好きな小説からオリジナルの音楽を作れるプログラム「TransProse」
お気に入りの小説はありますか?
小説を読んでいる時は大抵の場合、音楽をながら聴きしてることが多いです。読み終わって数年経ってもその音楽を聴くと、その物語や主人公に成りきっていた感じを思い出す感覚になることがあります。また読んでいる最中にその物語にピッタリの音楽を流して、より没入できたり。小説と音楽ってかなり相性が合うと思いませんか?
ニューヨークをベースにプログラマーやアーティストとして活動するHannah Davisさんとカナダ国立研究評議会の研究員であるSaif Mohammadさんにより、小説を丸ごと1曲の音楽に変換するプログラム「TransProse」が開発されました。
TransProseでは誰もが知っている「ピーターパン」や「時計仕掛けのオレンジ」、村上春樹の「ノルウェーの森」などを使って、小説の中で描かれている喜びや悲しみ、怒り、不快、心配、驚き、信頼、恐れの8つの異なる感情が、ポジティブとネガティブの2つの状態の使用頻度を解析して音楽に変換されます。
そして上のデータを解析し、テンポや音階、オクターブ、音色を導き出します。次にJavaで音楽をプログラミングするために使われるAPIである「JFugue」を使い、音楽ファイルとして出力します。出来上がった音楽は、物語の時系列に沿うように音色や速さが変化するんです。
以下で作られた音楽を聴いてみてください。
どうですか? 思ったより音色やテンポがちゃんと作られていて、音楽として聴けるようになっていますが、まだコンピュータが自動で生成した感は否めませんよね。
変換すると言っても、既にあるデータに意味を持たせて音楽として再解釈し、そこから作曲するプログラムを作るのはそう簡単ではありません。少し話は変わりますが、例えば人の感情を音楽に変換する試みは、脳波を使ったものなど過去に多くの試みがなされてきました。かつてアメリカの実験音楽家であるピエール・アンリやデヴィッド・ローゼンブームが、同じように脳波を使った音楽を制作したことが有名なのですが、これらはあくまで現代音楽のなかの「ミュージック・コンクレート」と呼ばれるジャンルとして成立していて、AKB48みたいなポップミュージックを聴き慣れている人にはちょっと不快にも感じるノイズのような音楽がほとんどなんですよね。
このプログラムはただ小説の中に羅列されている感情を拾っているに過ぎず、主人公の主観的に感じていることなどは、やっぱり没入している読者や作者にしか分からないことで、そこからどんな音楽を想起するかも人それぞれなのかもしれません。作者のウェブサイトには「このプログラムはまだ研究の始まりで、まだ美しい音楽を作っているわけではありません」と言っており、これからの研究がどうなるか楽しみですね。
また同ウェブサイトには他にも様々な小説の音楽があるので、聴いてみてくださいね。
source: TransProse via The Creators Project
(徳永智大)