みなさんは、どのような絵本を子どもに読み聞かせしていますか?
絵本・子育て・読み聞かせを応援するコミュニティ『ミーテ』のアンケートによると、96.9%の家庭が「日本の昔話の読み聞かせは子育てに役立つ」と回答しています。
日本の昔話からは、優しさや思いやり、教訓などを学ぶことができるため、今も昔も変わらず愛され続けていることがわかりますね。
ですが、『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ』の著者・立石美津子さんに聞いたところ、つい手にとってしまいがちな昔話の絵本の中に、実は”読み聞かせに不向きな絵本”があると判明しました!
そこで今回は、立石さんに教えていただいた、意外なNG絵本についてお送りします。
■1:結末が異なるダイジェスト版やシリーズものの絵本はNG
最近、書店で1冊の本にたくさんの話が入ったものや、シリーズものをよく見かけませんか?
例えば、1冊に100の話が入っていて、1,000円という本があったとします。みなさんはこの本、買いますか? 買いませんか?
実はこれ、筆者は買ってしまったのです! だって、1つの話が10円なんですよ。お得だと思いませんか?
この話を立石さんにしたところ、「こういったダイジェスト版の絵本はNG」との回答をいただきました。一体なぜでしょうか。理由は以下の通り。
「シリーズ本や定期購読の絵本は、定価を一定にするためにすべて同じページ数となっていることがほとんど。
そのため、話を無理やりページ数に収まるように短くしたり、シリーズだからと話の雰囲気に合っていなくても同じ(ような)絵を使ったりして作られています」
言われてみると確かに、筆者が購入したダイジェスト版の絵本も、ひとつの話が見開き1ページ、もしくは2ページに収まるようなものでした。
この絵本を実際に娘に読み聞かせをしてみても、あまり伝わらず……。絵は少ないし、話も省略されているし、わかりづらいんですよね。立石さんの説明に、しみじみと納得してしまいました。
さらに、ダイジェスト版やシリーズものの絵本では、大事な部分が省略されていることもしばしば。
例えば、有名な『ジャックと豆の木』の話で、悪いのは巨人ですよね? それがダイジェスト版の絵本の中には、巨人の悪い行いがカットされていて、ジャックが単なる泥棒に見えてしまう話もあるのだとか!
立石さんが子どもたちに読み聞かせたところ、「ジャックってひどいことするね。巨人がかわいそう」との声があがったそう。
ストーリーの重要な部分がカットされていると、全く別な話になってしまっています。これでは、昔話の大事な部分が伝わりません。
そもそも、昔話の結末が違っているなんて驚きですよね。他には、本来の役割と違う絵本もあるとのこと。そのため、購入するときは、一通りお話を読んでみた方がよさそうです……。
■2:キラキラ、カラフル、アニメ調のイラストの絵本もNG
また先日、筆者が書店で昔話の絵本を探していたところ、やけにカラフルでキラキラしているものを見つけました。
確実に、自分が子どもの頃に読んでいた絵本とは違いました。桃太郎や一寸法師も目が大きく、まるで王子様のような外見だったのです! どちらも、そんなイメージではないですよね?
でも、最近の絵本は、とにかくアニメ調のイラストが多いんです。
このような絵本について立石さんは、「どんなに物語の内容や文章が素晴らしくても、絵がいい加減なものは読み聞かせの本としてはお薦めできません」と言います。
さらに、「登場人物の持ち物や服装、背景などが、物語の内容と違うことがあります。
あるはずのないものがあったり(冬のお話なのにヒマワリが咲いていたなど)、女性二人と男性一人がいるはずなのに、女性が三人になっていた、といった要素の間違い、またイラストの雰囲気が物語の世界と合っていない時は、購入は見送ったほうがいいでしょう」とのこと。
そのときは「最近の絵本はカラフルになったんだな~」としか思わなかったのですが、子どもの感性を磨くということを考えたら、絵が適切でない絵本はNG。
そもそも、昔話に出てくるような時代の日本には、最近の絵本でよく使われている原色や明るい色はありません。
物語を深く味わい、感性を磨くためにも、日本の昔話の絵本は”色がくすんだもの、渋い色遣いのもの”を選ぶ必要がありますよね。
……とはいえ、最近書店に並んでいるのは、ほとんどがダイジェスト版やシリーズもの。イラストもかわいらしいものが多いので、見つけるのが難しいもの。
それで最後に、絵本の探し方について立石さんからアドバイスをいただきました!
「小型書店にはあまり置いていないかもしれませんが、大型書店には結構よい絵、文章が書いてあるものが平積みではない棚の上にあります。そのため、大型書店でぜひ探してみてください」
また、シリーズものに関しても「シリーズとうたっていても1冊1冊丁寧に作っているものもあります。ライトなシリーズではなく、物語が正しく伝わるものを選びましょう」とのこと。
絵本選びひとつとっても、小さい子どもに与える影響は大きいです。これからはできるだけ、物語がしっかり伝わる絵本を探して買うようにしてみてくださいね!
【取材協力】
※ 立石美津子・・・1961年大阪市生まれ。聖心女子大学在学中、幼稚園教諭・小学校教諭免許を取得、佛教大学にて特別支援学校教諭許取得後、障害児教育に携わる。32歳で株式会社パワーキッズ(教室名:エンピツらんど)を起業。
現在、教室に3歳~小学校3年生まで7,500名の生徒が通う。講演家・作家・自閉症児の子どもを持つ1児の母。
著書に『小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと』&『読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと』(中経出版)、『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ』(あさ出版)、『はずれ先生にあたったとき読む本』(青春出版社)がある。
【参考】