作家、宮沢賢治をイメージし、アルミで帽子とマントをあしらった岩手県花巻市の観光案内板から、マントの部分が取り外された。「子どもがけがをする」という苦情を受けた措置だが、市民から「どうして外したのか」との声も寄せられ、市は対応に苦慮している。
案内板は生家や母校の跡地など、同市出身の賢治ゆかりの地を紹介するもので、市は2013年度から3年かけて、約30カ所に設ける予定だ。これまでに約300万円を投じて、10カ所に設置した。
問題となったのは、案内板の枠に取り付けられたアルミ製の帽子とマント。賢治を象徴するアイテムで、市民からも好評だった。
ところが4月、市民から「子どもがぶつかってけがをする」との苦情が市に寄せられた。案内板からはみ出ているマントの裾部分は地上高が約90センチで、ちょうど子どもの頭の高さに当たるとの指摘だ。市は「事故があってからでは遅い」と判断、職員が全案内板からマント“10着”を撤去し、市の施設に保管した。
この市の対応に、市民からは「どうして外したのか」「撤去は当然」と正反対の声が出ている。
市役所付近の歩道の案内板近くで暮らす男性(73)は「この案内板は小学校の通学路にあり、確かに危ないと思う。だが、帽子とマントは賢治さんの象徴で、なくなってしまうと少し寂しい」と話す。
細川祥・市生涯学習部長は「事故が起きる可能性が少しでもあれば撤去せざるを得ない。設計を変えて再設置したいが、どうしたものか」と頭を抱えている。〔共同〕
宮沢賢治、マント