一体、これらの事柄のどこが珍しく、マイルドヤンキーの特徴なのか? どの時代であろうが、「仲間」「家族」という言葉が嫌いな若者を探すほうが難しいはずだ。「絆」も3.11後に広まった現代人のキーワードの一つであり、この言葉を好む人が多いのは若者に限った話ではない。
地元から出たがらないのは、都心と郊外、あるいは地方との画一化や均質化が進み、わざわざ遠出しなくても済むようになったからに過ぎないのではないか。80年代までは、都会でしか買えない物品が数多くあったが、今はネットで何でも簡単に手に入る。
どこの店舗でも同じ商品を提供するコンビニが郊外や地方にもある。外食チェーンやレンタルビデオ店チェーンも広く隅々にまで出店している。「半径5㎞以内から出たくない」というより、「半径5㎞以内から出なくても生活に困らない」のではないか。
「車が好き」というが、郊外や地方では車がないと生活できない。都心部と違い、地下鉄網などが存在しないのだから。車はいわば生活必需品。地方では主婦や高齢者の車所有率も高い。マイルドヤンキーとは無関係だろう。
「特にミニバンが好き」というが、いつの時代でも車には流行があり、それは繰り返されてきた。第一、ミニバンのブームは今に始まった訳ではない。1990年にトヨタのエスティマが発売し、軽自動車でも93年にスズキのワゴンRが売り出したころから続いている。
「ショッピングモールが好き」というが、これも都心部に行かなくたってユニクロやニトリ、イケアなどの商品が簡単に買えるようになったからだろう。
コンビニとショッピングモール、さらにスマホとパソコンがあれば、都会と郊外、地方が、さほど変わらない生活を送れる時代になっただけとも言える。だが、NHKはマイルドヤンキー化という説を流布するだけに終わった。
「EXILEが好き」というが、これも特別な傾向ではないはずだ。都会でもEXILE風の若者が跋扈している。第一、『おはよう日本』はEXILEのCD購買層、ファン層の調査すらしていない。
NHKは無検証どころか、考察すらせず、自分たちの見解も放棄したのだ。これでは、まるで外部情報のコピペだ。
街頭インタビューの手法に疑問
籾井会長は5月15日の定例記者会見でNHKの街頭インタビューの手法に疑問を呈したが、『おはよう日本』のマイルドヤンキー報道の問題点にも近く、これについては外部から登用された籾井会長の意見が正しいのかも知れない。
NHKは4月1日に消費増税率アップのニュース報じた際、街の声を取り上げたのだが、籾井会長は「アンケートでも何でもない。本当の意見であればいいが、ただ感覚的に『消費税が上がって困った』というのが多い」と苦言を呈した。(5月16日付毎日新聞より)
街頭インタビューは、ラジオの時代からある報道の基本の一つだが、声の数が少なかったり、どの場所で、どんな立場の人に取材したのかが明確でないと、お飾りやアリバイづくりに過ぎなくなる。マイルドヤンキー化の場合、話を聞いた若者は30人だけだったが、これはエビデンスと呼べるものではないだろう。
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