【島が危ない 第1部・再び対馬を行く(1)下】日韓海底トンネル構想 相次ぐ不動産買収 「心も取られた。これが現状」
2014.1.19 09:29
意見書が可決された直後、対馬市議会には全国から300件もの抗議の電話が殺到した。市議会の作元義文議長(64)は、「2、3日は抗議への対応で仕事にならないぐらいだった」という。だが、作元議長は、「いつできるか分からんけど…」と首をかしげながらも、意見書を可決した理由をこう話した。
「抗議する人たちの気持ちも分からないわけではないが、われわれの気持ちも分かってほしい。対馬は交通手段が船と飛行機しかない。陸続きがないわけや。釜山というよりも、本土との陸続きが欲しい」
国境離島活性化対策特別委員会委員長の長信義市議(64)も「対馬市民の中にも賛否はあるし、本土の人に分かっていただけない側面もある」と前置きした後、過疎化を例にあげ、苦しい胸の内を明かした。
「対馬では高校生が卒業すると、毎年400人、500人と島から出て行ってしまう。働く場所がないからだ。島が疲弊する中で、何か生き残りの道を探さないといけない」
さらにこう続ける。
「海底トンネルができれば、人口流出を食い止め、島が発展するのではないかと。何でもかんでもできんよと言っておったら、人が住まない尖閣や竹島のようになってしまうじゃないかという危機感をもっとる」
一般民家も対象
対馬での不動産買収は、海底トンネルがらみだけではない。取材を進めると、5年前同様、民宿や釣り宿も韓国資本に買収されていることが改めて浮き彫りになった。
巨大なリアス式海岸で知られる浅茅湾の入り江になっている箕形浦に面した釣り宿もその中の一つだ。対馬グランドホテルの佐伯達也社長(44)によると、本土から対馬に移り住んだ日本人が民宿を経営していたが、沖縄に行くとかいって、韓国人に売り、いなくなってしまったという。現在は、韓国人が島民を雇って釣り宿を経営しているという。
ただ、大きく様変わりしたのは、民宿や釣り宿だけでなく、一般民家も、買収の対象になってきていることだ。長市議は民家も日常的に売買されているという。
「一つの集落であっちもこっちもというわけではなく、ここの集落のここというように、ピンポイントで買っている。そうした民家、空き家はいくつもある。以前、市が買い上げられないかという話があったが、市は買う目的がないから、税金まで使って買うことはできないと。結果、外国資本に持っていかれるという現実がある」
作元議長も「私の地元でも民家や民宿が買われている。今のまま、点々と買われていくと、パズルじゃないが、いずれつながってしまう」と口をそろえた。
対馬市商工会の浦田会長は「買収された民宿や釣り宿は実数で10軒か15軒か、そんなもんですよ。個人情報ですから言えませんが、10軒は把握してますよ。自分が経営しきらんようになって、売っとる人もおります。自分がもうかりよったら、売るはずがないわけですから。売りたくて売っとるわけですから。それに、田舎に行くと、おじいちゃん、おばあちゃんが死んだら、若者はみんな島外に行っとるわけですから、空き家になって、固定資産税がかかるから、売ってしまう。だれも責められないでしょう」と言う。
島民が自ら不動産を手放すことに、長市議は「金銭的に問題のある方が手放す。島民の中に買ってくれる人がなかなかおらんのですね。そうすると、相手が外国資本であれ、なんであれ、自分が思った値段に近い値段、あるいはそれ以上の値段であれば売ってしまう。それを食い止めろと言っても止めるすべがない」と島民の心の内を代弁した。
60歳代の厳原町の建設会社社長も、「島で暮らしていけなくなり、いくらかでもお金になれば売って出て行きたいという島民も多い。将来の見込みがあればいいけどね」と口をそろえた。
浦田会長は、半ば自嘲気味にこうつぶやく。
「韓国の人が買うならどうぞ、買ってくださいです。だれも買ってくれんのやから、買っていただいた方がいいじゃないですか。嫌々売る人はいないですからね。売る人は喜んで売るわけや。お金になるわけですから」
不動産を韓国資本に手放すことへの抵抗感うんぬんよりも、背に腹は代えられないという現実が横たわっている。
食べるためには
韓国資本とパイプを持つ厳原町の飲食店従業員、Aさん(54)によると、韓国資本が対馬に進出して十数年たつという。
「民宿でもどこでも、韓国人だらけですよ。釣り宿も韓国人が土地を買うて家を建てて。自分も知っているけど、対馬の人たちが名義を貸すんですね」
豊玉町和板の旧縫製工場も2、3年前に韓国資本が買収したが、競売になり、Aさんの知人が名義を貸したという。
「名義を貸すだけでお金が入る。縫製工場の場合、150万円から200万円は入ったはずだ。食べていくためには仕方がない」
韓国資本とパイプを持つAさんのもとには、不動産を売却したいが、日本人の買い手が見つからないから韓国人を紹介してほしいという相談も多いという。
「金額はともかく、買ってくれる人がいればいい。対馬の人は手放すばかり。民家1軒売ると、田舎の方では30万円か20万円。韓国人が50万といえば、当然、韓国人に売りますよ。バス会社も韓国人が買収して日本人名義で経営してますよ。飲食店、ホテルを取られてしまっている。人の心も取られてしまった。これが対馬の現状。だって、生きていけないから」
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【用語解説】日韓海底トンネル構想
韓国・釜山-対馬-壱岐-佐賀県唐津市を結ぶ海底トンネル構想。統一教会公式サイトは「国際ハイウェイ・日韓トンネルの構想が文鮮明総裁によって発表されたのは、1981年11月10日。翌82年、久保木修己会長が中心となって『国際ハイウェイ建設事業団』を設立。その後、壱岐・対馬の地表調査やボーリングを開始、プロジェクトを展開」としている。
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