■バージニア州、30日に除幕式
【ワシントン=青木伸行】米バージニア州北部のフェアファクス郡で、韓国系団体が23日までに「慰安婦」碑を完成させた。碑は郡庁舎の敷地内に設置され、史実の誤認と歪曲(わいきょく)を含む碑文の内容を当局が“公認”した形で、韓国側の一方的な主張の拡散に拍車がかかることが懸念される。
「慰安婦」碑の設置は、ニュージャージー州とニューヨーク州にある計4基に続き5基目。カリフォルニア州グレンデールには「慰安婦」像1体がある。
今回の碑は郡庁舎の広大な裏庭の一角に設置された。30日には除幕式が行われる。
碑には「韓国、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、オランダ、東ティモールからの20万人を超える女性と少女が、強制的に性的奴隷にさせられた」などと書かれている。設置した韓国系団体は「ワシントン慰安婦問題連合」。バージニア州北部はワシントン首都圏の一つに数えられ、韓国系住民が多い。
同州議会では3月、韓国系住民が後押しする複数の州議会議員が主導し、「日本海」と記載されている公立学校の教科書に、韓国政府が主張する「東海」を併記することを義務づける法律が成立している。
今回もこれらの議員が韓国系団体と一体となり政治力を発揮し、郡当局に碑の設置を許可するよう強く働きかけたとみられる。「ワシントン慰安婦問題連合」は、首都ワシントンにも碑の設置を計画している。
米国にまた一つ、「慰安婦」碑ができた。日本政府は韓国側を刺激しないよう水面下での対応に徹している。だが、もはや公然と問題を提起し反論しない限り、誤った主張を覆すことは困難だ。
ワシントンから西へ約20キロ。バージニア州のフェアファクス郡庁舎の敷地に完成した碑は、30日の除幕式を前に緑色の薄いビニールシートで覆われていた。
「日本政府は、歴史的な責任を公式に認め謝罪し、受け入れるべきだ」
透けてみえる碑文には、マイク・ホンダ連邦下院議員が、かつて議会に提出し可決された慰安婦決議の文面も刻まれている。
日本政府が幾たびも公式に謝罪し、「アジア女性基金」を通じ「償い金」を届けたことなど、無視されている。慰安婦募集の強制性の文句も、相変わらずだ。
碑の前を通りかかった夫婦は、「『慰安婦』って何?」と首をかしげた。一般のほとんどの米国民は、慰安婦について知らない。彼らが、公的機関の場所に建つ碑の文を読めば、事実だと容易に信じ込む。
碑の数メートル横には、2001年の米中枢同時テロの犠牲になった州民の追悼碑がある。「慰安婦」碑が追悼碑と同等に扱われているのだ。人々はなおさら碑文に疑問を抱くまい。郡当局も韓国系団体などに“洗脳”されその主張をうのみにしているフシがある。
米国には、慰安婦の募集に際し、日本の斡旋(あっせん)業者が「『奉仕』の性格を明確に示さなかった」としつつ、強制性はなかったことを示唆する米戦時情報局の調査報告書(1944年)がある。米議会調査局も、「償い金」などを含む包括的な報告書(2007年)をまとめている。
だが、これらの報告書は大多数の議員はもとより、市民の目に触れることはまずない。オバマ大統領が先に訪問した韓国で、慰安婦問題を「甚だしい人権侵害」などと批判した背景にも、史実への理解、認識不足があるとみられる。
大統領から市民に至るまで、日本政府には公に問題を提起し反論する「説明責任」がある。(ワシントン 青木伸行)