(英エコノミスト誌 2014年5月24日号)
ウラジーミル・プーチン氏は東方に舵を切っている。米国は憂慮すべきなのか?
5月20日、上海で開かれた中ロの合意文書署名式典に出席したロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席〔AFPBB News〕
5月21日、ハラハラするような深夜の瀬戸際外交の末に、中国とロシアは推定4000億ドルの価値がある大規模なガス契約を結んだ。
この合意によって、ロシアの政府系企業ガスプロムは2018年から2048年にかけて、中国国営企業の中国石油天然気集団(CNPC)に毎年最大380億立方メートルの天然ガスを供給することになる。
地域安全保障サミットや上海沖での共同軍事演習も行われたロシアのウラジーミル・プーチン大統領の2日間の中国訪問は、このガス契約をもって締めくくられた。
プーチン氏は今回の契約を、ロシアのガス産業史上で最大規模と呼んだ。だが、この契約はロシアのガス産業を下支えする地政学にとっても意義があった。
大規模ガス契約の意義
10年に及ぶ交渉を経て、今、合意に至ったのは決して偶然ではない。この契約は、ロシアの欧州向けガス輸出への依存度を引き下げる一助となるだろう。また、プーチン氏がウクライナを巡る欧米の制裁効果を緩和しようとしたら、同氏に味方がいることを示す証しでもある。
ロシアと中国はともに、地域の大国であることを誇示したがっている。両国とも対米関係が次第にぎくしゃくしており、米国が自国を阻止していると非難している。ちょうど40年余り前、リチャード・ニクソンとヘンリー・キッシンジャーは中国を説得し、ソ連に背を向けて米国と手を組ませた。今日のロシアと中国の協調は、両国が新たに反米同盟の契りを交わしたことを意味するのか?
それこそが間違いなく、プーチン氏が与えたいと思っている印象だ。訪中に先駆け、プーチン氏は中国メディアに対して、中国は「ロシアにとって頼りになる友人だ」と捲くし立て、両国の協力関係は「何世紀にもわたる歴史上、最高水準に達している」と述べた。中国側では、習近平氏が2013年に国家主席に就任した際、最初の訪問先にロシアを選んだ。
商業的な結び付きも強まっている。中国はロシアにとって単一国としては最大の貿易相手で、2013年の2国間貿易は900億ドルに上った。ガス契約の締結前から、両国は2020年までに貿易額を倍増させたいと考えていた。