政府による「美味しんぼ」バッシングについて/被害者が健康の異変があっても声をあげられなくなる空気に/国は「子ども・被災者支援法」の誠実な実施を
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昨日(5/23)に開催された集会<緊急集会:「タブー化」していいの?被ばくと健康~「美味しんぼ」騒動を考える>で言いたかったことをもう一度整理して掲載します。
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2014年5月23日
政府による「美味しんぼ」バッシングについて
「美味しんぼ」に関して、さまざまな論争が巻き起こること自体は意義があるものの、「美味しんぼ」が訴えた福島のさまざまな被害の実情がすべて置き去りにされ、「鼻血」問題のみ、狭く切り出されてバッシングされ、センセーショナルな報道がされたのは残念です。
今回、「美味しんぼ」をめぐっては、石原伸晃環境大臣が「専門家によって、今回の事故と鼻血に因果関係がないと既に評価されており、描写が何を意図しているのか全く理解できない」と語り、佐藤雄平福島県知事が、「風評被害を助長するような印象」、菅官房長官が「科学的見地に基づいて正確な知識を伝えていくことが大事」と発言、閣僚が続々と「遺憾」の意を表明、5月17日には福島を訪問している安倍首相が漫画「美味しんぼ」に関して、「根拠のない風評に対しては国として全力を挙げて対応する必要がある」などと政府ぐるみのバッシングが続きました。
これは、以下の面で問題だと考えています。
①表現の自由…「美味しんぼ」の原作者の雁屋哲氏は、取材を通して、「鼻血」という健康の異常を訴える井戸川氏をはじめとした人々の話をきき、それを漫画という手段で伝達している。これを政府が批判することは、表現・言論の自由に反する。
②原発被害者が健康の異常を訴えられない社会的な圧力…政府や一部マスコミが社説などで「美味しんぼ」をバッシングしたことにより、「健康の異常を訴えることにより風評被害につながる」という批判を恐れ、被害者たちが健康への異常を口に出せなくなる空気をさらに助長したことは問題。
③「根拠がない風評」か?…
あえて「鼻血」問題に限定していえば、i) 当時、鼻血が多発したか?、ii) 多発したとすれば、その原因は何か?--の二つの段階で考えるべきだろう。
i) については、下記のような調査がある。
双葉町等での疫学調査の「報告書」について
主催者も当時、少なからぬ人たちが鼻血という異常を訴えたことを伝聞している。
ii) について言えば、放射能との因果関係があることは証明されていないが、放射能と因果関係がないということも立証されていない。石原環境大臣の言う、「専門家が立証」とは何をさすのかは不明である。
④「鼻血」問題のみの切り出し…「美味しんぼ」が「福島の真実」で訴えている多くの問題提起、たとえば福島原発事故について誰も責任を取っている人がいないことが無視され、鼻血問題のみが狭く切り出され、バッシングされた。
⑤原発事故の責任/「子ども・被災者支援法」の未実施
…国は原発事故を生み出した責任があり、対処の責任があるのにもかかわらず、その責任を棚上げしている。
2012年6月21日に制定された「原発事故子ども・被災者支援法」では、「放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと」(第一条)、「これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っている」(第三条)として、被災者の意見を反映して、避難者・居住者・帰還者のいずれにも適切な支援を行うとしている。しかし、同法は十分に実施されているとは言い難い。
とりわけ、「充分な健診・医療費の減免措置などを定めた同法第13条は、実施されていない。
※「原発事故子ども・被災者支援法」 第十三項第二項で健診を、第三項で医療費の減免について規定している。2 国は、被災者の定期的な健康診断の実施その他東京電力原子力事故に係る放射線による健康への影響に関する調査について、必要な施策を講ずるものとする。この場合において、少なくとも、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者(胎児である間にその母が当該地域に居住していた者を含む。)及びこれに準ずる者に係る健康診断については、それらの者の生涯にわたって実施されることとなるよう必要な措置が講ぜられるものとする。3 国は、被災者たる子ども及び妊婦が医療(東京電力原子力事故に係る放射線による被ばくに起因しない負傷又は疾病に係る医療を除いたものをいう。)を受けたときに負担すべき費用についてその負担を減免するために必要な施策その他被災者への医療の提供に係る必要な施策を講ずるものとする。
国がすべきことは、「美味しんぼ」バッシングではなく、同法を誠実に履行することではないか。
以上
(満田夏花/「美味しんぼ集会」実行委員会)
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