「悪魔」の本心はどこにあるのか−。4人が誤認逮捕された遠隔操作ウイルス事件で、威力業務妨害などの罪に問われたIT関連会社元社員、片山祐輔被告(32)は捜査当局に「真犯人」メールが自作自演と見破られた途端、すべての事件への関与をあっさりと認めた。か細い声で謝罪の言葉を並べ、残された母親の健康を心配する一方、無罪を勝ち取るために団結してきた弁護団のことを「操ってきた」と喜々として語る。自らを「サイコパス(反社会性人格障害)」と分析する心のうちには、底知れぬ闇が見え隠れする。(中村翔樹、宇都宮想)
「すがすがしい気持ちだ」
弁護団に一連の事件への関与を認めてから3日後の22日。片山被告は東京地裁での公判で、これまでの無罪主張から一転、すべての罪を認め、弁護団にこう心境を吐露した。
「傍聴人の視線が怖かった」とも漏らしたが、表情は安堵(あんど)感に満ちていた。これまでの公判で「徹頭徹尾、事実無根」「第5の冤罪被害者」と声高に潔白を訴えてきた強気な姿勢は消えうせていた。
「初めて接見したとき、よどみない話しぶりに無実を信じた」。主任弁護人の佐藤博史弁護士は、片山被告の第一印象をこう振り返る。だが、白旗をあげてからの片山被告は「平気で嘘を付ける」といい、味方だったはずの弁護団を裏切るような「真実」を次々に明らかにしていった。
例えば、遠隔操作ウイルスの設計図が入った記録媒体が見つかり、片山被告の逮捕の決め手になった神奈川・江の島の猫の首輪。捜査当局は江の島近くのスーパーで首輪を2個購入したとみていたが、弁護団の調べで購入記録がなかったことが分かり、無罪の心証を強めていた。
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