トップ > 愛知 > 5月24日の記事一覧 > 記事
【愛知】資源持ち去り禁止でホームレス困窮 豊橋
豊橋市が、ごみ集積場の「ビンカンボックス」から空き缶や空き瓶の持ち去りを禁じる条例を施行し、半年が過ぎた。予想通り、これまで「空き缶集め」を収入源としてきたホームレスは困窮している。資源ごみが増え、市に歳入増をもたらした一方で、新たな課題も浮上している。 「ここで朝飯を食べたら、後はなにもすることがないよ」 二十三日午前八時。豊橋駅前で、ホームレスの支援者らによる炊き出しのおにぎりを食べながら、六十代の男性はつぶやいた。 市内で路上生活を営む男性は昨年十月の「持ち去り禁止条例」の施行後、空き缶の収集をやめた。それまでは集めた缶を駅近くの公園にまとめていたが、地元の自治会員に「これからは置かないでほしい」と言われ、条例の施行も知らされた。 浜松市内の町工場で三十年ほど働いていたが、十年ほど前に職を失い、豊橋に移ったという。早朝から市内を歩き回り、「ビンカンボックス」を数十カ所巡ってアルミ缶を袋に詰め込んでいた。 集めた缶を市内の金属回収業者のもとへ運ぶと、一キロあたり百十円前後で買い取ってもらえ、月に一万〜一万五千円ほどの収入になった。 昨年十月以降は、毎朝、炊き出しの食事と飲み物を口にし、日中は体力を使わないように、横になって時間をつぶす日が続く。「生活の糧だから、何とか元のルールに戻してほしい」と語った。 別の六十代男性も、市職員から口頭注意を受けて缶集めをやめた。「自動販売機の下に小銭が落ちていないか探すこともある。仲間たちが窃盗や万引に走らないか心配だ」と漏らす。 男性らが缶を持ち込んでいた業者の男性(63)は「『ボックスから取った』と言われれば買い取れないが、『違う』と言われれば、たとえそうではないと知っていても買い取るよ」と打ち明ける。以前は月に四、五十人がアルミ缶を運んで来たが、今はその十分の一ほどだ。 男性は「僕たちの世代は『生活保護を受けるのは恥』という意識が強い。一日中はいつくばって働いて、缶を集めてもせいぜい二千円。それを認めないのはおかしいと思う」と話した。 ◆市担当者「福祉部門と連携」豊橋市内にはビンカンボックスが二千百六十七カ所ある。市によると、条例施行後の半年間で集めたアルミ缶をプレスして売却した量は、前年同期比で六割強増、売却額も七百六十六万円増えた。 条例に違反し、缶や瓶を持ち去ると、口頭注意、警告、勧告や命令の対象となる。命令後も持ち去った場合、市は刑事告発(罰則は二十万円以下の罰金)も検討する。 市は昨年十月から二人一組でパトロールを行い、延べ九十三人を口頭注意、警告、勧告した。命令は出していない。 市環境部業務課の藤井浩主幹は「生活困窮者の違反を見つけた際には、生活保護の受給を促すなど、福祉部門との連携を進める」としている。 (西田直晃) <持ち去り禁止条例の県内動向> 2005年4月に施行した東浦町を手始めに、17市3町(豊橋市を除く)が条例を制定している。豊橋市と同じく10万〜20万円の罰金刑を定めた自治体のほか、豊川市や蒲郡市などでは5万円以下の過料(国または自治体が科す金銭罰)と定めている。 PR情報
おすすめサイトads by adingo
|