また、彼らの先祖は代々由緒正しいエスタブリッシュメントの家柄で、権力側の立場にあった。ところが、第二次世界大戦に日本が負けて、権力を削がれてしまった。そのため、占領軍に対する屈辱の気持ちもあり、「米国に押し付けられた日本国憲法を改正したい」という動機につながっている部分もありそうです。そういう人たちによって、「押し付け憲法論」「明治憲法復古論」などが自民党内で脈々と続いてきた。
――そうした人々が、足もとの憲法改正論にも影響を与えているのですか。
過去3年間、野党だった自民党は時間がありました。加えて、野党時代の自民党で生き残っていたのは、選挙地盤がしっかりしている世襲議員が多かった。そうした事情もあり、自民党内の「明治憲法郷愁派」のような人たちが中心になって、今回のような改憲案が出て来たのではないでしょうか。
自民党はある意味、非常によくできた組織です。あたかも「分担総合病院」のようなもので、党議決定すれば皆逆らわない。政務調査会の中の部会や調査会で議論した結果が党の総務会で通ると、それが党全体の決定とみなされ、党議拘束がかかるからです。そういう流れで、自民党の中の特殊なアナクロニズム的な人たちの決定が、党議決定となって表に出て来てしまったわけです。
それに加えて、安倍晋三首相が政治の第一線に復活した。改憲論者の岸信介元首相の孫ですから、当然「今の日本国憲法は屈辱だ」という考え方が、彼のDNAの中にも流れているのだと思います。だから安倍首相は、歴代内閣と違って「憲法改正は我が内閣の使命だ」と明言しました。
日本国憲法のよいところは堅持し
現状に合わない部分は変えるべき
――憲法改正論議が表に出てきたことは、いいことなのでしょうか。それとも、悪いことなのでしょうか。
私も改憲論者なので、改憲論が表に出てきたことによって、議論の素地ができること自体はいいことだと思います。しかし、自民党案をこのまま認めるわけにはいかない。私は改憲論者と言っても、「護憲的改憲論者」。日本国憲法のよい部分は堅持するべきだし、一方で現状にそぐわなくなった部分は、車をモデルチェンジするように、変えるべきだと思っている。それが私のスタンスです。その立場から言えば、今回の自民党案の多くには相容れないものがあるため、意見を同じくする識者たちと一緒に異を唱えています。