異常接近「日本の演習妨害が原因」と中国5月25日 16時19分
東シナ海で24日、飛行中の自衛隊機に中国の戦闘機が一時異常に接近したことについて、中国国防省は「自衛隊機が中国の防空識別圏に進入し、ロシアとの合同軍事演習を妨害したためだ」と主張し、みずからの行動を正当化しました。
東シナ海の日中中間線付近で24日、監視飛行をしていた自衛隊機2機に中国の戦闘機が相次いで近づき、一時30メートルから50メートルまで接近したことから、日本政府は「危険な行為だ」として中国政府に抗議しました。
これについて、中国国防省は25日午後ホームページ上に声明を出し、「自衛隊機2機が中国の防空識別圏に進入し、ロシアとの合同軍事演習に対して偵察と妨害を行った。このため中国軍機が緊急発進し、必要な識別と防備の措置をとった」と主張し、みずからの行動を正当化しました。
そのうえで、「演習空域に勝手に進入した日本側の危険な行動は国際法と国際的な規範に違反しており、誤った判断や空中での不測の事態を容易に招くものだ」と日本側を逆に非難しました。
さらに声明は「中国とロシアの海軍の合法的な権利を尊重し、一切の偵察と妨害をやめるよう要求する。さもなければ、これによって引き起こされるすべての結果は日本が負うことになる」と警告し、日本側に抗議の申し入れを行ったとしています。
中国は今月20日から26日まで、ロシアとの合同軍事演習を長江河口の東側の東シナ海で実施していて、両軍から16隻の艦艇や航空機が参加し、実弾射撃訓練などを行っています。
中国機へのスクランブル過去最多
中国機に対して自衛隊が行ったスクランブル=緊急発進の回数は昨年度、過去最多の415回を記録し、日本周辺での中国機の活動が活発化しています。
防衛省は、平成13年度から緊急発進の回数を国ごとに公表しています。
中国機への緊急発進は平成21年度までは、一部をのぞいて40数回までの範囲で推移してきました。
しかし沖縄県の尖閣諸島沖で漁船の衝突事件が起きた平成22年度以降は毎年、増加していて、22年度は95回、23年度は156回、24年度は306回でした。
そして昨年度は過去最多の415回を記録し、日本周辺での中国機の活動は、年々活発化しています。
防衛省の関係者によりますと、緊急発進を行う航空自衛隊の戦闘機が通常、他国の航空機に対して100メートル以内に近づくことはないとしています。
空の衝突回避が課題
現場で不測の事態を回避するための取り決めは、海上自衛隊と中国海軍など太平洋地域の各国海軍の間では結ばれていますが、航空自衛隊と中国空軍の間にはなく、今回のような異常な接近をどのように防ぐかが課題となっています。
現場で不測の事態を回避する取り組みについては先月、海上自衛隊と、中国海軍など太平洋地域の各国海軍が、相手の艦艇への射撃管制レーダーの照射を避けることや、安全な間隔やスピードを保つなどとした行動基準を定め合意しました。
しかし航空自衛隊と中国空軍の間にはこのような取り決めは結ばれていません。
海だけでなく空も含めた現場で、不測の事態を防ぐための取り決めは、日本とロシアの2国間では、すでに結ばれていて、1993年の「海上事故防止協定」の中で、攻撃につながるような行動を禁止することや、現場の部隊どうしが無線で交信できるよう共通のチャンネルを設定しています。
日本と中国の間でも、同様の協定を結ぼうと、6年前の2008年から協議を進めてきましたが、おととしの日本政府による尖閣諸島の国有化以降、協議は進まず、今回のような異常な接近をどのように防ぐかが課題となっています。
専門家「衝突回避の仕組みが必要」
今回の中国機の行動について元自衛艦隊司令官の香田洋二さんは「国籍の分からない航空機について戦闘機を発進させ、確認すること自体は、日本も含めて行っていることで国際的に珍しいことではない」としたうえで、「30メートルから50メートルという距離は常識的にみて近すぎ、危険だと言える」としています。
また、香田さんは去年1月、中国海軍の艦艇が自衛隊の護衛艦に射撃管制レーダーを照射したケースに触れ、「中国軍は、あの時、国際的にも非難されたが、その後も国際基準で危険とされている行為を行ってはならないということが部隊に徹底されていない節がみられる」と指摘しました。
そのうえで「意図しないところで自衛隊と中国軍の間で無用の緊張が起こることは避けるべきだが、現在、日中間には冷戦期にアメリカとソビエトが、93年に日本とロシアが結んだ事故防止協定のようなメカニズムがない。政治的な問題とは切り離してこうしたメカニズムを速やかに作り上げることが重要だ」と不測の事態を回避する仕組みづくりの必要性を指摘しました。
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