上司や顧客にうまく伝わる、ビジネスに数字を取り入れる際のポイント
『数字を使えば9割伝わる!』(深沢真太郎著、秀和システム)は、社会人への指導を行っている「ビジネス数学コンサルタント」である著者が、数字で伝達をするための手段を説いた書籍。
本書は、売上や利益など数値化されているものを会話で頻繁に口にしようというありきたりな提案ではなく、数字がない局面からちょっとだけ数字を持ち出して伝えると、こうもビジネスのコミュニケーションは変わるのだということを皆さんにお伝えするものです。(10ページより)
でも、はたして数字で伝えるにはどうすればいいのでしょうか? 第5章「さあ実践! こんな場面でも『数字』で伝える」から、すぐ仕事に活かせそうなポイントをいくつか引き出してみましょう。
【稟議書】数字を使ったラブレターをつくる
たとえば社内で使用するパソコンを新型に換えるため、計200万円分購入する稟議書を提出するとした場合。このようなとき、その合計金額だけが表現されているのでは情報不足だと著者は言います。なぜなら決裁者が知りたいのは、「この支出で損得はどう変わるのか、いつ『損』から『得』に変わるのか」ということだから。
仮に200万円の内訳が「20万円×10台」なら、10名の従業員が新型のパソコンに切り替えることになります。そこで旧型と新型のパフォーマンスの差を時間的ロスとして、1日あたり12分に設定。そして会社のひとりあたりの時間単価を仮に3000円とすれば、
この会社の1日あたりロスしている時間=10×12=120分=2時間
この会社の1日あたりロスしている人件費=3000×2=6000円
つまり旧型のままと、新型に移行した場合とでは、会社として支払う人件費が1日あたり6000円違うということになる。ということは、新型1台の金額200000÷6000=333.0...。チェンジしてから333日間は分岐点を超えないものの、翌334日目からは旧型の状態よりも会社に「得」をもたらすと説明できるのです。
ちなみに提示する数字に正確さは不要で、「この支出はどのようなストーリーで会社に得をもたらすのか」を語れば上司を納得させられるそうです。口説きたい相手へのラブレターなら、相手を不安にせず、断る理由がなくなるようなメッセージを書くもの。同じように稟議書も、「受け入れることでこれから先どうなるのか」をストーリーのように語ればいいというわけです。(156ページより)
【セールストーク】お客様の負担が軽くなる伝え方を
ここで例として出されているのは、入院保険商品を営業する場合。そんなとき、仮に「高齢者の平均入院回数、なんと4.0回!」と伝えられてもグッとこないのは、恒例になれば入院の可能性や機会が多くなるであろうことは、数字で示されなくてもわかることだから。
大切なのは「いくら払わなければならないか」だということですが、でも「医療費が300万円だと、あなたの自己負担金はおよそ3%」というのでは説明不足。パーセントは実体が伝わりにくい言語だからだそうです。そこで、
医療費300万円だと、自己負担額は106450円
さらに、もっと簡略化して
医療費300万円だと、自己負担額はおよそ10万円
たしかに、これなら簡潔です。ただし「負担する金額はこれだけで、残り全部は保険でまかなえる」というメリットを、もっと身近な例で、納得感のある表現で伝えられたらなおよいとのこと。そこで利用したいのは、「30のうち1」という考え方。
「300万円のうち10万円」と「30のうち1」の比率は同じ。それを「30日のうち1日」に置き換え、「1カ月のうち1日だけ」と表現する。10万円という金額は大きく感じても、これなら少なく感じるはずだというわけです。(160ページより)
【割引率】伝えるポイントは「幅」と「順序」
ディスカウントストアのチラシに載せる商品の割安感を訴えるためには、次のどちらが適切でしょうか?
A なんと全品大幅値下げ! 平均40%OFF
B なんと全品大幅値下げ! 30~50%OFF
数字を使って伝える際には、幅を持たせておくと納得感が生まれるので、この場合はBが「伝わる数字の見せ方」ということになるそうです。ただし、まだできることがあるとか。
店舗が強くアピールしたい割引率の数字は、30ではなく50のはず。だからこそ「30~50%OFF」と30を先に持ってくるのではなく、「50~30%OFF」と50を先にする。もっとも伝えたい数字やもっとも重要な数字は、文頭に持ってくるべきだという考え方です。(164ページより)
個人的には数字が極端に苦手なので、「数字を使えば」というタイトルを見た時点で「わかるかな?」と少しばかりの不安は感じました。しかしこのように、ひとつひとつの説明は簡潔でわかりやすいもの。ちょっとしたアイデアを得たいときには、力になってくれそうです。
(印南敦史)
- 数字を使えば9割伝わる!
- 深沢 真太郎|秀和システム