西井泰之、佐藤秀男
2014年5月26日05時58分
川崎市郊外の住宅地で、60坪(約200平方メートル)ほどの敷地に見知らぬ戸建て住宅が建てられていた。
「土地転がしのように転売されるとは」。この土地を持っていた園部とおるさん(67)は唇をかむ。
2011年5月、川崎市にある特別養護老人ホーム「緑陽苑」にいた母親が亡くなった。この土地には母が住んでいた家があり、生前に「施設に使ってもらおう」と話していた。
遺志を受け継ぎ、特養を運営する社会福祉法人「ひまわりの会」(川崎市)に寄付を申し入れ、12月には理事長も交えて使い道を打ち合わせた。「職員寮やデイサービスなどの拠点として使う」。こう書かれた理事長名の文書も届いた。
■寄付の土地転売
ところが、所有権を移し終え、昨年8月に見に行くと、庭木が伐採され、家もかぎなどが壊されていた。その1カ月後、土地は横浜市の不動産業者に売られ、それから2カ月後には別の業者に転売された。
「決算が良くないので、昨年の年明けから売却で動き始めた。理事長が決めたと聞いた」。ひまわりの会の元職員らは打ち明ける。
「土地の使い方を理事会にはかった形跡はなく、寄付の申込書や領収書などの書類もなかった」。ひまわりの会に監査に入った川崎市の担当者もこう言う。
「公のためにという寄付を理事長が勝手に売っていいのか」。園部さんは善意が踏みにじられた思いだ。
ひまわりの会は「特養を作ってほしい」という住民の運動を機に市が土地を提供するなどしてできた。だが、収支が悪化したため、介護人材の研修などにかかわっていた今の理事長が10年に就任した。それから「ワンマン運営」が続く。
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朝日新聞社会部
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