国が定めたタクシー運賃の幅より安い運賃で営業しているエムケイ(京都市)などが国に対し、運賃変更命令などの行政処分を出さないよう求めた仮処分申請で、大阪地裁(田中健治裁判長)は23日、申請を認める決定をした。差し止める期間は、エムケイ側が並行して起こしている正式裁判の一審判決から60日を経過するまでとした。
仮処分申請をしたのはエムケイと大阪、神戸、滋賀のグループ3社(計約1400台)のほか、提携する個人タクシー事業者14人。
決定に対し、国側は不服の申し立て(即時抗告)ができるが、抗告審の間も効力は続くため、国側は当面、運賃変更命令などを出せなくなる。
田中裁判長は決定で「公定幅運賃制度自体については、立法機関に裁量の逸脱は認められず、憲法違反に当たらない」と指摘。その上で「近畿運輸局長が定めた運賃幅は事業者の利益を具体的に斟酌(しんしゃく)しておらず、裁量権の範囲を超えている」とした。
エムケイ側は各地で運賃を公定幅より安く設定しており、例えば神戸の中型初乗りは下限額が650円、エムケイ側の届け出額は570円。近畿運輸局は4月22日、エムケイなどに運賃の変更を勧告したが応じず、5月23日以降、変更命令を出せることになっていた。
エムケイの青木信明社長は23日、大阪市内で記者会見し「価格の統制自体が古き時代の流れだ」と国を批判。「(公定幅に従えば)京都だと最大3割の値上げになる。サービス業では死活問題で、顧客にも多大な負担が掛かる」と主張した。
国交省幹部は「決定内容を吟味し、慎重に対応する」と話した。
公定幅運賃制度を定めた改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法には、国がタクシーの台数が過剰と認めた「特定地域」で新規参入や増車を禁じ、減車を促す仕組みも盛り込まれている。国交省は地域を指定する際の基準作りを進めているが、今回の決定で導入時期が遅れる可能性が出てきた。
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