企業を300以上識別しており、彼らにオープンデータ500に参加するよう招待しました。あなたがお勧めする会社がありましたら、こちらにご記入ください。ご自分の会社が良い候補だと思われる場合、私たちの調査はこちらです。#OD500で私達にあなたの提案をtweet したり、opendata500@thegovlab.org 宛てに送ってください。私たちはこの新しい領域をマップしたので、すべての入力は大歓迎です。
このプロジェクトと私たちの方法論についての続きはこちらでどうぞ。
原文(2013/10/11 GovLab Blog 記事より):
Original post What’s The Value of Open Data? / Joel Gurin, licensed under CC BY-SA 3.0.
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