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【衝撃事件の核心】家庭内暴力と児童虐待に覆われる韓国社会…異例、大統領発言「社会犯罪行為なのだ」
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ソウル市内で水遊びをする子供。韓国では児童虐待や家庭内暴力が相次ぐなど、子供たちが“危険”にさらされている現状が明らかになっている=2014年5月13日(AP) 韓国旅客船「セウォル号」沈没事故では、修学旅行中の多数の高校生が犠牲となったが、実は、韓国では未来を担う子供たちが“日常から”危険にさらされている。凄まじい家庭内暴力や児童虐待が相次いでいるのだ。しかも子供たちのSOSを学校や社会は無視した…。「国民が体験した苦痛に、心より謝罪する」。セウォル号沈没事故を受け、朴槿恵大統領は5月19日に国民向けの談話でそう謝罪したが、児童虐待のような“危険”から子供たちを救うことができなければ、この国の立て直しへの道は、やはり遠い。
セウォル号沈没事故を受けた国民向け談話が発表される約1カ月前の4月15日、朴大統領は、こんな発言をしている。
「子供一人一人をきちんと育てることは韓国の未来のために非常に重要な課題だ。児童虐待は明らかな社会犯罪行為だという認識を持って解決してほしい」
児童虐待が相次ぎ、子供たちが犠牲になっている社会の現状を受けた発言だ。大統領自らがそう発言しなければならないほど、韓国での児童虐待は凄まじい。セウォル号の事故では安全を軽視した社会のありようが問題視されているが、児童虐待も子供を危険にさらしている意味では同じかもしれない。
昨年8月に8歳の女児が継母と実父に虐待を受け、内臓破裂で死亡した事件は、その顕著な例だった。
朝鮮日報(電子版)などによると、女児は姉(12)と、継母(36)、実父の4人暮らし。父親の再婚に伴い、韓国慶尚北道で継母と同居していたが、2012年夏ごろから、継母から虐待を受けるようになった。
そして事件は昨年8月14日に起きた。継母は、妹がテレビを観(み)ているときに大声を出して走り回ったことに腹を立て、腹部などを20回以上踏みつけ、口をふさいで拳で顔面を殴打。さらに瀕死(ひんし)の妹を2日間も放置し、死亡させた。
当局は当初、姉と継母による暴行が原因とみて捜査。姉は今年1月まではこう供述していた。
「私が蹴った。おばさん(継母)はいい人だから許して」
しかし事実は違った。継母は姉に「自分が殺した」と供述するよう強要していた。姉は継母のマインドコントロール下にあり、犯行は継母によるものだった。
継母と実父の虐待は筆舌に尽くしがたいほど痛々しい。
例えば、唐辛子10個ずつを無理やり口に入れられたり、ロープで体を縛られて階段から突き落とされたり。姉は洗濯槽に入れられた揚げ句、スイッチを入れられ回されたこともあった。
昼間にこうした虐待を繰り返した継母は、父親が仕事から帰ると、「(姉妹が)ウソをついた」「反抗した」などと吹き込んだ。それを信じた父親は、子供たちにさらに暴行を加えたという。
それだけではない。父親は、虐待され、2日間も放置された妹の様子を撮影し、葬儀の際に姉に見せていたとされる。まさに地獄絵だ。
ただ、こうした虐待を見抜くチャンスがなかったわけではなかったが、関係機関は父母からの執拗(しつよう)な抗議を受け、見て見ぬふりを決め込んだ。
暴行を受けた姉は12年10月ごろ、地元の警察署を訪ねて「父と母から叩(たた)かれる」と訴えた。ところが担当者は継母を呼び、形だけの事情聴取にとどまった。
学校や行政機関にも救い出す機会はあった。姉妹は13年6月に小学校を転校したが、転校以前から体中があざだらけになっていた。転校後、妹の小学校担任が腫れ上がった顔面を見て、慌てて児童保護機関に通報。顔だけでなく、腕や足に青あざができ、胸には噛(か)みついた跡さえあったという。
しかし児童保護機関は家庭訪問と電話での相談をしただけ。姉妹を保護しなかった。その後、妹が両耳から出血し、教諭に「継母に首を絞められた」と訴えたため、教諭が再び児童保護機関に通報した。それでも、児童保護機関は継母にカウンセリングをしただけだった。
学校側も当初は、虐待の痕跡を確認していたが、父親から「(服を脱がされるのが)子供が恥ずかしがっている」と抗議を受け、確認をやめた。
事態が動いたのは、妹の虐待死を受けた公判が始まってから。姉の弁護人らが心理治療を受けさせたところ、継母への恐怖でマインドコントロールされていたことが判明。治療とともに、親権を実母に移すと、姉は公判で、妹殺害の真相を証言した。
大邱地裁は4月11日、女児の継母に懲役10年の判決を言い渡した。
韓国社会では家庭内暴力や児童虐待が相次ぎ、子供たちをそこから守るための仕組みが破綻している。
韓国政府は今年1月、児童虐待致死罪に対する処罰を最高で無期懲役にするなど罰則を強化するなどとした法律を制定したが、朴大統領は4月15日の発言で、こうも指摘している。
「学校や警察などがもう少し積極的に対処していれば防げたはずなのに、義務申告制がなぜ現場で効果を挙げられていないのか」
児童虐待は関係したすべての人を不幸にする。韓国の事件で生き残った姉は、死んで妹に会えたら謝りたいと話しているといい、裁判官に「(継母を)死刑にしてほしい」と訴える手紙を書いたという。