新卒採用増半数超え 県内主要30社 今春、復興需要で業況回復
県内の主要企業30社のうち、今春の新卒者採用数を昨春より増やした企業は17社と、半数を超えることが福島民報社の調べで分かった。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から3年が過ぎ、復興需要に伴う業況回復を背景に、雇用が拡大基調にあるとみられる。一方で企業からは来春採用に向け、人材確保が難しくなると懸念する声が出ている。
平成25年度より26年度の新卒者採用数を増やした17社のうち、24年度から2年連続で増加したのは14社に上り、雇用の拡大傾向が続いている。
2年連続で採用増のゼビオ(郡山市)は、間近に迫ったサッカー・ワールドカップブラジル大会や2020(平成32)年の東京五輪開催決定などを踏まえ、25年度に13店舗を新規オープンした。26年度も同程度の出店を計画。業務拡大に合わせ、26年度採用は127人と前年度から50人増やした。
福島市のとうほう地域総合研究所は、復興需要による景気の回復傾向やアベノミクスによる景況感の改善に加え、リーマン・ショック後の採用抑制で生じた世代間の人事バランスの不均等を解消するため、積極的に新卒者を採用する企業が多いと分析している。
ヨークベニマル(郡山市)も2年連続の採用増となった。26年度は8店舗増やす計画で、27人増の180人を採用した。常磐興産(いわき市)は19人増の30人、こころネットグループ(福島市)も10人増の17人を採用した。
地銀3行も採用数を増やした。東邦銀行(福島市)は95人で前年度と比べ16人増、福島銀行(福島市)は41人で16人増、大東銀行(郡山市)は56人で12人増だった。
一方、売り手市場の傾向が強まっていることに対し、ある企業の人事担当者は「将来、会社を支える有望な人材の確保が難しくなる」との見方を示す。
30社以外の企業では、フルーツジュース店を全国展開する青木商店(郡山市)が26年度、過去最多の93人(大卒69人、短大卒5人、高卒19人)を採用した。25年度から23人増えた。27年度は100人以上を見込む。
パチンコ店を経営するニラク(郡山市)は65人増の92人(大卒79人、短大卒13人)を確保した。
26年度、いわき市を中心にスーパーを運営するマルト(いわき市)と内視鏡製造の会津オリンパス(会津若松市)は各40人を採用した。
■「非正規」を正社員に 小売り、流通業などで広がり
小売りや流通業などでは新卒者採用の他に、パート社員など非正規社員の中から有望な人材を正社員にする動きが広がっている。
幸楽苑(郡山市)は26年度の新卒者採用が35人で、前年度に比べ77人減らした。人事担当者は「もともと会社の正社員比率が高く、26年度は新卒採用を抑え、パート社員の正社員化を進めた」と答えた。
日銀福島支店は最近の県内雇用情勢について「有効求人倍率は緩やかな上昇を続けており、極めて高い水準で推移している。職種によってばらつきはあるが、全体としては人員不足感の強い状態が続いている」とみている。
■調査方法
県内に本社や主力工場を置く東証一部・二部、ジャスダック上場企業と、福島民報社が過去の採用状況調査の対象企業から業種のバランスなどを考慮して独自に30社を選んだ。平成26年度の採用実績、27年度の採用予定などを聞き取りで調査した。
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