医師も看護師も踊る! 病院の“恋チュン”−「病院も広報の時代」「職員を笑顔に」
医療介護CBニュース 5月25日(日)12時0分配信
伊勢原協同病院の恋チュン動画。オープニングは今年8月に開院予定の新病院の前で、伊勢原市公式イメージキャラクター「クルリン」も共演した
カモンカモンカモンカモンベイビー、占ってよ♪と言えば、続けて「恋するフォーチュンクッキー♪」と歌える人がほとんどでは? もしかすると踊れる人もいるかもしれない−。AKB48の同曲、略して「恋チュン」に合わせて企業や官庁の職員がダンスするムービーが、動画サイトのYouTube上に次々と登場している。しかし、医師や看護師、リハビリスタッフなどが踊る病院の恋チュン動画にはあまり光が当てられていない(?)ため、CBニュース編集部ではそれらに注目し、3つの病院で動画をつくった人たちに話を聞いた。するとそこにはさまざまな経緯や狙い、工夫、苦労などがあった。【丸山紀一朗】
■やまぬ恋チュンブーム
まずは恋チュン動画がどれだけ流行っているのか見てみよう。CDが発売されたのは昨年8月だが、それに先立つ7月にAKB48グループのスタッフの動画が公開されたのがブームのきっかけだ。YouTube上にアップロードされたこの動画は、AKB48劇場の総支配人をはじめ、マネジャーやカメラマン、警備員などが楽しげにダンスする姿が人気となり、現時点の再生回数は900万回を突破している。その後、8月にファッションブランドのサマンサタバサグループ、9月に佐賀県庁やインターネット広告のサイバーエージェント、10月に神奈川県庁やタクシー・ハイヤーの日本交通などの動画が、AKB48の公式チャンネルにアップされた。
同曲の販売元・キングレコードには、このころから、これらの動画を見た一般の人たちから「わたしたちも踊りたいので曲を使っていいですか」などという問い合わせが始まった。同社は楽曲使用を基本的に禁止しているとしながらも、担当者は「とても盛り上がりを見せて、皆さんが楽しんでくれているので、事前に連絡をもらえば現在は黙認状態です」と話す。また、担当者によると、この恋チュンブームは「自然発生的なもの」で、公式キャンペーンは一切行っていないにもかかわらず、発売から8か月以上たった今でも問い合わせがあるという。
■「一番乗り」目指した伊勢原協同病院
そんな中、病院の中で一番に動画をアップしようと、昨年10月末から準備を始めたのが伊勢原協同病院(神奈川県伊勢原市)だ。神奈川県庁の動画を見た、地域医療連携室の大川伸一医師(放射線科部長)が、「『病院のいろんな部署でやったらいいじゃん』と、(同室の)主任に思い付きで提案したのがきっかけ」という。同室の田中明美主任は早速、ネット通販サイトでビデオカメラを購入。動画製作が正式決定する前から、同室のメンバーで院内のあらゆる部署に「恋チュンやるよ」といった“うわさ話”を流すような形で根回しした。
「病院の決定でやらなきゃいけないというスタンスになるのは嫌だったので、みんなで楽しんでつくっていこうという雰囲気にしたかったのです。ですから一斉メールなどで院内にお知らせをしたことは一度もなく、すべて個別に直接お願いしました」と田中さん。ほかの病院に先を越されたくないという大川さんの強い意向の下、とにかくスピード重視で製作を進めた。しかし、やはりすべて計画通りにいったわけではない。病棟では患者の急変や入院の受け入れなどが重なり、予定していた撮影時間を何度も変更。「普通の企業と違って、病院は24時間終わりがないので大変でした」(田中さん)というように、日程調整には苦しんだ。
その苦労のかいあって、動画は約1か月で完成。12月10日にYouTubeで公開すると、動画を見た人たちから「院長はじめこんな柔軟な頭のスタッフのいる病院で、治療や看護が受けられたら最高です」「子どもがよくお世話になっていますが、優しい先生たちの可愛らしい一面が見られてとても良かったです」などのコメントがサイトに寄せられた。YouTubeには今年4月30日現在、全国40の病院の恋チュン動画がアップされているが、結婚式の余興や忘年会向けにつくられたものを除けば、病院全体で踊ったものとしては同病院が最初だ。
動画の反響は大きかった。今年入った新人看護師や事務職員のほとんどがこの動画をすでに見ていたほか、入職希望の医師や連携先である外部の在宅医からも、病院の一体感が伝わってくると好評だった。「病院も広報の時代かなと思っています」と笑顔の田中さん。新病院の開院を今年8月に控え、結束が強まればという当初の狙い通り、延べ約600人が踊ったことにより院内で共通の話題ができたことも大きかったという。パワフルな連携室は、今後も新しい試みを続けていくつもりだ。
■練習用動画もつくった済生会栗橋病院
