以前書いた「DTM初心者のためのオーディオインターフェイス選び」という記事が多くの人に読まれていますが、それに伴いMIDIキーボードの選び方も教えてほしい、という声を多数いただいています。確かにMIDIキーボードもDTMをする上での必須アイテムであり、製品も数多くのメーカーからさまざまな機種が出ていて、価格も数千円のものから10万円超のものまでいろいろ。何をどう選べばいいか難しいところです。
そこで、ここではDTM初心者ユーザー向けに、USB接続のDTM用の比較的安価なMIDIキーボードにターゲットを絞った上で、そもそもMIDIキーボードとは何なのか、各機種によって何が違い、どのように選べばいいかを紹介するとともに、お勧め機種を8つほどピックアップしてみたので、じっくり見ていくことにしましょう。
いろいろあるMIDIキーボードの選び方を考えてみよう
■MIDIキーボードって何?
「私は鍵盤の演奏は下手だからMIDIキーボードっていらないよね?」と思う方も少なくないとは思いますが、たとえ鍵盤が弾けなくてもDTMをする上でMIDIキーボードは必須のアイテムといえます。なぜなら、ソフトシンセの音色を確認するためだけでも非常に役立つし、シンセサイザの音色づくりには必須。また打ち込みをする際にもマウスやPCのキーボードで入力するより絶対的に効率的だからです。そうステップ入力という手法を使うことで、まともに鍵盤が弾けない人でも、便利な入力ツールとして利用できるのです。
さらにソフトシンセなどほとんど使わず、オーディオのレコーディングが中心という人にとっても、最近の多くのUSB接続のMIDIキーボードにはトランスポートボタン(再生や停止、録音、早送りなどのボタン)やフェーダーなどが用意されているため、DAWのリモコンとしても有用だからです。
もともとMIDIキーボードというのはMIDI端子を装備した鍵盤のことで広義にはシンセサイザキーボードや電子ピアノなどを含むものです。そう鍵盤を弾くことで、その演奏情報(ドを弾いた、レを離した、ミを弱く弾いた……といった情報)がMIDI OUTの端子からMIDIのデジタル信号としてリアルタイムに送り出すことができるものを指しています。そしてそのMIDIの信号をPCのDAWが受信すると、リアルタイムにソフトシンセを鳴らしたり、シーケンサに記録してデータを入力していくことができるのです。
そのMIDIキーボード、見た目はいかにも鍵盤楽器ですが、実際には音が出ず、MIDI信号だけが出力されるものも多くあります。そしてDTMにおいては多くの場合、音を出す機能は不要で、MIDI信号だけ出力できればいいのです。そのため、ここでは音源機能のないシンプルなもの選び方を見ていきます。

MIDIキーボードとはいえ、MIDI端子もなくUSBでPCと接続するものが大半となっている
MIDIキーボードとはいえ、MIDI端子もなくUSBでPCと接続するものが大半となっている
もっとも最近はMIDI端子をMIDIケーブルで接続して……という使い方は少なくなっています。というのも、キーボードとPCを接続するのならMIDIケーブルを介すより、USBで接続したほうが遥かに使い勝手がいいからです。そう電源はUSBから供給できるし、PCでMIDIを扱えるようにするためのMIDIインターフェイスは不要だし、そもそもMIDIよりもUSBのほうが遥かに伝送スピードも速いので入力も出力も1本のケーブルで扱えてしまうからなんです。
そのため、MIDI端子自体を装備していないものも多く、その意味ではMIDIキーボードではなくUSBキーボードと呼ぶべきなのでしょうが、USBケーブルの中をMIDI信号が流れるのは事実なので、ここではMIDIキーボード、もしくはUSB-MIDIキーボードと呼ぶことにします。
■MIDIキーボード選び、7つのポイント
さて、そのMIDIキーボード、たくさんのメーカーから数多くの製品が出ていますが、どのように選べばいいのでしょうか?選択のポイントはいろいろありますが、初心者向けの選択ポイントを7つほどピックアップし、簡単に解説してみましょう。
●鍵盤数
製品によって鍵盤の数が異なります。一般的に25鍵、37鍵、49鍵、61鍵、88鍵という5種類があり、キーボード演奏が得意な人であれば、88鍵や61鍵が欲しいところだと思います。一方、得意でない人なら25鍵や49鍵でも事足ります。25鍵とはいえ、オクターブキーというものが用意されており、もっと高い音、もっと低い音を出すことも可能です。もちろん、設置するスペースがあるかというのも大事なところなので、用途に合わせて選んでください。なお、ピッチベンド、モジュレーションホイールが搭載されているかもチェックしておきましょう。

