鈴木亜美、北野誠…なぜ芸能人は突然“干される”のか?芸能界を歪める芸能プロの“政治”
Business Journal 5月25日(日)3時0分配信
--音事協が芸能界全体を治めているということでしょうか?
星野 芸能プロダクションというのは、人気タレントを独占的に抱え込むことで利益を得ています。ところが、商品であるタレントが勝手に移籍してしまうと、過当競争となって芸能プロダクションのビジネスモデルが崩壊してしまう。そこで、音事協では、引き抜きを禁止して、共存共栄を図っているようです。この仕組み、どこかで聞いたことがあるなと思ったのですが、映画業界でも昔、「五社協定」と呼ばれるものがあって、メジャー映画会社5社(松竹、東宝、大映、新東宝、東映)が各社専属の俳優の引き抜きを禁じていました。しかし、インターネット上などでは「五社協定は独占禁止法に違反する」との指摘もあります。
それでは、今の芸能界の仕組みも独占禁止法違反ではないのでしょうか? 芸能界の市場規模は1兆2000億円ともいわれていますが、それが違法なビジネスモデルの上に成り立っているとしたら、とても衝撃的です。それで、5年かけて調査・取材を積み重ねてまとめたのが本書です。私は芸能記者ではないので、芸能界に知り合いはほとんどいません。従って資料ベースですが、雑誌記事を2000本ぐらい集め、本は100冊ぐらい読み、過去100年以上にわたる日本と海外の芸能界を検証しました。
●引き抜き禁止協定とタレントが干される理由
--取材の結果、「引き抜き禁止協定」の存在は確認できたのでしょうか?
星野 もしなかったとすれば、芸能プロダクションのビジネスモデルは成立しないと思います。資料を当たってみても、例えば、音事協が発行した『社長、出番です。-エンターテイメントを創る人たち-』という、音事協加盟プロダクション経営者のインタビュー集の中で、新沼謙治や五月みどりなどが所属する第一プロダクションの社長である岸部清氏が「(音事協の設立は)そもそも、タレントの独立問題が背景にあって、ちょうど映画の五社協定に似た形で、親睦団体を名目に創設したわけです」と語っています。音事協がモデルとした五社協定についてもさらに詳しく調べましたが、過去、公正取引委員会が調査をしたことがあり、独占禁止法違反の疑いが持たれていましたが、法的規制が入る前に、この協定は消滅しました。
--その話と、タレントが干されることに関係はあるのでしょうか?
星野 引き抜きは業界団体内部の申し合せで防止できますが、勝手にタレントが独立してしまうことはどうにもならない。だから、タレントが独立したら、業界全体で結束してテレビ局などに圧力をかけ、徹底的に干して見せしめとし、後に続くタレントが出ないようにしなければならないのです。有名なのが、01年に脱税事件で摘発された事務所から独立しようとして干された歌手・鈴木亜美。古くは1979年に当時の芸能界で支配的な地位を誇っていた渡辺プロダクションから独立して干された歌手・森進一のケースがあります。森進一は、干されていた中で女優の大原麗子と結婚したのですが、その披露宴で仲人を務めた自民党代議士・山中貞則が「芸能界は独禁法違反だ」とスピーチしていました。つまり、芸能界が違法状態にあることは昔からいわれていることなのです。
最終更新:5月25日(日)3時0分
記事提供社からのご案内(外部サイト)
話題の企業・経済ニュースから、ビジネススキル、プライベートライフを充実させる情報まで、“本音の”情報をお届けするサイト |
読み込み中…