(2014年5月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
彼が人からどう思われているかはともかく、インドの総選挙でナレンドラ・モディ氏が勝利を収めたことは世界的な出来事だ。モディ氏が米国との関係を大事にするのか、それとも世界の多極化に向けて歩みを進めるのかは、まだ誰にも分からない。
同氏は26日に首相就任の宣誓式を行うが、折しもロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「アジアへのピボット(旋回)」に乗り出しており、ロシアが中国に天然ガスを30年間供給する契約を先日交わしている。
一方、米国のバラク・オバマ大統領の「ピボット」は、ますます中身がなくなってきているように見受けられる。もしオバマ大統領が地政学上の主導権を取り戻すつもりであるのなら、このインドの新しい実力者を味方に引き入れなければならない。一部で言われているように、インドは21世紀の勢力図に大きな影響を及ぼす「グローバルなスイングステート*1」だ。オバマ氏は何としてもインドを米国側に引き寄せなければならない。
モディ新首相が米国に対して抱く恨み
とはいえ、現時点では少し無理なのではないかとも思われる。モディ氏は、グジャラート州で2002年に起きた虐殺に関する同氏の役割を理由に2005年に米国からビザ(査証)の発給を拒否され、最近になってその措置がようやく解かれたことに腹を立てており、けんか腰になっているのだ。
モディ氏は同じ時期に日本を5回、中国を3回それぞれ訪問しているが、米国とは対照的に、常に丁重な歓迎を受けてきた。
インドの州の首相が中国を訪れる際には、政治局員1人と面会するのが普通だ。ところが、モディ氏は前回の訪中で4人の政治局員に会っている。また地方の指導者としては珍しく、北京の人民大会堂にも迎え入れられている。習近平国家主席は明らかに、モディ氏の弱みに突けこんでいた。オバマ氏は、モディ氏の入国を拒んだ。少なくともモディ氏はそう認識している。
おまけに、立腹していることを隠していない。モディ氏のアドバイザーたちは、同氏の最初の外遊先は日本と中国になりそうだと話している。大型プロジェクトの実行と製造業の雇用の創出――どちらもインド人民党(BJP)の選挙綱領の中核的な項目だ――を行う力があるとして同氏が高く評価している2国である。
その後、7月にはBRICS首脳会合に出席するためにブラジルを訪れ、習氏やプーチン氏と記念写真に収まる機会を得る。モディ氏が米国の土を(査証を手にして)踏むのは、ニューヨークで国連総会が開かれる9月に入ってからとなるだろう。
「モディ氏には、ワシントンに出向いて米国大統領との昼食会の開催を懇願する必要などない」。次期国家安全保障顧問の最終候補者の1人、カンワル・シバル氏はそう書いている。
*1=スイングステートとは本来、米国大統領選挙において、勝利を収める政党が選挙のたびに変わる州のこと