写真のような25鍵の小さいものからピアノ同様88鍵あるものまでいろいろなサイズがある
写真のような25鍵の小さいものからピアノ同様88鍵あるものまでいろいろなサイズがある
●ミニキーかフルキーか
1つの鍵盤の横幅を見たとき、ピアノなどと同じサイズのフル鍵盤サイズ(フルキー)か、もっと小さいミニ鍵盤サイズ(ミニキー)か、というのも重要なポイントです。演奏性重視であればフルキーが必須ですが、シンセサイザの音色づくり用や、ステップ入力用であれば、ミニキーでも使えます。ミニキーならとにかくコンパクトに収まるのもポイントです。
上がフルキー、下がミニキー
●キータッチ
一般にキーボードには軽いタッチのライトウェイト鍵盤、やや重めなセミウェイト鍵盤(セミウェイテッド鍵盤)、ピアノと同等の打感を持つピアノタッチ鍵盤の3種類があります。しかし、MIDIキーボードの場合、多くはライトウェイト鍵盤で、一部にセミウェイト鍵盤があるという感じです。この感触ばかりは実際に触ってみないと分からないところですが、価格的にはセミウェイト鍵盤だと少し高くなります。

軽いタッチのライトウェイト鍵盤とおもり付で重めのセミウェイト鍵盤がある
軽いタッチのライトウェイト鍵盤とおもり付で重めのセミウェイト鍵盤がある
●コントローラ機能
単に鍵盤だけでなくフェーダーやツマミ、トランスポートボタン、パッド……といったコントローラ機能を備えたものもあります。これらは演奏用というよりも、DAWをリモートコントロールするためのもの。シンセサイザのパラメータ調整に使ったり、ミックスダウン時に利用するなど、DAWの操作性が飛躍的に向上します。とくにミックスに利用するのならフェーダーがいくつあるかのチェックも大切です。もっとも、専用のコントロールサーフェイスを買う予定があるのなら不要ですから、その点も見極めておきましょう。

鍵盤だけでなくフェーダーやツマミなどのコントローラ機能を装備したものもある
鍵盤だけでなくフェーダーやツマミなどのコントローラ機能を装備したものもある
●iOSでの使用の可否
最近のMIDIキーボードはiPhoneやiPadと接続できるものも多くなっています。ただし、直接iPhoneやiPadと接続するためのケーブルが付属しているものと、間にUSB-LightningカメラアダプタやCamera Connection Kit(CCK)を必要とするものもあるので、これらと接続できるかどうかもチェックしておくといいですね。

iPadやiPhoneと直接接続可能なのかどうかもチェックポイント
iPadやiPhoneと直接接続可能なのかどうかもチェックポイント
●MIDI端子の装備
外部のMIDI機器とのやりとりをするためのMIDI端子がついているかどうか、つまりこれをMIDIインターフェイスにできるかどうかも一つのポイントです。オーディオインターフェイスにMIDI端子を装備している場合はとくになくてもいいと思いますが、外部MIDI機器とのやりとりを考えているのであれば、搭載しているものを選ぶといいでしょう。

