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「だいち2号」載せて 打ち上げ成功
5月24日 15時54分

「だいち2号」載せて 打ち上げ成功
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宇宙から、災害情報の把握などを行う人工衛星「だいち2号」を載せたH2Aロケット24号機が24日、午後0時5分に、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。
衛星は予定どおり軌道に投入され、打ち上げは成功しました。

地球観測衛星「だいち2号」を載せたH2Aロケット24号機は、打ち上げの5秒前に1段目のメインエンジンに点火され、午後0時5分、ごう音とともに発射台を離れました。
補助ロケットや1段目を切り離して上昇し、打ち上げからおよそ15分40秒後、「だいち2号」を予定どおり、地球を回る軌道に投入しました。
打ち上げられた「だいち2号」は東日本大震災のあと、被災地を撮影して復旧活動に貢献し、そのあと寿命を終えた「だいち」の後継機です。
地上の物体を見分ける能力は、「だいち」の10メートルから3メートル程度まで上がり、観測できる幅も3倍近い2300キロ余りまで広げられています。
レーダーを使っているため、天候や昼夜を問わず地上を観測でき、国内外の災害情報の把握などに役立てる計画です。
H2Aロケットの打ち上げは、これで18機連続の成功となり、成功率は95.8%まで上がりました。

進化した「2号」

進化した「2号」

「だいち2号」の開発費用は、打ち上げにかかる分を含めて374億円。
重さはおよそ2トンで、太陽電池やレーダーなどの装置を開くと、幅16.5メートル、奥行き10メートル、高さが4.3メートルあります。
地球の観測は、上空から電波を出すことにより行われ、地上で反射する電波の強弱などを基に画像を作る仕組みです。
電波は雲を通過するため、悪天候や夜間でも撮影できるのが特徴です。
また、前の「だいち」は、日本付近の撮影は3日に1回程度しかできませんでしたが、「だいち2号」では1日2回、撮影できるうえ、撮影してから画像を入手できるまでの時間はこれまでの3分の1の1時間程度になるということです。
さらに、収集したデータから細かく分析することで、地表との距離を2センチの精度で捉えることができ、地盤沈下や噴火の兆候である火山の膨張の監視などに役立つことが期待されています。

期待される災害監視

期待される災害監視

「だいち2号」に期待されている大きな役割の1つが、災害の監視です。
2006年に打ち上げられた、前の「だいち」は、東日本大震災のあと、日本列島が隆起したり、沈下したりした様子を明らかにしたほか、津波によって海水につかった場所を示しました。
しかし、その「だいち」も震災から2か月後の2011年5月に寿命が尽き、運用を停止。
3年前、紀伊半島に大きな被害をもたらした台風12号で日本が頼ったのは、ドイツの衛星でした。
このとき悪天候が続いたため、ヘリコプターを使った調査が満足にできませんでしたが、衛星の画像から、奈良県の山中などに土砂が川の流れを遮断することでできる「せき止め湖」があることが分かり、住民の避難に結び付きました。
「だいち2号」の本格運用が半年後に始まれば、日本列島を1日に2回、観測できるほか、撮影した画像は1時間ほどで地上で見ることができ、土砂災害などの調査分析を行う国土交通省国土技術政策総合研究所は、より早い災害の状況把握につながると期待しています。
国土技術政策総合研究所の松下一樹主任研究官は「外国の衛星では、なかなか頼めないこともあるので、日本が災害に対応できる衛星を持っていることは非常に心強い」と話しています。

インフラ監視も衛星から

インフラ監視も衛星から

「だいち2号」の観測データは公共機関だけでなく、民間の事業者も活用を検討しています。
「だいち2号」は、収集したデータを分析することで、2センチの精度で地表との距離を捉えることができ、将来的にはミリ単位での観測も期待されています。
東京の測量会社は、こうしたデータから地表の動きを観測することで社会インフラの監視を行い、高速道路ののり面の劣化防止やダムのえん堤の保守などにつなげたいと考えています。
この会社では、すでにデータの利用方法について話し合いが進められていて、海外のインフラを監視するビジネスにも生かすことができないかといった意見が出されていました。
測量会社「国際航業」の虫明成生主任技師は、「これまでは比較的、人海戦術に頼ってきたが、衛星を使えばもっと効率的に広い範囲を観測できる可能性があり、非常に期待している」と話しています。

JAXA「民間企業にも活用を」

JAXA「民間企業にも活用を」

JAXA=宇宙航空研究開発機構は、打ち上げから半年後にはデータを一般に提供することを検討していて、災害だけでなく発展途上国で問題となっている森林の減少の監視など、幅広い分野での貢献を期待しています。
「だいち2号」の打ち上げ成功後、JAXAの奥村直樹理事長は記者会見し、「自国の地球観測衛星を持てば、いち早く災害を把握することができ、対策にもつなげられる」と話しました。
そのうえで、「『だいち2号』の情報はビジネスにも使える可能性もあるので、官公庁だけでなく、多くの民間企業に活用してもらえるようにしたい」と抱負を述べました。

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