「吉田調書」で特報を放った朝日はエゴスクープと決別できるか?

2014年05月23日(金) 牧野 洋
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エンタープライズスクープ無視の悪しき伝統

朝日の紙面からエゴスクープが駆逐され、エンタープライズスクープが中心になる日が訪れるだろうか。経営幹部に改革を断行する覚悟があるかどうかで決まるだろう。

紙面上でエンタープライズスクープを中心にするには、編集局内で経済部や政治部、社会部といった従来型取材部をわきに追いやり、「本来のスクープ」を扱う特別報道部を主流にしなければならない。そうするためには、意識面ではエゴスクープで他紙に抜かれても気にしない「脱横並び」を徹底すると同時に、体制面では「脱記者クラブ」を宣言するほどの改革を進める必要がある。

それにしても朝日の吉田調書報道に対する他紙の対応はあまりに旧態依然としている。一切無視なのである。ニュースの価値判断はメディアによって千差万別だが、吉田調書はベタ記事にもならないほどニュース価値が乏しいと考えているのだろうか。報道倫理が厳しい米国ではまず見られない光景だ。

実際にはニュース価値があるかないかというよりも低次元の話で、格好悪いから「朝日新聞によると~」と書けないというのが理由と考えられる。それが結果的にエゴスクープは必ず追いかけるが、エンタープライズスクープは無視するという悪しき伝統につながっている。これについては別の機会で取り上げたい。

  

著者:牧野 洋
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