自民党の言い分はこうです。
「この世の中は最近、親殺しや子殺しなど、変な事件が多すぎる。これは社会の絆が崩れている証拠だ。それはなぜかと言うと、日本国憲法が個人主義だったから。よって、一番大きな社会である国家と、一番小さな社会である家庭を尊重するよう、国民を教育し直さなければならない」
確かに、私も日本や家族を愛しているし、愛すべきだとは思います。しかし、それらを愛するかどうかはあくまで個人の道徳的な問題であり、国が憲法でそれを強制することは、憲法の定める思想・良心の自由に反します。
「家族仲良し法」ができて
仲の悪い夫婦が罰せられる
――たとえば、「家族を尊重する」という義務にはどんなリスクがあるのですか。
たとえば結婚です。結婚は、人生で一番大事な契約の1つでありながら、男女が頭に血が上り、勢いでしてしまうケースが多い。だから、結婚後に全体の2~3割の夫婦が離婚を選ぶ。これはいいも悪いもなく、人間としての自然現象です。だからこそ、民法には結婚と離婚に関する規定が対等に書かれています。
ところが、最高法規の憲法で「家族は仲良くしなさい」と書かれたら、それを具体化する法律の1つとして、「家族仲良し法」などがつくられ、国民が離婚をしたくてもできない状況になる可能性がある。ヘタな話、離婚寸前の夫婦には、お互いを憎しみ合い、相手を殺したいと思っている人もいるでしょう。
しかし子どもが、ケンカの絶えない両親を見て、「パパとママの仲が悪いのはイヤだ! そうだ、家族仲良し法というのがあるぞ」と考え、お巡りさんに助けを求めにいったらどうなりますか。その夫婦は、法律違反で罰せられてしまう。冗談みたいな話ですが、そういうことが現実に起こり得るのです。
この例を見ても、自民党の改正案は「法は道徳に踏み込まず」という世界の常識を逸脱している。自民党で憲法論議をしている人たちは、教養がないのではないかと疑ってしまいますね。彼らに追随する一部の御用学者もいけません。