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 人形浄瑠璃文楽の太夫で人間国宝の竹本住大夫(すみたゆう)さん(89)が26日、東京・国立劇場5月公演の千秋楽で、68年の舞台人生に幕を下ろした。大阪、東京での2カ月にわたる引退公演を終えた住大夫さんは満員の観客に向かい、「文楽を末永くごひいき、ご鞭撻(べんたつ)、どうぞよろしくお願いします」とあいさつした。

 住大夫さんは「恋女房染分(そめわけ)手綱」の「沓掛村の段」に出演。約45分間、旧主の幼子を立派に育てようと苦心する母と息子の心情を力強く語ると、客席から大きな拍手が沸き起こった。

 直後のセレモニーでは、「また次の公演に出るような気がしています」と語った。舞台に並んだ人形遣いで人間国宝の吉田簑助さん(80)と固く手を握り、「ここで別れるのはさびしい。体に気いつけて」と声をつまらせた。

 住大夫さんは大阪市生まれ。46年に豊竹古住太夫の名で初舞台。85年に七世として住大夫を襲名した。一昨年夏に脳梗塞(こうそく)で倒れ、懸命のリハビリで一度は復帰。しかし、後遺症から思うように語ることができないと、今年2月に引退を表明していた。(増田愛子)