政府の規制改革会議が、農業分野の改革案をまとめた。注目されるのは、農業協同組合(JA)グループをめぐる具体的な提言だ。

 ▼個々の農協の指導や政治への働きかけで中核となっている全国農業協同組合中央会(全中)は、農協法の根拠規定をなくし、必要なら任意の団体として活動してもらう。

 ▼個々の農協は、組合員のために肥料や農薬、機械などを購入し、農産品を販売する「経済事業」に集中する。

 ▼貯金や住宅ローンといった「信用(金融)事業」はグループ内の農林中央金庫に任せるか、農林中金からの窓口業務の受託にとどめる――。

 JAグループは、政治活動や事業ごとに全国・都道府県・各農協の3層構造を持つ「系統」組織だ。赤字続きの経済事業を信用事業の黒字で支える構造にもなっている。

 提言は、このJAグループの特性に切り込んだ。

 JA側は「グループの解体につながる。民間組織のJAに政府が口出しするのはおかしい」と激しく反発している。

 ただ、JAと日本の農政は切ってもきれない関係にある。

 多額の税金を投じてきても、農業がじり貧状態から抜け出せないのはなぜか。

 零細兼業農家が中心の米作などでは経営の大規模化が不可欠だが、JAは消極的だった。政治力の源泉である組合員数を維持したいという組織としての思惑が、大規模化を妨げる一因であることは否定できまい。

 規制改革会議がJAに投げかけたのは、各地の農協が主役となり、農家を支え、農業を強くするという「本業」に立ち返って競い合うべきだ、とのメッセージだろう。

 やる気のある大規模農家ほど農協を離れる。資材はJAより民間のホームセンターで購入する方が安いことも珍しくない。組合員も、農家以外の「准組合員」が農家の「正組合員」より多くなった。こうした現状を改めて見つめ直すべきだ。

 もちろん、農協のなかには民間企業と組んで加工・販売まで手がける「6次産業化」を先取りし、農産品の独自ブランド化や販路開拓に挑むなど、意欲的なところも少なくない。

 こうした取り組みをどう後押しするか。JAグループが4月にまとめた自己改革案は抽象的な記述が多く、物足りない。

 農業の低迷は、政府にもJAにも責任がある。それぞれが抜本的な改革案をまとめ、農業の強化を急ぐ必要がある。