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■「“解釈変更”で派遣…ドイツの苦悩」 2014/05/23 放送

 特集は、集団的自衛権の憲法解釈変更について。

 この集団的自衛権行使の是非が問われた戦争があります。

 2001年アメリカ同時多発テロを受けて始まったアフガニスタンでの戦争です。

 戦地に派遣し、50人を超える犠牲者を出したのはドイツです。

 この例から考えてみたいと思います。




 今週から始まった、自民党と公明党の与党協議。

 <自民党 高村正彦副総裁・20日> 
 「いわゆる、グレーゾーンから議論を始めよう」
 「従前の憲法解釈で、できるものから始めよう」

 集団的自衛権をめぐり、結論を急ぎたい自民と時間をかけたい公明の思惑は、すれ違ったままだ。

 <安倍晋三首相・15日>
 「国民の命と暮らしを守るための法整備が、これまでの憲法解釈のままで十分にできるのか、さらなる検討が必要です」

 

 憲法解釈の変更により、集団的自衛権の行使を限定的に容認できないか、検討を進めるとした安倍総理。

 総理の私的諮問機関、安保法制懇のメンバーは、会見をどうみたのか。

 <安保法制懇 坂元一哉阪大教授>
 「全体として、日本の安全のために必要なことをやるのだと強い意志が感じられた」
 「我々の考えるところの、あるべき憲法解釈というものを提案したが、明確に採用するしないをはっきり言ったのでよかった」


 実はこの「憲法解釈」を変更し、外国に軍隊を派遣した国がある。

 ドイツだ。

 

 9・11のテロの報復として、アメリカが攻撃したアフガニスタンに、ドイツはイギリスやフランスなどとともに、軍隊を派遣した。

 だが、その道は決して平たんではなかった。

 ドイツは、2002年からアフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)に参加。

 のべ12万人以上の兵士を派遣してきた。

 

 派遣の目的は“治安維持”だったが、現実には、旧支配勢力・
タリバンとの攻防が続き、兵士たちは激しい戦闘や自爆テロにさらされることになった。

 命を落としたドイツ軍兵士は、これまでに55人にのぼる。

 マルティン・イェーガーさんは、アフガニスタンに派遣されていた2003年、運転していた軍のバスがタリバンの自爆テロに遭った。

 <元ドイツ軍兵士 マルティン・イェーガーさん>
 「(訳)この手前で、テロリストが自爆したんです。奥がバスの残骸で、100メートル以上、飛ばされました」

 

 140キロのTNT火薬を積んだタクシーが目の前で自爆。

 バスは吹き飛び、ドイツ兵30人が死傷した。

 一瞬で多くの仲間を失った上に、現場で起きた、ある出来事がトラウマになったという。

 <元ドイツ軍兵士 マルティン・イェーガーさん>
 「(訳)私は同僚の足だと思って拾ったんですが、後でテロリストの足だと聞かされました」
 「それを知った時、頭がおかしくなりそうでした」

 帰国後、PTSDと診断され、10年が経った今も症状に悩まされ、定職に就けずにいる。

 イェーガーさんは、アフガンに送られる前、政府から十分な説明がなかったと憤る。

 <元ドイツ軍兵士 マルティン・イェーガーさん>
 「(訳)ISAFが治安維持のために派遣されたなんて、大きな嘘です。アフガンでは戦争が行われていたんです。我々ドイツ兵は、それを口にすることも許されませんでした。“戦争だ”なんて言ってはいけなかった。黙って働けと!」

 あくまで、「治安維持」が目的だとしてきたドイツ政府が、アフガニスタンを“戦争状態”と認めたのは、派兵開始から4年が経った2006年のことだ。


 ドイツは、どのような根拠でアフガンへの派兵を行ったのか…

 <記者リポート>
 「これはドイツ基本法の原本です。1949年に施行されました」

 そもそも、ドイツの基本法では「平和を維持するために、集団安全保障システムに加入することができる」と規定している。

 

 ドイツ政府はこれについて、「NATO域内に限って、軍の活動を認める」との解釈を示していた。

 1989年11月、「ベルリンの壁崩壊」

 しかし東西ドイツが統一され、国際貢献の議論が盛り上がる中、
ドイツの憲法裁判所は「議会の承認があれば、NATO域外への派兵は合憲」との判断を示した。

 つまり「解釈の変更」で域外への派兵ができるとしたのだ。

 <ベルリン自由大学 ペスタロッツア教授>
 「(訳)憲法裁は、本来、基本法の改正を促すべきでした。こういうことは、きっちりと基本法に定めておく必要があります」


 <反戦デモ> 
 「ドイツ軍はアフガンを出ろ!」

 2009年9月、ドイツ国内で、アフガン派兵に対する厭戦論が一気に高まる出来事があった。

 アフガン北部で、ISAFがタリバンに奪われたタンクローリー2台を空爆、約100人が死亡したのだ。

 

 その多くが、ガソリンを分けてもらおうと集まっていた市民だった。

 この攻撃を指揮したのが、ドイツ軍の司令官だった。

 さらに、軍と国防省が当初、その数をあえて少なく発表していたことが発覚し、ドイツ国民の不信感はピークに達した。

 <反戦デモ参加者>
 「(訳)どうやったら戦争が終わるか、アフガニスタン自身に解決方法を探らせるべきだ」

 アフガンからの早期撤退を求める国民は、7割にのぼった。

 しかし、派兵の継続を求めるアメリカとの関係もあって、メルケル政権は、なかなか撤退に踏み切れなかった。

 <元ドイツ軍兵士 マルティン・イェーガーさん>
 「(訳)防衛のための軍から攻撃ができる軍に変えるということは、いつか確実に兵士が死ぬということです」

 アフガンへの派兵で、ドイツの政府や国民には「血が流れる」という覚悟はあったのだろうか。

 元兵士のイェーガーさんは、日本に対し、こう警告する。

 <元ドイツ軍兵士 マルティン・イェーガーさん>
 「(訳)日本にも起こりうることです、想像してみてください。日の丸に包まれた多くの棺を国民は目の当たりにするんです」




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