国会の東京電力福島原子力発電所の事故調査委員会(黒川清委員長)は28日の第8回会合で、武黒一郎・東電フェローと広瀬研吉・元経済産業省原子力安全・保安院長を招いた。事故後、首相官邸に詰めていた武黒氏は福島第1原発1号機の原子炉冷却のための海水注入について、菅直人首相(当時)の了解を優先して一時中止を求めた経緯を明らかにし、「混乱を招いて申し訳なく思っている」と謝罪した。
武黒氏は昨年3月12日夕、第1原発の現場から「既に海水を注入している」と聞いた。首相への最終的な説明が終わっていないのを理由に「いったん中止し、首相の了解を得た後にすぐ再開するよう提案した」という。廃炉を避けるため海水注入をためらったのではないかとの見方には「あり得ない」と否定した。
一方、広瀬氏は2008年に原子力安全委員会が防災区域の拡大を検討していた際、「寝た子を起こすようなことをするな」と凍結を求めたとされる。保安院は検討の凍結を求める文書も出したが、同氏は決裁の有無や部下からの説明について聞かれると「記憶にない」と繰り返した。
黒川委員長は会合後の記者会見で「当事者能力のない事業者と無責任な規制側双方の結果として、原子力安全の備えが不十分なまま大きな悲劇が生まれた」と述べた。
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