「病院で一番乗りしたかったのですが、ほかに先を越されました」と悔しがったのが、埼玉県済生会栗橋病院(埼玉県久喜市)。約4年前から「DIY(Do It Yourself)で緩やかブランディング」と称して、ゆるキャラをつくったり、SNS(インターネット交流サイト)での情報発信を始めたりという活動をしてきた同病院は昨年11月、その一環で恋チュン動画をつくろうと計画した。人事・総務課の深谷里子副主任はその狙いを、「院外へアピールというよりも、参加するスタッフが楽しめるようにというのが目標でした」と振り返る。
スタッフの病院への愛着を高めたい。そのために、より楽しくより簡単に参加してもらいたい。そう考えた製作陣は練習用動画も用意した。ここで活躍したのが社会福祉士の小倉めぐみさん。学生時代のチアダンスの経験を生かし、見た人がそのまま真似して踊ればいいように左右反転したダンスを約1週間で仕上げた。その映像を各部署で共有して、延べ約230人が練習したため、院内で有名になった小倉さんは「これをきっかけにいろいろな方から声を掛けてもらい、コミュニケーションが取りやすくなりました」という。
各部署への参加の呼び掛けを繰り返したのは、地域支援課の横井静江副課長。地域医療連携センターという部署柄、院内のさまざまなところに顔の利く横井さんは、参加に当たっての懸念点を各部署にヒアリングした。その結果、「顔が映るのはちょっと…」という人には100円ショップのお面を用意するなど、参加者全員が楽しく踊れる雰囲気づくりに気を配った。また、撮った映像を1本につなげた広報室の古瀬裕一さんは、「編集はパズルを組み合わせるような微妙な作業で、数十時間もかかってしまいました」と言うが、完成時にはその苦労を上回る達成感があったとうれしそう。
実際に踊った看護部の課長会メンバーの1人は、「あの人がああいう感じの顔するんだ。意外とダンスが上手だな」などと、完成した映像を見て楽しんだという。ほかの1人は、「娘世代が踊るような曲だと思っていたので最初は抵抗がありましたが、やってみたら楽しかったです」と笑顔。また、自身もノリノリで踊った遠藤康弘病院長は、「医療はチームでやるので、皆で1つのものを作り上げるということは常にやっていますが、今回は別の切り口で取り組み、見た人が親近感を持ってもらえればいいと思っていました」と話した。
■「沈滞ムード吹き飛ばそう」と群馬中央病院
昨年末、群馬中央病院(旧社会保険群馬中央総合病院、前橋市)は今年4月の独立行政法人への移行を控え、その準備やさまざまな想定外の事態への対応に追われていた。恒例の忘年会も中止。そんな12月初旬、地域医療連携センター長の内藤浩医師(外科主任部長)は、院内のウェブ掲示板に次のように書き込んだ。
「病院の忘年会もなく、なんとなく雰囲気が重いきょうこの頃、『恋するフォーチュンクッキー』を皆で踊り、盛り上がりませんか? 『未来はそんな悪くないよ、Hey!Hey!Hey!』って感じで。動画がうまく編集できれば、YouTubeなどにアップする予定です」
以前から恋チュンをいい曲だと感じていた内藤さんは、撮影などを担当した医療安全管理室の佐藤誠さん(看護師)、編集を担当した栄養管理室の中林智洋さん(管理栄養士)と共に「製作実行委員会」をつくり、動画への参加者を募った。同月中に説明会や練習会を開催したところ、30を超える部署がそれぞれに撮影した映像が続々と集まってきた。最終的に延べ約270人が参加し、病院としての一体感が高まったほか、完成した動画は院内の研修会や研修医募集の説明会などで利用されるようになった。
また、製作過程で想定外の発見もあった。内藤さんは「思わぬところに皆をまとめてくれる若いリーダーがいることが分かったり、こういう企画は苦手だろうなと想像していた部署が、全員で1曲通して踊ってくれたり」と、撮影時の驚きを振り返る。一方、初めから動画に参加しないと言ってきた部署もある。しかし内藤さんはそれをもプラスに利用し、「その人たちが非協力的なのではなく、なんとなく盛り上がっていない、疲れているのかなと考えて職場環境を改善するようにケアしました」と言う。内藤さんは「もともといいかげんな企画」と謙遜するが、徹底的に取り組めば恋チュンは病院マネジメントにも使えてしまうのかもしれない。
【取材を終えて】
「あまり悩まず、とりあえずやってしまおう!」という勢いが、こういう企画を進めるエネルギーなのだろう。「撮影は医療に支障がないよう行われました」などと断り書きをしていた動画もあったが、取材した病院に共通していたのは、「炎上」を恐れていたら何もできないでしょう! という気持ちのいい思い切りだった。恋チュン動画の面白さは、警備員や建設現場、外部委託のスタッフまで参加したり、病院幹部の普段見せない素顔が垣間見えたりするところ。カット割りが多いので、皆が数秒ずつ踊ればいいという手軽さがブームの要因の一つかもしれない。
最終更新:5月25日(日)12時0分
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