籾井会長の記者会見を開放すべき
さて、NHKが昨年7月に実施した世論調査では、8割近くの視聴者がNHKの放送全般について「公平・公正」と回答している。そんな中、籾井会長は今年1月の就任会見で、「もっと信頼を高めるNHKにしたい」と熱弁を振い、「組織のボルトとナットを締め直す」と宣言した。しかし、具体的に何をどう変えたいのかは、まだ見えていない。
籾井会長の実像についても分かっていない部分がある。「放送法を守る」と、中立の立場を強調しながら、一方で「政府が右と言っているのに、われわれが左と言う訳にはいかない」などと政権寄りとしか思えない発言もしている。
三井物産で副社長まで務めた辣腕ビジネスマンという触れ込みだったが、一方で日本ユニシスの社長に転じたあとは5期連続で売り上げ減を記録した過去がある。ビジネスマンとして有能かどうかも定かではない。
そんな籾井会長の実像に定例会見で触れられる記者は、放送記者クラブに加盟する新聞・通信社の人間に限定されている。籾井会長の真意を広め、実像を浮き彫りにするため、いっそ定例会見を週刊誌やワイドショー、ネット系メディア、フリーの記者らにも広く開放したらどうだろう。
NHKは、週刊新潮が4月24日号で「NHK『籾井会長』の危ない『まだらボケ』」と題する記事を掲載したところ、たちまち抗議したが、会見から締め出しておいて、独自取材に文句を付けるのは一方的だ。
独立行政法人の理研は、STAP細胞に関する論文不正問題の会見を、記者クラブに加盟していない記者にも開放した。理研に所属する小保方晴子氏も同じ。受信料で成り立つ特殊法人のNHKも見習うべきではないか。籾井会長の言動に抗議する受信料不払い運動まで起きているのだから。
民放トップの定例会見も記者クラブに所属する記者しか出席できないが、私企業に過ぎない民放と特殊法人のNHKは組織の性質がまるで違う。NHKのオーナーは視聴者なのだから、情報はより広く公開されるべきだ。
記者クラブ側の事情で会見の開放が難しいのなら、クラブ非加盟の人間を対象とした会見を別に開けば良いだけの話だ。理研の会見では新聞記者より専門的な質問をしたサイエンス・ライターがいたし、一方で理研の笹井芳樹氏に対して、小保方氏との私的関係について尋ねたのも新聞記者ではなかったと聞く。NHKも理研に倣えば、情報公開度が上がることは間違いない。
「みなさまのNHK」という基本理念にも近づくはずだ。なにしろ、籾井会長の名前は連日のように活字になり、語られ、見方によっては、有働由美子氏や大越健介氏らキャスターの存在感を凌駕して、今やNHK随一のスターなのだから。
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