岩田日銀副総裁:潜在成長率の強化ないとインフレ下の低成長に
5月27日(ブルームバーグ):日本銀行の岩田規久男副総裁は26日午後、都内で講演し仮に潜在成長力の強化が進まなければ、物価安定目標の達成は「インフレ下の低成長」をもたらす可能性があると述べた。
岩田副総裁は、量的・質的金融緩和によって需給ギャップが解消される過程で、設備投資や技術革新を進める結果、「潜在成長率もある程度高まる」としながらも、「それ以上に潜在成長率を高めるのは、金融政策ではなく、規制改革などの政策手段を持っている政府の役割だ」と語った。
安倍晋三首相は来月、成長戦略第2弾を発表する。岩田副総裁の発言は、国内産業の競争力を高めるための施策を求める市場の圧力に呼応した格好だ。金融市場は、法人税の引き下げや労働市場の改革、環太平洋連携協定(TPP)の進展など成長戦略の帰すうに注目している。
RBS証券の西岡純子チーフエコノミストは「政府が日本の潜在力の引き上げに取り組むよう日銀は発言を強めている。岩田副総裁が言っていることは要するに、日銀は結果を出してきている、今度は政府がデフレ脱却へのコミットメントを成長戦略の中で見せる番だということだ」と述べた。
岩田副総裁は「仮に、成長戦略に基づく政府の施策や民間の取り組みが停滞し、潜在成長力の強化が進まなければ、物価安定目標の達成は、『マイルドなインフレ下における低実質成長』をもたらす可能性がある」と指摘。「日銀としては、日本経済の潜在成長力の強化に向けて、政府による成長戦略がさらに推進されていくことを強く期待している」と述べた。
注目は法人税減税とGPIF改革野村証券の木下智夫チーフエコノミストはリポートで「金融市場では、法人税減税と年金積立金運用管理運用独立行政法人(GPIF)改革に対する関心が高い」と指摘。法人税減税について「仮に、30%未満の具体的な税率とスケジュールが方針として実際に示されれば、市場の期待を上回る内容であると評価されよう」としている。
黒田東彦総裁は21日、会見で「物価が2%達成されれば後はどうでもいいということではもちろんない」と指摘。「生産・所得・支出の好循環の下で日本経済がバランスよく成長し、雇用・賃金などの増加を伴いながら物価が2%程度の上昇に達する、あるいはそれを安定的に持続することが一番望ましい」と語った。
日銀は21日の金融政策決定会合で、全員一致で現状維持を決定した。ブルームバーグ・ニュースが同会合前にエコノミスト32人を対象に行った調査では、追加緩和予想時期については、7月との見方が12人(38%)と最多だったが、前回(43%)からは低下した。一方で、年内に追加緩和があるとの予想は24人(75%)と依然大勢を占めた。
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更新日時: 2014/05/27 00:01 JST