日本と中国がにらみあう東シナ海で、またもや危険極まりない事態が起きた。

 双方の防空識別圏が重なりあう公海上空で、中国軍の戦闘機が海上自衛隊と航空自衛隊の警戒監視用の航空機に異常接近。空自機には、並走するように約30メートルにまで近づいた。

 お互いのパイロットの顔が見える距離だという。路上での幅寄せではあるまいし、あまりに向こうみずな行為と言わざるを得ない。

 日本政府が抗議したのは当然だが、今後に備え、両国は政治と現場のそれぞれのレベルで、衝突防止に向けた措置を急いでとらねばならない。

 東シナ海では、中国とロシアが合同で軍事演習を行っていた。中国国防省は、自衛隊機が「演習を偵察・妨害し、危険な行為を行った」という。一方、小野寺防衛相は「通常の警戒監視任務の一環。(中国機は)常軌を逸した近接行動だ」と批判している。

 思い起こされるのは、01年の南シナ海の公海上空で起きた中国軍戦闘機と米軍偵察機との接触だ。中国機は墜落、米軍機は海南島に緊急着陸して大きな外交問題になった。

 高速で飛ぶ航空機は、わずかな接触がすぐさま大事故につながる。慎重な対応が必要だ。

 東シナ海では昨年1月、中国の軍艦が海上自衛隊の護衛艦に、射撃用の火器管制レーダーを照射する事態が起きた。砲弾などを発射する直前に、目標の位置や速度をつかむために使われるレーダーだ。

 中国側の一連の行為は、政治的意図を持った挑発なのか、それとも現場の火遊びなのか。中国共産党の軍である人民解放軍と党中央との関係、あるいは軍の内部統制の実態は不透明だ。外部からは極めて分かりにくく、問題を複雑にしている。

 日中の防衛当局間では、偶発的衝突を防ぐための「海上連絡メカニズム」の協議が進んでいたが、尖閣諸島をめぐる対立で中断している。

 相手が何をするのかわからないという疑心暗鬼は安全保障環境を悪化させる。相互不信を解消するためにも、衝突回避システムの運用を急ぐべきだ。

 そして何より、海や空で緊張が高まっている時だからこそ、政治が重要になる。

 この春以降、日中友好議員連盟の訪中など、双方の往来が少しずつ活発になってきた。こうした動きを大きな流れに育てていくために、安倍首相も習近平(シーチンピン)国家主席も、関係改善の一歩を踏み出すべき時だ。