MIDI端子を装備していればMIDIインターフェイスとしても利用できる
MIDI端子を装備していればMIDIインターフェイスとしても利用できる
●付属ソフト
製品によってはDAWが付属していたり、ソフトシンセをバンドルしているもの、またiPhoneやiPadのアプリが用意されているものなどもあります。これらがあれば、即、演奏を楽しむことが可能になるので、どんなアプリが搭載されているのか確認しておくといいでしょう。
バンドルされているソフトシンセがあるか、どんなものなのかも大きなポイント■初心者用おすすめ8機種
以上、7つのポイントでMIDIキーボードの選び方を見てきましたが、いかがだったでしょうか?人によってニーズは違うと思うので、こうしたポイントを頭に入れた上で、自分にマッチしたMIDIキーボードを選びましょう。
ここでは現在発売されている主なキーボードのうち、初心者用としておすすめの8機種をピックアップしてみました。価格の安い順に並べてみたので、気に入る製品を探してみてください。
とにかく軽くて小さく、安価なMIDIキーボード。白と黒の2モデルがあるほか、コンローラ専用のnanoKONROL2、パッド専用のnanoPAD2という姉妹品もあり、3つ同時に接続することもできます。専用エディター・ソフトでキーアサインの変更も可能。
【メーカーサイト】
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ nanoKEY2
◎サウンドハウス ⇒ nanoKEY2
◎イケベ楽器店 ⇒ nanoKEY2
【Line6 : MobileKeys 25】
セミウェイトではないものの、ちょっと重めなキータッチで、25鍵モデルと49鍵モデルがあります。iOS接続専用の端子があり30PINのケーブルが付属しているほか、WindowsやMacと接続するためのUSB端子も装備。ホイールも重めなのが特徴です。
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【メーカーサイト】
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ MobileKeys 25
◎サウンドハウス ⇒ MobileKeys 25
◎イケベ楽器店 ⇒ MobileKeys 25
【Novation : LaunchKey Mini】
ミニ鍵盤の上に並ぶ16個のパッドはNovation Launchpad譲りの3色に光るもの。ベロシティ対応でドラム入力やループ再生などに使用できます。8つツマミ、7つのファンクションボタン、2つのパフォーマンスボタンを装備しつつ、コンパクトなサイズです。
【メーカーサイト】
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ LaunchKey Mini
◎サウンドハウス ⇒ LaunchKey Mini
◎イケベ楽器店 ⇒ LaunchKey Mini
【Arturia : MINILAB】
25鍵のミニキーボードに16個のツマミ、8つのパッド、さらに4つのボタンを装備した機材ですが、最大の特徴は往年のアナログシンセを再現したArturiaのソフトシンセの集大成、AnalogLabがバンドルしていること。ソフトシンセ価格としてみても安いです。
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【メーカーサイト】
https://www.hookup.co.jp/products/arturia/minilab/index.html
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ MINILAB
◎サウンドハウス ⇒ MINILAB
◎イケベ楽器店 ⇒ MINILAB
【IK Multimedia : iRig KEYS】
Lightningケーブル、30pinケーブル、そしてUSBケーブルの3本が付属しているので、あらゆる機材と即接続して使えるのが最大の特徴です。ミニ鍵盤ではあるけれど、かなりしっかりした作り。SampleTank 2Lがバンドルされているのも大きな特徴です。
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【メーカーサイト】
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◎Amazon ⇒ iRig KEYS
◎サウンドハウス ⇒ iRig KEYS
◎イケベ楽器店 ⇒
iRig KEYS
[25鍵] [フル] [ライト] [iOS-要CCK]
フル鍵盤ではあるけれど、とにかく薄くてシンプルなのが特徴のキーボード。打鍵の深さはないのですが、しっかりベロシティーも検知されます。ユニークなのはサスティンペダルならぬサスティンボタンがあること。打ち込み用途では便利に使えます。
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【メーカーサイト】
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ Xkey
◎サウンドハウス ⇒ Xkey
◎イケベ楽器店 ⇒ Xkey
【KORG : taktile-49】
キーボーディストも満足のいく弾き心地のセミウェイト鍵盤が採用されており、フェーダーやパッド、Kaossilator風なXYパッドまでフル装備。M1LEやEZ Drummer Liteなど計8つものPC用ソフトシンセが同梱されているのも大きな魅力。25鍵モデルもある。
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【メーカーサイト】
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ taktile-49
◎サウンドハウス ⇒ taktile-49
◎イケベ楽器店 ⇒ taktile-49
【Roland : A-800PRO】
61鍵を装備したMIDIキーボード。フェーダーやパッド、ツマミなどを多く備えコントローラとしても充実しています。USB接続するだけで使えるモードのほかに、ドライバを要するアドバンスドモードで接続すると、よりレイテンシーを小さくすることも可能です。
【メーカーサイト】
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ A-800PRO
◎サウンドハウス ⇒ A-800PRO
◎イケベ楽器店 ⇒ A-800PRO
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