hirax.net::inside out::2014年05月26日

2014-05-26[n年前へ]

赤い血が流れているはずの血管が青く見える理由  share on Tumblr 

 「青筋を立てる」という言葉で表されるように、皮膚上から見た血管は青色に見えます。赤い血が流れているはずの血管が青く見える理由を説明するために、以前書いたモンテカルロ光計算コードで、赤色光と青色光の軌跡例を計算してみました。下の図は、上から皮膚に差し込む光があると、青色光は皮膚内で(短波長の光は散乱しやすいので)すぐに散乱して・方向を変えまくり皮膚外部へ出て行ってしまうけれど、赤色光は皮膚内奥部まで侵入してから、皮膚の内部を長くさまよってから(ようやく)皮膚外へ出ていくという計算結果を表しています。

 こんな風に、青色光は皮膚内部にはほとんど侵入しないので、皮膚奥にある太い血管部分までは、実はほとんど到達しません。だから、血管がある(下部に)部分からも、血管がない部分からも、同じくらいの強さの(青色の)光が返ってきます。

 しかし、波長が長い赤色光は皮膚奥部まで侵入します。すると、皮膚下部に血管がある部分では、血管にまで到達し(血液が赤色をしているといっても、完全に透過するわけではないので)血管中で赤色光は減衰してしまいます。…そこで、皮膚下部に血管がある箇所では、青色光は他の部分と同じだけれど・赤色光は他の部分よりも暗い(少ない)というわけで、皮膚の上から見た血管部分は青色がかって見えるわけです。

 皮膚の上から見た血管の色を決めているのは、実は血液の色ではなくて、その上にある皮膚の光散乱の波長依存の具合なのです。

赤い血が流れているはずの血管が青く見える理由