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アラブの春から3年 強権支配再来の懸念
5月26日 4時23分

去年、軍による事実上のクーデターが起きたエジプトで、大統領選挙の投票が26日から行われます。安定を求める国民の世論を背景に、シシ前国防相の当選が確実視されていますが、「アラブの春」と呼ばれる民主化運動から3年を経て、再び強権支配に戻るのではないかという懸念も出ています。

エジプトでは、3年前に「アラブの春」と呼ばれる民主化運動で独裁政権が倒れたあと、初めての民主的な選挙で、イスラム組織「ムスリム同胞団」のモルシ氏が大統領に選ばれました。
しかし、経済政策の失敗などで国民の不満が高まったのに乗じて、去年7月、軍が事実上のクーデターに踏み切り、再び政権が崩壊しました。
今回の大統領選挙はクーデター後の暫定政府から正式な政府への移行に向けて行われるもので、軍のトップである国防相としてクーデターを指揮したシシ氏と、左派の政治活動家サバヒ氏が立候補しています。
軍の後ろ盾の下、暫定政府はムスリム同胞団を徹底的に弾圧し、民主化運動の活動家などの抑え込みも図っています。
国民の間では、強い指導者の下での安定や経済の立て直しに期待する声が高まり、事前の世論調査でもシシ氏は国民の圧倒的な支持を得ていて、当選が確実視されています。
しかし、民主化勢力の一部や国際社会からは、独裁政権の崩壊から3年を経て、再び軍の力をよりどころにした強権支配に戻るのではないかという懸念が出ています。投票は日本時間の26日午後3時から始まり、27日まで2日間行われます。

「アラブの春」から3年たって

エジプトでは、3年前の2011年、「アラブの春」と呼ばれる民主化運動で、30年近く続いたムバラク政権が崩壊しました。
次の年、初めて行われた民主的な選挙で大統領に選ばれたのは、独裁政権下で弾圧を受けていたイスラム組織ムスリム同胞団出身のモルシ氏でした。
しかし、経済や治安の回復の遅れに加え、イスラム色の強い政権運営に不満を募らせた国民が、モルシ氏の大統領就任から1年を機に、各地で大規模な反政府デモを実施しました。
デモが拡大するなか、去年7月、軍は国民の意向に沿ったものだとして、事実上のクーデターに踏み切り、モルシ大統領は解任されました。
軍主導の暫定政府は、新しい憲法を制定したうえで、大統領選挙を行う方針を示しましたが、政権を追われたムスリム同胞団のメンバーや支持者らは、モルシ氏の復権を求めて各地で抗議デモを続け、去年8月には治安部隊がデモ隊の強制排除に乗り出して、850人以上が死亡する事態となりました。その後も暫定政府は、ムスリム同胞団を「テロ組織」に指定して非合法化するなど、徹底した弾圧を続け、暫定政府側とムスリム同胞団側の衝突が各地で相次いでいるほか、暫定政府側を標的にしたイスラム過激派によるとみられるテロもたびたび起きるなど混乱が続いています。
こうしたなか、ことし3月、事実上のクーデターを主導した軍のトップ、シシ国防相が大統領選挙の立候補を表明しました。
強い指導者による安定を求める国民の声を背景に、当選が確実視される一方で、軍出身の大統領の誕生によって強権支配が復活し、アラブの春の前の状態に逆戻りするのではないかと懸念や反発の声も上がっています。

当時の若者グループはまとまらず

3年前のいわゆる「アラブの春」のあと、一時はエジプト議会の最大勢力となり、モルシ氏を大統領に擁立したムスリム同胞団は、去年7月の軍による事実上のクーデター以降、暫定政府によって組織が非合法化され、あらゆる活動が禁止されています。
こうした状況のなか、ムスリム同胞団は、今回の大統領選挙に正当性はないとしてボイコットを呼びかけていて、選挙運動の期間中も各地で抗議デモを行いました。
一方、3年前のアラブの春の原動力となった若者グループの中では、モルシ政権を倒したクーデターを支持して、シシ氏を応援するグループと、軍の政治介入に反対し、強権支配の復活を警戒して、対立候補のサバヒ氏を応援したり、選挙のボイコットを呼びかけたりするグループに分かれ、まとまった動きにはなっていません。

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